定年後に人力車の道に 27年続けるも今年が最後 89歳男性が特別な思いで参加した「静岡まつり」 静岡市

 大盛況となった静岡まつり。そんな中今回、ひときわ特別な思いで参加する男性がいました。桜満開の公園内で人力車を引く、五条満さん。昭和11年生まれ、御年89歳です。ほぼ毎週、休日の駿府城公園で人力車を引き続け、この道27年の大ベテラン。

五条満さん(89)
「時には結婚式に呼ばれたり、お祭りに呼ばれたりもした」

89歳とは思えないパワフルさですが、実は…

五条満さん(89)
「これが潮時というのは自分で中々決断できないのが人生だと思う。この年末で公園の許可は切れる。今年いっぱいということで」

実は今年限りで人力車を引退する決断をしました。まもなく行われる静岡市民文化会館の大規模改修によって、人力車の保管場所がなくなることが理由です。

五条満さん(89)
「これが潮時というのは、自分で中々決断できないのが人生だと思う。この年末で公園の許可は切れる。今年いっぱいということで」

五条満さん(89)
五条満さん(89)

 旅行先の飛騨高山で法被と地下足袋をまとう車夫の姿に魅せられ、定年後に人力車の道へ。ところが、人力車の値段は、当時の金額で1台200万円と超高額。反対の声もあったといいます。

五条満さん(89)
「200万円というのは、27年前、あいつバカかって言われたかも分からないよ。だけど、女房に絶対浮気しないから買ってくださいって」

何とか奥さんを説得し人力車を購入。そして、1998年7月に「駿府俥夫(すんぷしゃふ)の会」という12人のチームを発足しました。

五条満さん(89)
「これは私の相棒で愛車ですから」

定年後に人力車の道に 27年続けるも今年が最後 89歳男性が特別な思いで参加した「静岡まつり」 静岡市

乗車料金はずっと変わらず、公園内の内堀1周で大人700円、子ども300円。人力車サービスとしては破格の料金のため、耐えきれなくなった仲間は徐々に辞めていき、2007年には満さん1人だけになってしまったといいます。

五条満さん(89)
「12名もいた車夫が次から次へとやめていく、それは報酬がないから、報酬は寄付している。静岡市とか福祉とか」
Q.満さんは人力車でもうけはある?
「ないです(笑)。借金はあります(笑)」
Q.700円でよく続けようと思いましたね
「やっぱそれは志。市の観光発展のためにとか、観光の一助になりたいという心の動き」

冗談交じりに笑顔で話す満さんですが、心の中には人力車を引き続ける熱い思いがあります。

五条満さん(89)
「(客からの)よく頑張っているねという一言。それが心の支え、励みにもなる」

27年の人力車人生で、最後の静岡まつり。大場アナウンサーが乗車させてもらいます。

大場アナ「とっても風が気持ちいいです。目線が桜の木に近くて嬉しいですね」

満開の桜が祭りでのラストランをお祝いしているかのようです。

五条満さん(89)
Q.最後の静岡まつり、きのう雨だったが、きょうは晴天に恵まれたがどう?
「本当につき男というかまじめにやって来た証かな」
Q.桜の下を走るのは好き?
「そう。風が吹いて散ってくる時が「桜吹雪男の一生」という。もうアルコールより好きです」

定年後に人力車の道に 27年続けるも今年が最後 89歳男性が特別な思いで参加した「静岡まつり」 静岡市

去年から少しずつ体力がきつくなってきたといいますが、この日は、1回10分のコースで30回分お客さんを乗せました。

大場アナ「すごい楽しかったです。人力車で高くなる分、花も近いし、風もくるし、
なんだかゆったりとした時間が流れて」

五条満さん(89)
「引退したら何をしようか、そんなこと考えずに一途にこの年末まで真っ当しようと思っている。もう楽しくいくしかないですよね。くよくよしててもしょんないし」

定年後に人力車の道に 27年続けるも今年が最後 89歳男性が特別な思いで参加した「静岡まつり」 静岡市