東海道の旅人を癒やした、丸子名物とろろ汁 静岡市「丁子屋」
慶長元年、1596年創業。静岡市駿河区丸子の「丁子屋」は、2026年で430年を迎えた。歌川広重の浮世絵「東海道五拾三次之内 鞠子」にも描かれた老舗で、名物は静岡県産の自然薯を使ったとろろ汁。東海道を歩いた旅人も食べたであろう滋養の味を、現在も同じ土地で伝えている。
夫婦やカップル、友人同士で訪れるなら、2人分をそろえた「夫婦とろろ」がある。名物のとろろ汁に麦飯、自然薯の揚げ物や食べ比べ、むかごの和え物、甘味まで付く定食セットだ。自然薯を一通り味わえる品数の豊かさもさることながら、料理ごとに食感と調理法が変わるため、粘りだけではない魅力が見えてくる。
とろろ汁に使うのは、ほかの品種と掛け合わせていない、静岡県内の在来品種の自然薯。なるべく皮を残して機械ですりおろし、すり鉢で生じょうゆ、マグロの煮汁、生卵を混ぜて下味をつける。さらに、自家製白みそと焼津産カツオだしのみそ汁を加える。香りの強い自然薯に白みそとカツオだしが負けないよう、3つの釣り合いを細かく調整しているという。麦飯には2~3杯分を惜しまずかけ、ご飯と泡立てるようによく混ぜる。あとは音を立てて豪快にかき込み、途中で薬味を足して味を変える。老舗の名物だが、食べ方は気取らない。
夫婦とろろにはたくさんの自然薯メニューがセットになっている。揚げ物は「揚げとろ」と「おかべ揚げ」の2種類。「揚げとろ」は、下味をつけた自然薯をのりにのせて揚げる。周囲はカリッと、中にはとろりとした粘りが残り、自然薯の風味が濃い。「おかべ揚げ」は豆腐とすりおろした山芋を混ぜたもので、ふんわりとした素朴な味に仕上げる。同じ芋を使いながら、のりの香ばしさを添えるか、豆腐でやわらげるか。揚げ物だけでも違いは鮮明だ。
自然薯の食べ比べには「梅とろ」と「切りとろ」が並ぶ。梅肉を添えた梅とろは、酸味が入り、残暑の時季にもさっぱり食べられる。切りとろは、わさびじょうゆをつけて刺身のように味わう。すりおろした姿とは異なる、シャキシャキした歯触りが楽しい。
広重が描いた店先には、客だけでなく、働く人や家族、生産者、次代を担う子どもまでがいると丁子屋は捉えている。430年先へつなぎたいのは、料理の作り方だけではない。皆が安心して集まれる場所でありたいという願いだ。丸子のとろろ汁を2人で囲めば、長い歴史もぐっと身近になる。
とろろ汁の丁子屋
住所:静岡市駿河区丸子7-10ー!
電話番号:054-258-1066
定休日:木曜日・月末の水曜日
営業時間:平日 11:00~14:00 L.O. / 土・日・祝 11:00~15:00 L.O./16:30~19:00 L.O.
Pあり