容疑者の親族「ひいてないと思っているらしい」…親子ひき逃げ死亡事件の現場 どうする危険なごみ置き場 静岡・沼津市
伊地健治アナウンサー:「JR沼津駅から西に4kmほど来た場所にある県道です。非常に交通量の多い場所なんですが、片側一車線のこの県道、こちら側は歩道がなく、幅1mにも満たない路側帯が設置されているだけです。こちらには花が手向けられています。そしてその横にはゴミ置き場があるのですが、1月15日、このゴミ置き場のこちら側に、近所に住む親子2人が倒れているのが見つかりました。2人はその後、病院で死亡が確認されました。警察はひき逃げ事件として調べています」
事件が起きたのは、沼津市松長の県道です。15日午前5時30分ごろ、「道路で2人が倒れている」と通行人から119番通報がありました。倒れていたのは、近くに住む33歳の会社員の男性と59歳の母親。2人は頭や胸を強く打ち、搬送先の病院で、死亡が確認されました。
伊地アナ:「事故があった1月15日の月曜日は、この地域の燃えるゴミを出す日でした。亡くなった今井さん親子は、その週のゴミの当番で、朝暗いうちからこの場所に、ゴミ用の黄色いネットを設置するめにこの場所にいたとみられています」
捜査関係者によると、死亡した親子はゴミ出し用のネットの取り付け作業をしていたところ、車にはねられた可能性があると言います。
近所の人:「すごくいい方でね、近所で本当に評判のいいお母さんで。だからびっくりしました。名前を聞いてね、え~っと思って」
逮捕されたのは85歳の男
事件から5日後、ひき逃げなどの疑いで逮捕されたのは、近くに住む85歳の男です。男は鮮魚を売る仕事をしていて、沼津港に向かう途中、2人に衝突したにも関わらず、そのまま逃走した疑いがもたれています。
容疑者宅の近所の人:「ちょっと信じられなかった感じですね。近所なので気さくにあいさつしたり話したりする方だったので、けっこう、みかんとか頂いたり、ウチの子たちにも声かけてもらったりして優しい感じの方です」
男は普段、両サイドと後ろの扉が屋根のように開く、移動販売車を使って仕事をしていました。
容疑者を知る市場関係者Aさん「市場が営業している時には、ほぼ毎日来ています」
容疑者を知る市場関係者Bさん「元気な人ですよ、80いくつには見えないぐらい元気だけど。年末ぐらいからかな、腰が曲がり始めて来たんだよね。それをずいぶん気にしていたんだけど」
容疑者を知る市場関係者Aさん「普通の人より動きは良かったよね」
助手席側の荷台の扉が壊れていた
しかし、男の移動販売車については、近所の人は普段から危険に感じていたようです。
伊地アナ「事故現場にほど近い容疑者の自宅周辺です。近所の方によると容疑者の運転するトラックはこの辺りでよく目撃されていました。さらに荷台部分の側面が壊れて開いている状態で走っている姿もたびたび目撃されていました。そして、2年ほど前にはこの電柱に開いた扉がぶつかったという事です。電柱を見ると、いくつかぶつかったような跡があります」
近所の住民によると、事件の前から助手席側の荷台の扉は壊れていて、開いた状態で運転していた事もあったと言います。さらに、2年ほど前には、その扉を電柱にぶつける事故を起こしていたというのです。
容疑者宅の近所の人:「側面の扉を開けたまま走っているのを見ていますし、正直に開いて電柱にぶつけているのは見たことあります。」
Q:危ない感じだった?
容疑者宅の近所の人:「開いている時は、自分も小さい子どもがいるので、ちょっとぶつかったら危ないなと思って「開いているよ」とは言ったりしました」
事件当日、市場の関係者はいつも以上に壊れた扉を目にしたと言います。
事件当日「途中でこすっちゃった」
容疑者を知る市場関係者「朝5時半ごろ魚市場の方へ(容疑者が)来て、いつものように集荷場の近くへ(移動販売車を)とめたんですけど。助手席の荷台の戸が壊れていたんですよ。だいぶ壊れていたもんで、どうしたのかなと、本人に問いただしたら『どっかで来るときにこすっちゃった』って私に言って。ドアがしっかり閉まらなかった形になっているから、「走ると危ないよ」って注意したんですけど。その日たまたまバチマグロを買ってくれという事で、それを買って、ウチで積んでいたんですけど、横(の扉)が壊れちゃっているから、後ろ側に積んだんですよ。いつも後ろから積むんですけど、横があまりにも壊れていたので後ろへ。別にそういう事故した後なんて、大きい事故を起こした後なんていうような感じではない。普通の通り」
この壊れていた扉が、亡くなった2人に当たったというわけなのでしょうか?
伊地アナ「事故があったゴミ置き場の前の路側帯の中に立っています。ちょうど後方から今トラックが来ました。ああいったトラックが来ると人との距離が本当に近いのがわかります。ましてやトラックから何かの部品がはみ出ていたとすれば、人と当たる可能性は高いというのがわかります」
警察の取り調べに対し、容疑者は「電柱にぶつかったと思った。人とは思わなかった」と、供述し容疑を否認しているという事です。
親族「ひいたと思っていないらしい」
そして、容疑者に面会に行く所だという親族に話を聞くことが出来ました。
容疑者の親族「亡くなられた方はすごい大変だと思うけど、人をまだひいたと思っていないらしいんですよ」
Q:きょうはこれから会いに行くんですか?
A.「うん、ちょっとね」
Q:どんな様子?
A.「まだ会えていないので。まだ一回も」
Q:事故の後も変わったようすはない?
A.「はい」
危険なごみ置き場
そして、事件が起きたと思われる時間帯に、現場を訪れると、辺りは真っ暗です。
昼間とは打って変わって、交通量が少なくなる一方、こんな状況が…。
スピードを出す車が、多く見られました。午前5時40分ごろ、この日のゴミ当番がネットを張りにやって来ました。自分の車でガードしながら、作業しています。
ネットを張りに来た住民「なんせ道が狭いから危ないんですよ。こうして作業して、向こう見てないわけだから。ライトでわかるけど、(車が)来たなっていうのは。逃げるところないもん」
危険なゴミ置き場。しかし、去年まではもう少し安全な場所にあったと言います。
伊地アナ「実は事故があったゴミ置き場の場所、去年11月までは空き地の前のこの部分にあったそうです。ですので、ゴミの当番の方は、こちら側からネットを設置することが出来たんです。しかし、あちらにゴミ置き場が移ってからは、道路でこのネットを設置する方法しかなくなってしまいました。そして、メジャーで測ってみますと、路側帯のラインの内側まで90cmもありません」
空き地だった場所が、宅地に変わったため、ゴミ置き場を住宅の壁沿いに移したそうです。今のゴミ置き場については、他の住民も…
近隣住民「本当に車が通る時は怖い思いをしながらゴミを出している状況ですね」
なぜ、このような危ない道路沿いがゴミ置き場になっているのでしょうか?
沼津市生活環境部 森剛彦課長「現地は旧東海道という事で、古くからの住宅地になっています。そのような住宅地の場合、いわゆる幅員の狭い道路が多くございまして、収集車両が通行できる、また行き止まりでも回転できるような、そのような場所が確保できない状況」
さらに、沼津市長は…
静岡・沼津市 頼重秀一市長:「地域の自治会、並びに地域の住民の皆様方としっかりと協議をさせて頂きながら、網の設置や準備等行う事、またゴミの排出に際して、安全安心にできるように、そのような対応について、しっかりと考えなければいけない」
事件現場の自治会では、今週水曜からこんな対策を始めていました。ゴミ置き場の両端に、点滅する誘導棒をくくりつけた三角コーンを置いて、走行する車に注意を促しています。
松長自治会役員 植松善洋さん:「前はこんな事していなかったですけど。今回の事故を受けてやっぱり暗い所でゴミを捨てに来るので危ないので。市の方で危険個所を調べてくれるって言っていましたけど、けっこう時間かかるし、じゃあ、その間どうするのってところで、結局各自治体である程度の対策を取らないと思っています」
なぜ2人の命が奪われたのか? 警察が慎重に捜査を進めています。