人力車で走り続けて27年 最後の花道は大道芸ワールドカップ 89歳のラストラン 静岡市

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今年も大盛況に終わった大道芸ワールドカップを特別な思いで迎えた男性がいます。30年近くを共にした相棒との別れの1日。ラストランに密着しました。

「ちょっと気を付けて」

 たくさんの人で賑わう駿府城公園で目を引く一台の人力車。

 持ち主は、五条満さん89歳です。

五条満さん(89)
「桜吹雪、男の一生だね。」

 休日の駿府城公園で人力車を引き続け27年。

 五条さんは今年4月“ある決断”をしていました。

五条満さん
「この年末で公園の許可は切れる。今年いっぱいということで。」

 その最後の舞台として選んだのが「大道芸ワールドカップ」でした。

(大道芸ワールドカップ3日目・引退前日)

 会場に五条さんの姿がありましたが、人力車は動いていません。

五条満さん
「お客さんをけがでもさせちゃ困るという」

五条満さん
「そりゃ寂しいよね。やっぱ梶棒を持つと車を引きたくなっちゃう。一人でいたら泣いている…ほんとそういう気持ちになってしまう…(涙込みあげる)」

 旅行先の飛騨高山で法被と地下足袋(じかたび)をまとう車夫の姿に魅せられ、定年後、人力車の道へ進んだ五条さん。

 静岡市の観光発展のために、ほぼ毎週駿府城公園で活動をし、人力車で出た報酬は静岡市の福祉に寄付するなど、志をもって人力車を引き続けてきました。

五条満さん(89)
「人力車という相棒があって二人三脚で来た。どう締めくくっていいかという迷いが充満しちゃっている。まだ引きたいという気持ちが強く出ちゃっている。」

 90歳目前にして体が心に追いつかないという葛藤。

 ただ、引退の舞台に決めた大道芸は残すところあと1日です。

Q.明日はどんな一日にしたい?

五条満さん(89)
「もう楽しくいくしかないね。がんばります。」

五条満さん
五条満さん

 迎えた引退当日。見事な秋晴れに恵まれました。

大場舞桜アナウンサー
「おはようございます。きょうの体調はどう?」

五条満さん
「非常に神経がピリピリして気分もいい。」

 朝から、写真を撮るお客さんや引退を惜しむ人たちが絶えることなく訪れます。

25年来の知人
「面白い人。寂しいね」

25年来の知人
「とにかく優しい方。いつもにこやかにして誰にも優しいし」

 東京から親戚も駆け付けました。

五条満さん
「おおー久しぶり!元気で」

 体が不自由なため、たまにしか会うことができない東京の親戚も…。

 これまで、人力車に乗ったことはなかったそうです。

娘さん
「少し、動いてあげたら?」

五条満さん
「うん、少しな」

Q.満さんこれから動く?

「少し動こうかなと。」

Q.その気持ちになった?

「そう。向こうへ行く」

 突然、人力車を引き出しました。

 たくさんの声援の中で力がわいたのでしょうか。

 一歩一歩、力強く車を前へと進めます。

 ラストランに何を思うのか。静かに前を見据えて…

 車輪が止まり人力車をゆっくりとおろします

Q.走れましたね。

五条満さん(89)
「その気になれば人間ていうのは頑張っちゃうもんだね」

 全てを出し切った、ラストラン。

Q.27年間を一言で表すとすると?

五条満さん(89)
「人情かな。いろんな思い出が浮かんでくる。自分でいうのもおかしいけど、大成功というそういう大手を振って大丸ですよね。いい思い出ですよね…」 

五条満さん
五条満さん