静岡高校野球界に精通し過ぎた2人が夏の静岡大会を徹底分析 「本命は〇〇高」 注目はドラフト候補が激突する1回戦屈指の好カード!【前編】
7月5日から熱戦がスタートする第107回全国高校野球選手権静岡大会。109校107チームの一体どの学校がたった1枚の甲子園への切符をつかむのか。雑誌、静岡高校野球編集長で屈指の静岡高校野球通、栗山司編集長と決勝の中継を担当する静岡朝日テレビ片山真人アナウンサーの2人に大会を展望してもらいました。精通し過ぎています。精通し過ぎているかもしれません―。

甲子園に出たら全国的に注目
片山・率直にトーナメントをご覧になった印象は?
栗山・シード校が16校に増えた関係で、有力校がうまく散らばっているという印象はあります。
片山・今大会の展望、本命、ダークホースを挙げるとどこになりますか?
栗山・まず本命として挙げたいのはセンバツ出場の常葉大菊川です。
片山・センバツには出てはいましたが、春季大会はベスト8でした。本命にあげるのはなぜですか?
栗山・投手、野手ともに層が厚いですよね。ピッチャーも大村君、甲子園でも好投しました。それ以外にもゲームを作れるピッチャーが何人もいますので、そこが一つストロングポイントかなと。野手もフルスイング打線と言われるじゃないですか。それプラス石岡監督が就任されてから緻密さみたいなものも融合されていますので、ちょっと隙がなくなっている。
片山・春はベスト8でしたが1年生の小柳選手を使ったり、かなり試していた印象があります。
栗山・新たな戦力がどう出てくるかというね。
片山・対抗はどこになりますか?
栗山・対抗に挙げたいのは聖隷クリストファーですね。春優勝しました。
片山・聖隷は去年の夏準優勝していますけども、聖隷の強さはどこにありますか?
栗山・1つは2年生投手の高部投手。
片山・いいピッチャーですよね。
栗山・いいピッチャーです本当に。147キロこの春投げてスピードもそうなんですけど、度胸の良さ、胸元にズバズバ来るみたいな。
片山・春は優勝して東海大会も経験している。去年の夏に関しては決勝戦のマウンドに立っていて経験も豊富ですしまだ2年生ですし末恐ろしいですね。
栗山・彼、甲子園に出たら全国的にも注目されるピッチャーになるんじゃないかなと思っています。
片山・当然1人では勝ち抜けないですからその中で春は上田投手が出てきました。
栗山・出てきましたね。
片山・3年生の右サイドスロー。
栗山・彼もずっと期待されながらなかなか結果が出なくて、ようやく春の決勝戦でいいピッチングできて、本当に自信になったんじゃないですか。
片山・上田投手がここで成長を見せたことで高部投手との2枚看板。聖隷は本当に悲願の甲子園というところに機はかなり熟してきた感じはしますよね。
栗山・もう1チームあげるとすればやはり日大三島ですね。
片山・春は3位のチームですね。
栗山・エースの小川君って148キロ投げる本格派がいて野手陣も下級生の時から出ている選手が何人かいますので経験豊富です。
片山・長岡のゴジラと言われた渡邉選手も春9番バッター打っていました。
栗山・でもやっぱり打球スピードなんかはやっぱりすごいので爆発夏してほしいです。
片山・春に日大三島を見た印象だとマネージャーの声がすごい響いていて。2021年に甲子園出たときのベンチ外だった子の妹さんが今3年生マネージャーやっていて、イニング間でけっこう声出して、小川投手とかいる中で女性マネージャーの声も印象に残りました。日大三島ははまると絶対あがってくる。
栗山・ですね。あとやっぱり永田監督は夏に向けてうまく仕上げてくるので。
片山・あまり序盤でこけたりする印象ないですよね。
栗山・そうですね取りこぼさないですよね。
片山・さらにもう1校あげるとすれば…。
栗山・やっぱり静高ですね。
片山・春はベスト16で浜松商業に負けてしまいましたが、静高をあげる理由は
栗山・ピッチャー吉田君の存在というのが大きいですよね。
片山・左で145キロぐらいですね
栗山・そうですね。安定感は今年いい左ピッチャーたくさんいるんですけど、その中で安定感と言う意味ではナンバーワンです。
片山・雑誌静岡高校野球でもナンバーワンにあげていましたが、今年左ピッチャーいい投手いる中で吉田投手が完成度1番ですか?
栗山・完成度高いですね。
片山・彼が1人で投げ抜いていくのか、あとは増田投手。
栗山・増田投手ですよねやっぱり。
片山・ちょっと近年、去年は第2シードでベスト4で聖隷に逆転負けもありましたし、静高ファン多いですから。
栗山・波に乗っていけば十分優勝を狙えると思います
片山・ただ1回戦から伊豆中央と静岡東の勝者と戦ったり意外と簡単にはいかなそうな山にいますし、静高の動向にも注目していきたいですね。



イタリアの血を引く山本由伸⁉
片山・では細かく左のトーナメントから見ていきましょうか。左の上のところは第4シードになります春ベスト4の磐田南が入っていまして、その他シードですと春ベスト8の浜松商業、ベスト16ですと島田樟誠、浜松湖北と、ノーシードですと藤枝明誠が入っていますがこのブロックどう見ますか?
栗山・磐田南はこの春躍進しましたよね。
片山・32年ぶりのベスト4。
栗山・エースの山田投手、140キロ以上投げるピッチャーもいて、今年の春の初戦で浜松開誠館にコールド勝ちしたんですけど、その試合僕見に行ってたんですよ。
片山・ちょっとびっくりですよね、2年前甲子園出たチームにコールド勝ちですもんね。
栗山・バッティングもいいんですよ。
片山・4番でエースの山田君に注目が集まりがちですけど、5番、6番バッターもけっこうヒット、タイムリー打ちますもんね。
栗山・そうですね。まんべんなく打てるバッターそろってますね。
片山・1点で終わらないですよね。山田君が長打打って、その山田君を後ろの打者が帰してというのはいい打線になっているなという印象を持ちました。
栗山・決して浜松開誠館にコールド勝ちしたというのは不思議ではないというか、春ベスト4というのも実力通りというか。
片山・山田君は磐田東中から磐田南に進んで本人も「磐田から甲子園に」という思いが強いみたいですけど楽しみですね。
栗山・将来的にもプロとか行けるような素材だと思いますね。
片山・スライダー良くないですか?
栗山・いいですね。去年の秋からずっと注目してたんですけど山田君を。バッティングはやっぱりいいなと思っていたんですけど、ピッチングはそこまで完成されてなかったんですね。ただこの一冬越えてがらりと変わりましたね。びっくりしましたこの春見たときは。
片山・私、春の3位決定戦見ていたんですけど山田投手投げなかったんですね。ただそれ以外のピッチャーも日大三島相手に抑えてたんで、本当に磐田南あると思います
栗山・どういうふうに山田君を起用するのかそこがポイントになってきますね。当然全部投げるわけにはいかないので起用も注目ですね。
片山・初戦を突破した場合に藤枝明誠と当たる可能性もあるというところでそこも当然一つのターニングポイントにもなってくるでしょうし、その先にも島田樟誠だったり富士宮北、清水東だったりとか難敵もそろっていますしね。簡単にはいかないでしょうね。さて続いて浜松商業です。
栗山・春、静高倒したんですよ。山口投手と言うのがもともと内野手だったんですよ。今年になって本格的にピッチャーになって春の立役者になった。
片山・ストレート120キロぐらいですよね。
栗山・そうなんですけど打ちづらい球なんですよね、コントロールも当然いいですし、もともと内野手だったのでフィールディングもいい、牽制もうまい。
片山・他にも浜松西、富士宮西…。
栗山・浜松西がここはちょっと面白いと思いますよ。
片山・栗山さんのブログで拝見しましたけどドジャースの山本由伸投手にフォームが似ているピッチャーがいるとか?
栗山・柿沢君って言うんですけどお父さんがイタリア人なんですよ。彼ともう1人、田川投手と言うピッチャーがいるんですけど、彼も同じように140キロぐらい投げるんですよ。2枚そろっていて、でキャッチャーもいんですよ。中村君って言うんですが彼は県トップクラスのキャッチャーですよ。
片山・シードに並ぶくらいということですか?
栗山・十分、十分。
片山・ピッチャー2枚持っているというのは大きいですね。
栗山・大きいですね。
片山・ほかにも飛龍対誠恵という沼津私学対決とかあったり。
栗山・あと沼津工業と沼津商業も。個人的なマニアックな視点で(磐田南のゾーン)富岳館対清水東のそれぞれ監督が静岡商業で一緒にやってたんですよ。
片山・師弟対決ということですか?
栗山・いやいや監督、部長で一緒に。
片山・その対決が1回戦であると。
栗山・手の内を知り尽くした同士の対決ですよね。これも面白いですね。

プロ注2人の対決は必見の価値あり
片山・さらに下のブロック見ていきましょう。ここは御殿場西、そして去年のチャンピオン掛川西が入っていますね。ここの注目は?
栗山・このブロックで1回戦注目カードがありまして、駿河総合対オイスカ浜松国際。これは駿河総合は一ノ瀬投手、オイスカは大橋選手という2人ともプロ注目なんですよ。
片山・大橋選手と言うのは内野手、ショート。どんなところがそれぞれ特徴がありますか?
栗山・一ノ瀬投手は長身から投げ下ろす強いボールですね。体のエンジンが大きんですよ。イメージ的にはオリックスの山下舜平太みたいな。馬力ありますよ。いずれは150キロ以上出すようなピッチャーになるのかなと。
片山・望月監督はそういうポテンシャルの選手大好きですからね。オイスカの大橋選手は何がすごいんですか?
栗山・ずば抜けた身体能力ですね。練習見に行ったんですけど三遊間の打球をアクロバティックにさばくんですよね。足も当然速いです。50メートル6秒切るぐらいの。これはもう逸材ですね。
片山・いきなり2人の対決が見られるかもしれないと。ちょっと1回戦からもったいない感じが…。
栗山・もったいないですね。
片山・7月5日掛川球場第2試合。
栗山・これは注目ですよ。
片山・行かれますか?
栗山・もちろんです。
片山・弊社も取材に行きたいと思います。
栗山・大橋君の名前が、令和と書いて「レオ」なんですよね。彼が小学校の時に元号が変わったと言っていましたので、そういう話題性もある。
片山・その注目対決のほかに御殿場西もいますし、掛川西がやっぱり気になります。どうですか今年は? 去年の戦力が野手を中心に残っていますが。
栗山・注目したいのは石川選手ですね。スラッガーの。ここにきてホームラン量産しているという情報もあります。
片山・上背もありますし189㎝ぐらいありますよね。石川君が残っていてセカンドの鈴木君も残っている。サードの佐藤君がキャッチャーなんですよね。桑原君、俊足のセンターも残っている。
栗山・で、ピッチャーも杉崎投手、加藤投手。右、左とバランスはいいですよね。
片山・春はベスト16。
栗山・日大三島に敗れてしまったんですけども、夏の優勝候補の一角と言ってもいいと思います。
片山・2連覇の可能性はあると。
栗山・はい。あと御殿場西。今年はポテンシャルが高い選手がそろっています。今年の3年生は森下監督(故人)が集めてきたので力のある選手がそろっているんですよ。あと城南静岡も。
片山・遠藤選手ですかね。
栗山・遠藤選手は去年県大会で3本くらいホームラン打っています。遠藤選手がいて、ピッチャーもいいんですよ、左ピッチャー。
片山・左なんですね。城南は1回戦沼津東、面白いですね。いいカードですね。
では聖隷と浜名のブロックはいかがですか
栗山・聖隷クリストファーが一つ抜けているとは思うんですけども、進学校のチームが浜松北とか韮山とか入っていますね。
片山・浜松北はいいピッチャーがいると。
栗山・まだ2年生なんですけどいいピッチャーです。左ピッチャーなんですけど球は切れますね。
片山・あとは市立沼津、三島南、島田工業あたりがどんな戦いを見せてくれるのか。
栗山・湖西も侮れないですよ。佐々木投手という左ピッチャーがいて、キャッチャーの子も140キロぐらい投げるんですよ。
片山・じゃあそういうリレーもある?
栗山・ありますあります。プラス、1年生に今年190センチの大型左腕が入ってきた。湖西は本当に侮れないチームです。

動画版はこちらから https://www.youtube.com/watch?v=wiVPT1MSt2A&t=11s

栗山 司(くりやま・つかさ)1977年、静岡県生まれ。スポーツライター・編集者。雑誌『野球小僧』の編集者を経てフリーに。2012年に地元・静岡に根差した野球雑誌『静岡高校野球』を自費出版で立ち上げ、年2~3回発行。ブログ『静岡野球スカウティングレポート』(http://tsukasa-baseball.cocolog-shizuoka.com/) でも県内の野球情報を発信する。
「静岡高校野球2025夏直前号」が現在発売中。お求めは静岡県内書店にて。
片山 真人(かたやま・まさと)1987年、静岡県富士市生まれ。静岡県立吉原高校入学後、野球同好会を立ち上げ、2年生の時に高野連に加盟。同校初代キャプテンを務める。高校野球を伝えたいとアナウンサーを志し、現在は高校野球取材や実況、ドラフト取材などを精力的に行っている。