楽しみを胸に山里へ、帰り道には喜びを 川根本町「中里の庄・和&ゲストハウスKAZU」
夜に聞こえるのは虫の声。見上げれば広い空、目の前には山が連なる。川根本町地名の「中里の庄・和&ゲストハウスKAZU」は、2025年に藤枝市瀬戸ノ谷から移転した食事処兼ゲストハウスだ。犬と泊まれる施設やドッグランも備え、食事と宿泊はいずれも予約制。「来る時には楽しみを、帰る時には喜びを」を掲げ、山里で過ごす時間ごと客を迎えている。
店の特色がよく表れているのが「中里とろろ膳」。とろろ汁と麦ごはん、汁物に、毎日手作りする小鉢が4~5品並ぶ。取材時には、ひじきの煮物をはじめとする日替わりの料理に、キウイや旬のマスカットまで添えられていた。主役の自然薯は、島田市湯日や牧之原の農家から仕入れる地元産。育てられている複数種の中から、粘りの強いものを選んでいる。
自然薯をするのは、客の顔を見てから。作り置きすると味や風味が変わるため、すりたてにこだわる。合わせるだしには昆布とカツオ節、さらにサバの切り身を加え、サバの旨みを十分に引き出してからみそで調える。麦ごはんへかけると、味はあっさりとして穏やか。小鉢の調味を邪魔せず、さらりと食べられるとろろ汁だ。
膳に付く「三種山芋焼き」は、自然薯、大和芋、長芋をチーズで包み、オーブンで焼き上げる。3種類の芋が持つ歯触りや粘りの違いに、溶けたチーズのコクが加わる。同じ山芋でも、調理によって食べ心地が変わる。
さらに趣向を凝らした料理が「精進蒲焼御膳」。のりをウナギの皮に見立て、その上にすりおろした生の自然薯をのせて揚げる。表面へウナギのような切れ目を入れ、蒲焼きのたれを塗って焼けば、見た目はうな重さながら。甘辛いたれが自然薯にもごはんにもなじみ、目と舌の両方を驚かせる。
サイドメニューでは「大トロナスの田楽」が人気。田楽みそを塗ったナスは、火が入ると中がとろりとやわらかくなる。旬の野菜を生かした素直な一品が、自然薯中心の食事に季節の味を添える。
食卓を離れても、山の眺めと静けさは続く。急いで食べて帰るより、小鉢を少しずつ味わい、食後ものんびり過ごしたい。すりたての自然薯を用意する店の時間に身を預ければ、帰路につく頃には「喜びを」という言葉の意味も実感できそうだ。
中里の庄・和&ゲストハウスKAZU
住所:川根本町地名1298-1
電話番号:080-4297-0662
定休日:火~金曜日(食事処)
営業時間:土・日・月曜日 / 11:00-14:30 L.O.14:00 / ※要予約
Pあり