最高のそばを追い、産地と季節を駆けていく 浜松市「手打そば うさぎ庵」

 春に種をまき、夏に収穫するそばがある。栃木から北海道へ、やがて産地は南へ移る。時季ごとに状態のよい粉を選ぶため、「手打そば うさぎ庵」のそばは土地を渡っていく。浜松市中央区上島で30年。店主の磯部一也さんは5軒のそば店で経験を重ね、最後は伊東市の一茶庵に住み込んで手打ちを修業した。そば通が足しげく通うのは、年月だけでなく、一番よい状態を食べさせようとする仕事があるからだ。
 初秋に始まる「キノコの天ぷらそば」では、夏の新そばと6種類のキノコを味わえる。夏の新そば、通称「夏新」は、春まきのそばをお盆頃から粉にしたもの。カツオ節と昆布のだしに、かえしを合わせた江戸前のつゆが、若々しいそばの風味をきりりと支える。

キノコの天ぷらそば(1680円)※季節限定
キノコの天ぷらそば(1680円)※季節限定

 天ぷらには、スーパーでは見かけにくいキノコもそろう。トキイロヒラタケは、噛んだ時に旨みが豊か。「玉白の茸」と呼ばれる大きなエリンギには、アワビを思わせる歯応えがある。香りも味も食感も異なる6種類を食べ比べながら、新そばをたぐる。秋の味覚を先取りするような組み合わせだ。

風味も食感も個性豊かだ
風味も食感も個性豊かだ

 「サンマのつみれそば」は、宮城県気仙沼産のサンマを使う季節限定品。サンマをつみれにしてそばへ盛り、下にはマツタケを忍ばせる。サンマを紅葉の葉に、マツタケを地面のキノコに見立て、もみじ狩りを表現した。食べ進めるうちにマツタケが現れる趣向で、温かいそばではサンマのだしもつゆへ移る。タマネギなどをつなぎに使ったつみれの食感と、魚の風味も楽しめる。

サンマのつみれそば(1650円)※季節限定
サンマのつみれそば(1650円)※季節限定

 夏の疲れが残る時には「スタミナそば」。納豆、山芋、オクラ、メカブ、なめこをのせ、つゆを多めにかけて、よく混ぜて食べる。粘りのある具材がそばへ絡み、素材ごとの風味や歯触りも一度に入ってくる。名前通り、残暑の体を思って用意された一品だ。

スタミナそば(1400円)※季節限定
スタミナそば(1400円)※季節限定

 そばの味を濃く感じたい人には「玄挽きそば」がある。黒い殻を付けた玄そばを特別な方法で挽き、太打ちと細打ちから選ぶ。味の濃さを求めるなら太打ち。香りや繊細な味わいを楽しむなら細打ちが店のおすすめだ。同じ粉でも、切り幅によって舌への伝わり方は変わる。

玄挽きそば(1300円)
玄挽きそば(1300円)

 磯部さんがそば打ちで重んじるのは速さ。時間がたてば鮮度が落ちるからこそ、手早く打ち上げる。奇をてらった早業ではなく、客へよい状態で届けるための速さである。粉の産地を追い、季節の移ろいを読み、迷いなく打つ。30年を経ても、うさぎ庵の仕事は鮮度を目指して走り続けている。

最高のそばを追い、産地と季節を駆けていく 浜松市「手打そば うさぎ庵」

手打そば うさぎ庵
住所:浜松市中央区上島5-7-30 二美ビル1階
電話番号:053-473-9166
定休日:月曜日 / ※祝日はランチのみ営業
Pあり