【静岡高校野球2025】シード校16校が白星発進!

常葉大菊川が圧巻の攻撃力を展開

 今春のセンバツ大会に出場し、優勝候補筆頭に挙がる常葉大菊川は、伝統の畳みかける攻撃力で相手を圧倒。0対0で迎えた2回、1死一、二塁から佐藤大介の先制タイムリー三塁打でチームが勢いづくと、4回には武器の足も絡め、一挙4点を奪って試合の主導権を握った。
 第1シードの聖隷クリストファーは、2年生エース・髙部陸が7回10奪三振と貫禄のピッチング。序盤こそ力みが見られたが、試合が進むにつれ本来の投球を取り戻した。この春、躍進を遂げた進学校の磐田南も好スタート。投打が噛み合って6回コールドで3回戦に駒を進めた。
 前年度優勝の掛川西は浜松城北工と対戦。1点リードで迎えた5回に石原凪のタイムリーで加点し、投げては加藤瑞己と杉崎蒼汰の継投で相手打線を1点に抑えた。

先制タイムリーを放った佐藤大介(常葉大菊川)
先制タイムリーを放った佐藤大介(常葉大菊川)

ノーシード勢の奮闘

 藤枝東が20年ぶりとなる3回戦進出を決めた。今春の県予選では常葉大橘を破るなど、ここ数年で実力を高めている文武両道の進学校。初戦、2回戦ともに接戦となったが、粘り強く勝ち抜いた。勢いそのままに静岡との3回戦に臨む。
 磐田西は2回戦で好投手・一ノ瀨太一を擁する駿河総合に逆転勝利。終盤にビッグイニングを作り、コールド勝ちを収めた。
 春は県予選で初戦敗退を喫した藤枝明誠の巻き返しも見逃せない。2回戦は小笠相手に大勝。「個々の力はないかもしれないが、逆にそれが今年のウチの強み」と光岡監督。誰か一人に頼るのではなく、メンバー全員の力を結集していく。次戦の相手はシード校の磐田南。「この夏の全てをかけて戦う。私学としての意地を見せたい」と指揮官の気持ちも高ぶっている。
 また、静岡農が8年ぶり、下田と吉原工が5年ぶりとなる初戦突破。沼津工と沼津商の「沼津ダービー」は、延長11回タイブレークの末、沼津工が勝利してスタンドを沸かせた。

ノーシードから頂点を狙う藤枝明誠ナイン
ノーシードから頂点を狙う藤枝明誠ナイン

プロのスカウトが集結した初戦

 駿河総合とオイスカ浜松国際の試合には、プロ9球団11人のスカウトが集結した。注目を集めた大橋令和(オイスカ浜松国際)は「3番ショート」で出場。試合中に両足がつるアクシデントに見舞われ、本来のパフォーマンスを発揮できなかったが、それでも随所に身体能力の高さを示した。進路については「プロ一本」と明言し、早すぎる夏に幕を下ろした。
 長身左腕の内藤優央(静清)は2回戦で姿を消した。春の県予選では1試合19奪三振を記録し、球速も145キロまで伸ばしたが、左の広背筋を痛め、ノースロー調整が続いた。復帰登板は6月28日。エースとしてのプライドを胸に、そこから急ピッチで調整を重ねた。迎えた夏の大会。池新田との初戦ではリリーフで登板し、3者連続三振を奪った。しかし、常葉大菊川戦では「圧を感じた」と6失点を喫し、球速もプロのスピードガンで136キロにとどまった。「全然やり切れていない。気持ちばかりが先行して制御がきかなくなってしまった」と試合後は唇をかみしめた。それでも、「いずれはチームを勝たせられるピッチャーになりたい」と、前を向いて球場を後にした。

2回戦で姿を消したプロ注目左腕の内藤優央(静清)
2回戦で姿を消したプロ注目左腕の内藤優央(静清)

 一方、最速148キロ右腕の小川秋月(日大三島)は1失点1安打で完投。磐田南をけん引する山田賢正(磐田南)は投打で躍動し、上々のスタートを切った。山田晃太郎(加藤学園)は強打の浜松開誠館相手に力投。先発して8回まで3失点。9回のピンチで一度マウンドを譲ったものの、再び登板して勝利に導き、自己最速となる148キロをマークした。

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取材・文=栗山 司
くりやま・つかさ 1977年、静岡県生まれ。スポーツライター・編集者。雑誌『野球小僧』の編集者を経てフリーに。2012年に地元・静岡に根差した野球雑誌『静岡高校野球』を自費出版で立ち上げ、年2~3回発行。ブログ『静岡野球スカウティングレポート』(http://tsukasa-baseball.cocolog-shizuoka.com/
) でも県内の野球情報を発信する。
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