全国でここだけ! 日本の団地の歴史が分かる 昭和20年代の団地をめぐるツアーを静岡市が実施
静岡市には、昭和20年代に作られた築70年を超える公営団地が数多く残されています。静岡市は、そのうちの市内4つの団地をめぐるウオーキングツアーを今回初めて実施しました。(取材・文=三浦徹)
静岡市は、葵区にある日本最古の鉄筋コンクリート造の公営団地「羽衣団地」を、一般に公開するツアーを月に1~2回実施しています。研究者や建築関係者、団地マニアから昭和レトロ好きの人まで、これまで幅広い年齢層の多くの人がここを訪れたといいます。
実は、市内には昭和20年代に建てられた多くの公営団地が残されています。羽衣団地以外の建物も見てみたいとの声に応え、静岡市は今回4つの団地をめぐるウオーキングツアーを初めて実施しました。
●静岡市住宅政策課 小澤映里係長:
「静岡市には昭和20年代の公営団地が9棟あり、その多くが徒歩圏内にあります。間取りは建てられた年によって少しずつ違っていて、見比べることによって公営団地の変遷を見ることができます。羽衣団地の見学ツアーには、全国各地から今年は300人以上の人が訪れているので、観光資源とまではいきませんが、この団地をきっかけに、初めて静岡に来るという人が増えてくれれば良いなと思います」
ツアーが行われたのは11月24日の午前と午後の2回。
これまでの羽衣団地の見学は無料でしたが、今回は1100円の参加費がかかります。これは歩いて市内を移動するため、万が一に備え、保険を掛ける費用だということです。
ツアーの参加者は合わせて8人。参加費を払ってまで古い団地を見学したいというのはどんな人なのでしょうか? やはり団地マニア?
記者も午前の部に同行しました。集合場所は日本最古の公営団地・羽衣団地。参加者は5人です。
静岡市葵区駒形通に2棟建っている羽衣団地。1948年に着工した、地上4階地下1階の鉄筋コンクリート造の市営住宅です。建設した年から「48型」と呼ばれるこの建物は、日本最古の鉄筋コンクリート造の公営団地です。
見学用の室内には、当時の暮らしをイメージしやすいように、家具やテーブルなどが置かれています。参加者は食器棚、配膳口、手洗い場などを当時のままの施設を見学し、写真におさめていました。
そして一行が、次に向かったのは地下にあった共同浴場。「浴場は8世帯ごとに1つ設けられていて、時間や曜日などそれぞれのローカルルールに基づいてお風呂に入っていた」という説明をうけ、木製の浴槽をのぞき込む参加者たち。
ここまでは今までの羽衣団地の見学コースと一緒で、ここからが今回初のコースです。
一行は次の見学地「新通団地」へ。といっても羽衣団地のすぐ隣の建物です。外観は羽衣団地と区別がつきませんが、羽衣団地の1年後にできた「49B改良型」と呼ばれる建物です。羽衣団地との違いは、3畳の板の間が設けられている点。設計図面上には「子供室兼作業室」と記載されていますが、何のためのスペースかは不明だということです。
今回のツアーの参加者の中に、この新通団地に実家があったという女性がいました。自身は高校を卒業するまで、父親は2年ほど前までここに住んでいたということです。新通団地の思い出は?
●参加者(30代女性):
「シャワーもないし、不便でした。お世辞にも『きれい』とは言えず、友人の家をうらやましく思ったこともありました。昔は屋上に上がることができ、そこから安倍川花火大会の花火がよく見えたことが思い出です。ここがそんなに古い建物で、歴史的価値があるということは最近知りました」
そして一行は次の見学地「三番町第一団地」へ。距離は約1km。15分ほど歩いて到着しました。
「三番町第一団地」は新通団地のさらに1年後の1950年に着工した「50BS前期型」。水平基調が特徴的な庇(ひさし)と建物の角などに凹凸がある外観が特徴です。これまでの団地は平板な箱といった外観でしたが、この辺りから建物に「デザイン」という概念が出てきたそうです。室内には出窓が設けられました。
そして一行は、10mほど離れた「三番町第二団地」へ。ここが最後の目的地です。
「三番町第二団地」は第一団地の1年後の1951年着工の「50BS後期型」。特徴的だった庇(ひさし)を廃止し、窓が大きくなりました。さらにデザイン重視となり、羽衣団地とは明らかに見た目も違っておしゃれな感じに。窓が大きくなったことで室内空間を広く使えるようになったということです。
この辺りになると、「昔、親戚が住んでいた団地に似ているな」などと親しみを感じました。
今回のコースは1年ごとに新しくなる建物を順番にめぐるツアーでした。このため、専門知識がない人でも、鉄筋コンクリートで作られた公営団地の変遷がよくわかりました。
ツアーに参加した人は…。
●参加者(20代男性 浜松市から):
「建築物が好きで参加しました。いろいろな建物を見て回っていますが、建物は外からしか見ることができないのが一般的です。今回、実際に建物の中まで入れるというのは貴重な体験です」
●参加者(50代女性 大阪府から):
「団地を見るのが好きで、全国の団地を見て回っています。静岡市に来たのは今回が初めてです。今回のツアーは丁寧な説明で分かりやすかったです。可能ならば静岡市の古い団地に住んでみたいと思います」
●静岡市住宅政策課 小澤映里係長:
「今回めぐった建物は、研究者の方を案内したことはありますが、一般に公開したのは初めてです。あまり告知をしなかったにもかかわらず、遠方から来られた方もいて、内容も好評だったので、今後も継続して実施することも考えています」
