潔さこそが真髄。豚の内臓が持つ、概念を超えた「やわらかさ」 静岡市「喰心坊」

 静岡市葵区松富に今年9月、新たな食の熱源が生まれた。店名を「喰心坊(くいしんぼう)」という。元々は先代が40年ほど居酒屋として営んでいた名を継ぎ、ランチメインのモツ煮定食とうどんの専門店としてリニューアルオープンを果たした。20代から80代まで幅広い層が訪れるというこの店が掲げるのは、一皿のモツ煮込みにかける研ぎ澄まされた職人魂だ。
 この店の看板メニューにして、モツ煮込みの哲学が凝縮されたものが「モツ定食白」である。驚くべきは、その構成の潔さ。具材に一切の野菜を入れず、モツだけで勝負するという。主役は豚の内臓。大腸や小腸を生のまま仕入れ、これに食道やハラミといった希少部位までをも惜しみなく投入する。店主自らが下茹でからカット、長時間にわたる煮込み、そして味付けまでを一貫して行うというこの手間こそが、臭みを完全に消し去る最大の秘訣だ。
 箸で持ち上げるとかなりの長さがある大ぶりなモツにもかかわらず、さっと切れてしまう驚異のやわらかさを誇る。新鮮な豚が持つ野趣はそのままに、臭みは皆無。口に運べば、とろけるような口溶けとともに、澄んだモツの旨味が広がる。この至高のモツ煮は、やはり炊きたてのご飯と楽しむのが王道。汁をご飯にかけても良し、モツでご飯を巻いても良し、お好みのスタイルでその相性の良さを味わってほしい。

モツ定食白(950円)
モツ定食白(950円)

 さらに、食の探求心を刺激するのが、独自の製法で白ネギを漬け込んだ「激辛白ネギ醤(ジャン)」による味変だ。ひとさじ加えるだけで、優しくも濃厚なモツ煮の表情が一変。白ネギの爽快な香りとキリッとした辛味が、食べ進める手を止めさせない。ちなみに、ここでは注文時に「大盛りにしてください」と伝えれば、ごはんの大盛りを毎日無料で提供しているという太っ腹なサービスも、食いしん坊には嬉しい限りだ。

激辛白ネギ醤で味変を楽しもう
激辛白ネギ醤で味変を楽しもう

 新たなモツ煮の愉しみを提案するのが、カレー味のモツ定食である。濃厚なモツの脂と旨味を、スパイシーなカレーが抱き込み、奥行きのあるコクを生み出している。

モツ定食+小うどん(1150円)
モツ定食+小うどん(1150円)

 そして、ランチのもう一つの柱がうどんだ。業務提携により生の状態から仕入れる手打ちうどんは、心地よいコシを湛え、キリッとした麺つゆと絡み合う。このうどんとモツ煮が融合したのが「モツカレーうどん」だ。通常の麺つゆを下に張り、その上にカレー味のモツ煮込みをのせた一杯は、スパイシーでやわらかなモツと、コシのあるうどんの食感のコントラストが楽しめる。

モツカレーうどん(800円)
モツカレーうどん(800円)

 最後に豪快な一杯、「ほろほろ肉盛りうどん」も忘れてはならない。豚の角煮をほろほろになるまで煮込み、その濃密な味付けの肉塊を、うどんの上に豪快に鎮座させた一品だ。その口当たりはどこまでも優しくとろけ、食べ応え満点。

ほろほろ肉盛りうどん(1300円)
ほろほろ肉盛りうどん(1300円)

 土日は朝8時からモツ煮定食を提供しているという、この「喰心坊」の熱意は、静岡の朝食の風景さえも変えるだろう。

潔さこそが真髄。豚の内臓が持つ、概念を超えた「やわらかさ」 静岡市「喰心坊」

喰心坊
静岡市葵区松富1-14-1
電話番号:054-271-1935
定休日:水曜日
営業時間:平日10:00-14:00/土・日・祝8:00-14:00
Pあり

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