三保の風土が皿になる──完熟トマトと農園の恵みを味わう 静岡市「川村農園CAFE」

 静岡市清水区三保、松原にほど近い住宅地に佇む「川村農園CAFE」。江戸中期から続く農園の営みを受け継ぐ12代目の店主・川村研史さんが、畑で育てたトマトやマスクメロンをそのまま料理と飲み物に仕立てる隠れ家的カフェだ。
 まず触れたいのは、看板と言って差し支えないトマトスムージー。品種ごとの性格を見極めてアミノレッドやフルティカ、アイコをブレンドし、冷凍トマトと自家製レモン、甜菜糖で調整する。甘さと酸味のバランスを、畑の記憶ごとグラスに閉じ込める技だ。

トマトスムージー(680円)
トマトスムージー(680円)

 ランチプレートの骨格は、自家製ミネストローネ、農園サラダ、ピザトースト。季節で変わるトマトの味わいがスープに深みを与え、素朴な火の仕事が野菜の旨味を引き出す。野菜の自然な甘みとトマトの酸味が交わる瞬間に、素朴さと力強さが同居するのだ。

ランチプレート(1200円)
ランチプレート(1200円)

 驚きはトマトジャムの活用だ。知り合いのあんこ屋に頼んでジャムを作ってもらい、そのジャムとクリームチーズを合わせたホットサンドがリピーターを生んでいるという。トマトジャムの甘酸っぱさがクリームチーズのまろやかさが見事に調和している。

ホットサンド(680円)
ホットサンド(680円)

 デザート系では、贈答用に使う上等なマスクメロンを冷凍してストックし、スムージーに使うという仕込みが興味深い。貴重な果実を飲み物に落とし込むことで、カフェは“畑の贅沢”を日常に変えている。

マスクメロンスムージー(780円)
マスクメロンスムージー(780円)

 海を遠望する三保の地で、代々の畑仕事と現代のカフェ感覚が交差する。完熟を待ち、味を見てから出す──そんな当たり前の手間が、ひとくちごとに豊かな物語を運んでくる。

三保の風土が皿になる──完熟トマトと農園の恵みを味わう 静岡市「川村農園CAFE」

川村農園CAFE
静岡市清水区三保1816-2
電話番号:054-334-0789
定休日: 平日
営業時間:土日祝 13:00-18:00
Pあり