「千奈ちゃんは子どもたちの命を守る大切さを教えてくれた」 園児送迎バス置き去り死事件の裁判 元園長に実刑判決 静岡地裁
事件があった当日も、30℃を超える暑い1日でした。奇しくも7月4日、静岡県牧之原市では、7月として観測史上最高の36.1℃を観測しました。
園を訪れた人(焼津市):
「二度とこういう事故が起きないように、それが生きている我々の使命じゃないか」
2022年9月、静岡県牧之原市の認定こども園・川崎幼稚園で、当時3歳の河本千奈(かわもと・ちな)ちゃんが送迎バスにおよそ5時間置き去りにされ、重度の熱中症で死亡しました。
◆和田佳代子記者:
「午前10時前です。元園長の男が静岡地裁に到着しました」
当日、バスを運転していた元園長の男。クラス担任だった女とともに、業務上過失致死の罪に問われています。
午前11時に始まった、4日の裁判。静岡地裁の國井(くにい)恒(こう)志(し)(くにい・こうし)裁判長は、元園長の男に禁錮1年4カ月の実刑判決、元担任の女に禁錮1年執行猶予3年の判決を言い渡しました。
判決では、元園長が園児の安全を確保する計画を作らなかったこと、送迎バスの車内の確認を怠ったこと、元担任については園児の不在を確認しながら保護者に連絡をしなかったとして、いずれも過失を認めました。
判決文を読み終えた國井裁判長は…。
静岡地裁・國井恒志裁判長:
「2人の仕事は人の未来を育てる素晴らしい仕事です。20年、30年経っても尊敬される仕事。その分、人の命を預かる責任は重い。他の事件より重い責任にあります」
声を詰まらせながら、こう続けました。
静岡地裁・國井恒志裁判長:
「千奈ちゃんはお父さんやお母さんを不幸にするために生まれてきたわけではなく、お父さんやお母さんを幸せにするために生まれてきました。教訓にするために生まれてきたわけではありません。お父さんやお母さんの泣く顔を見るために生まれてきたわけではありません。千奈ちゃんの命は、子どもの命を守る大切さを考えなければいけないと気づかせてくれました」
判決を受けて、元園長は「今回の判決を重く受け止めております。今後も千奈さんの慰霊、ご遺族への謝罪、償いを続けてまいります」とのコメントを発表しました。
また、川崎幼稚園も「二度とこのような悲惨な事故を起こさないよう、さらなる安全管理を徹底し、信頼回復に努める所存です」としています。
裁判終了後、千奈ちゃんの父親が取材に応じました。
千奈ちゃんの父親:
「実刑という言葉を聞いたときに、ホッとしましたし、よかったなと。それと、遺族の間ではそれでも実刑が当然であろうという意見が出ました」
Q帰ってから遺影の前で千奈ちゃんにどういう言葉をかけようと思っている?
「裁判が一つ、刑事裁判が終わったよと。元園長は実刑になったよと。だけれども、基本的にはそれでよかったねとは言えないのかなと思います。いつも謝っているので、千奈ちゃんは本当に私たちが経験したことがない苦しみを味わいながら亡くなったので、じゃあこれで実刑になってよかったねとは思えない。やっぱりそれでも助けれられなくてごめんなさいと。手を合わせるたびに、きょうも、それでもごめんなさいと謝る」
今後、川崎幼稚園などを相手に損害賠償を求める訴えを起こすとしています。
千奈ちゃんの父親:
「一番裁判長の言葉で残ったのは今回の事件で『千奈ちゃんは子どもの命を守る大切さを私たちに教えてくれた』とおっしゃった言葉。普段は前向きに、これから生きていきましょうとか言われることは多くあるけど、あまり素直に受け止めることができない。ですけど、今回、しっかり実刑判決を下していただいて、とても説得力があって、素直に私の中で受けとめることができました」