食材の滋味を引き出す、一期一会の和食時間 掛川市「土鍋」

 掛川市塩町。県道37号沿いに、土鍋の湯気がふわりと立ちのぼる店がある。「滋味 土鍋」。カウンターだけの小さな和食処だ。厨房との距離が近く、料理の音、香り、会話までもが心地よく混じり合う。ここでは“手作り”を信条に、素材の持ち味を最大限に引き出す料理が供される。
 例えば店主の池嶋克己さんの地元・兵庫県丹波篠山産の黒枝豆を使った「黒枝豆の出汁焼き」(500円)。カンカンに熱したフライパンに豆を入れ、じっくりと蒸し焼きに。仕上げに一番だしを注ぐと、香ばしい香りが立ち上る。ホクホクとした食感に、だしの旨みがじんわり染みる。

黒枝豆の出汁焼き(500円)
黒枝豆の出汁焼き(500円)

 看板料理の一つ「旬彩の土鍋蒸し」(800円)は、旬の野菜をだしで蒸し焼きにした一品。ただ蒸すのではなく、野菜によっては表面を軽くあぶり、甘みや香ばしさを引き出すという。土鍋で加熱することで、野菜本来の旨みと甘みが際立ち、ひと口ごとに滋味が広がる。

旬菜の土鍋蒸し(800円)
旬菜の土鍋蒸し(800円)

 寒くなるこれからの季節には「手前の寄せ鍋」も人気だ。日向鶏や白ネギ、シイタケなど旬の素材を、丁寧に下処理して土鍋へ。日向鶏はしっとりとして弾力があり、噛むほどに旨みがにじむ。魚のハナフエダイは身がふわりとほぐれ、優しい甘さが広がる。すべての食材が、土鍋の中で見事に調和している。

手前の寄せ鍋(1800円)
手前の寄せ鍋(1800円)

 一方、湯豆腐は、店主自らが葛を使って手作りした葛豆腐を使用。にがりではなく葛を用いることで、豆乳の自然な甘みとまろやかさを引き出している。温めると口の中でとろけ、ポン酢の酸味とだしの香りが優しく重なる。

湯豆腐(700円)
湯豆腐(700円)

 「お客様との会話も含めて、一期一会を楽しんでほしい」と池嶋さん。小さなカウンターで交わされる言葉や笑顔も、この店の味の一部だ。丁寧に手をかけ、食材の生命を生かした料理。その一皿一皿に、店名の通り“滋味”が宿っている。

食材の滋味を引き出す、一期一会の和食時間 掛川市「土鍋」

滋味 土鍋
掛川市塩町6-13
電話番号:0537-54-5190
定休日:月曜日、他 月1回休み
営業時間:16:30〜23:00(L.O.) ※日曜日は 22:00(L.O. )
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