竜巻被害から2週間 被災地には“火事場ドロボー”も 先が見えない復旧作業に被災者はくたくた 静岡・牧之原市

伊地健治アナウンサー(18日):「竜巻の被害からあす19日で2週間となる牧之原市の細江地区です。こちらに見える道路、発災直後は多くの電柱が倒れて通行できない状況でしたが、今ではすっかり片付けられ、新しい電柱も設置されて車も通れるようになっています。ただ、その周りを見てみますと、2週間前から時が止まったような状況です。あちらにあるアパート。もう人が住めるような状況ではありません。近所の人によりますと、住んでいたほとんどの方は転居したそうです。奥に見える山々は、竜巻でえぐられたということなんでしょうか、樹木が丸裸になったような状態でそのままの状況となっています。そして、こちらには、鉄筋コンクリートのマンションがあるんですけれども、道路側から見える部屋の窓という窓ほとんどがガラスが割れている状況です。当然、人は住んでいません」
牧之原市では68人がけが 1132棟の建物に被害
竜巻の発生などで、甚大な被害をもたらした台風15号。静岡県の発表によりますと牧之原市では、68人がけがをするなどの人的被害があり、1132棟の建物が被害を受けました。気象庁は、牧之原市から吉田町にかけて発生した「竜巻」について、“国内最大規模“の風速およそ75メートルであったと発表。この規模の竜巻が県内で観測されるのは初めてのことで、「過去最大クラス」の竜巻となりました。
伊地アナ:「午前9時45分を過ぎたところです。朝早い時間はほとんど人通りがなかったんですけれども、この時間には、至るところに復旧作業に当たる電気工事の会社の人ですとか、あるいは工事関係者の人たちの姿が見えます。そして、あちらの家屋の前には、家屋がどれだけ損害を受けているのか、調査している職員の姿が見えます。浜松市と書かれたビブスをつけています」

住宅や農業用ハウスの被害状況の調査
今週火曜日には県内外の自治体からの派遣職員が被害状況の調査のため牧之原市に入りました。
牧之原市 杉本喜久雄市長:「被災した皆さんは一日でも早く、り災証明を発行してもらってそのあとに住宅の再建に入っていきたいと。一番疲れがピークになっていて精神的にも非常に不安定になっている」
被害認定調査の応援は県内からのべ180人、県外からのべ120人規模で行われます。

17日には農業用ハウスの被害調査も始まりました。県や牧之原市の職員ら16人が調査に入り、被害状況を調べていました。
被害が一段と大きかったイチゴ農家の男性は…。
男性:「この調査でどれだけの被害が出ているかしっかり調査して、国に情報を上げてほしい」

19日から始まったのは、乗用車や軽トラックの無償貸し出し。日本カーシェアリング協会が牧之原市に臨時の事務所を設置しました。事前予約で、乗用車は7日間、軽トラックは3日間まで借りることができます。
早速、子どもの送迎を行う事業所が乗用車を借りる手続きをしていました。こちらでは車3台が廃車になってしまったといいます
竹市恵美子さん:「子どもたちを学校にお迎えに行って、帰りはご自宅まで1人1人送り届けますので、送迎車は本当に欠かせないものなので、大変助かります」
車のレンタルサービスは、12月25日まで行われ、期間中は何度でも利用することができます。

市民は厳しい生活
被害から2週間。いまだ市民は厳しい生活を強いられています。こちらの店舗兼自宅は屋根の大部分が飛ばされてしまっています。
被災者(平賀正廣さん悦子さん)
伊地アナ:ここは居酒屋さんか何かですか?
平賀さん:「そうそう食堂っていうか一応御食事ポックンていう名前でやってたんだけど」
伊地アナ:もう何年ぐらいやられてる?
平賀さん:「ここへ来てまだ8,9年。その前はちょっと違うところでやってたもんでね」
伊地アナ:もう屋根は抜けちゃってますね。
平賀さん:「ない。その時(竜巻被害)になくなった」
伊地アナ:ここ2週間どう生活していた?
平賀さん:「車の中」
伊地アナ:車の中ですか!

こちらでは15頭の犬を飼っているため、避難所に行くこともできず、軽自動車の中で夫婦で寝泊まりしてるそうです。
被災者(平賀正廣さん悦子さん)
伊地アナ:改めて2週間たって、今どういうお気持ちですか?
平賀さん:「どういう気持ちも何もないよね。自然のあれなもんで。なんにも言いようがないよね。誰の責任でもない」
平賀さん夫婦はお店の再建を断念し、転居先を探しているということです。

細江地区でも特に被害がひどかった通り沿いのマンションの住民に話を聞いてみると。
伊地アナ:2週間たっていかがですか、今?
被災者:「何とも言えない。何かもう生きてんだが死んでんだかわかんないよね。こんな状態だと。みんなが周りの人がそうだからね。みんなが大変な思いして片づけたり何かしてるけど…」
伊地アナ:電気は来てるんですか。
被災者:「ああ、電気3、4日前かな、そのくらいだね。その間、ずっと電気も水道も出ない」
伊地アナ:1週間も。水道も?
こちらはポンプで水をくみ上げる方式のため、電気が復旧するまでは水も出なかったそうです。
伊地アナ:この1週間以上どんなふうにして生活してたんですか? 水も電気もない中で。
被災者:「そこのJAさんで市とか何かボランティアさんだか分からないけど、おにぎりとかもらったりとかパンをもらったりして、何とかしのいでた感じ」

伊地アナ:「被害の大きかった牧之原市細江地区にあるJAの駐車場です。ここに1台の車があるんですが、ここでは被災した人たちに向けて食料の配布が行われています」
8日からはじまった災害時食料支援。牧之原市が主体となり、地元のスーパーとJAハイナンが協力して運営していましたが、火曜日から東京の企業が引き継ぎ被災者支援として行っています。スーパーからパンやおにぎりを毎日およそ1000点購入し配布しています。
被災者(女性)
伊地アナ:毎日利用されている?
女性:「そうですね。学生ボランティアさんが来てくれている。それで8人ぐらいみえてくれているもんですから、その人たちの分も今回いただいて。きのうから来て頂いてるもんですから」
伊地アナ:(復旧の)目途は?
女性:「まだちょっと1,2か月ダメじゃないかなって、主人は言ってるんですけど」

リシャールミルジャパン 金子朋永さん:「(牧之原)市がこのような活動をされているので、その時に炊き出しでつくるよりは、地域のスーパーさんが御協力をされて作ってらっしゃるものを、町の方にお配りするということを聞かせていただきまして、ではその支援をそのまま、うちで引き継ぎましょうという話で出していただきました」
伊地アナ:あす(19日)までの予定ということですがそれ以降は?
金子さん:「これ以降は市とお話をさせていただきながら、どのような形ができるのか、こういった食料の支援だけではなくて、別のものも含めたものを御協議させていただきながら、必要なところでできればというふうに思っております」

“火事場ドロボー”も
民間の支援が広がる一方で、許されない出来事も。
被災者:「一輪車を持っていかれちゃったり、盗まれちゃったり」
伊地アナ:盗まれちゃったんですか?
被災者:「いいのじゃないのにね。孫が次の日使うのに立てかけておいて、2つともあったんだけど2つとも持ってかれちゃって」
それだけでなくビニールハウスのそばに置いてあった鉄製の足場も盗まれたといいます。
Q.2週間たって思うことは?
被災者:「凄かったのと、よく怪我もしなくてあれだって思うくらいですよね。みんな一緒だでしょんないねっていう感じですよね、今は…」
瓦礫や家電など様々なものが出た災害ごみ。臨時で静波海岸に設置された災害ごみ置き場はわずか2日でいっぱいになりました。そのため東名高速牧之原インターそばに新たにごみ置き場が設けられました。発災から2週間足らずで4000台以上の車が災害ごみを搬入したそうです。

牧之原市環境課 西尾亘さん:「当初と比べるとやはり搬入の台数は今減少してきています。また今後ごみの受け入れ状況につきましても、推移を見ながら判断することになると思いますが、まだ当面の間は受け入れを続けるという判断でおります」
発災から2週間。電気や水道の復旧や様々な支援が行われているものの、被災した多くの人たちが元通りの生活に戻るには程遠いのが現状です。
