市が市議を訴える?…泥沼化する駐車場問題 証拠の『売買契約書』めぐるそれぞれの主張は そして時効は? 静岡・沼津市
静岡・沼津市では駐車場をめぐり、市が現役市議を訴えようとしている前代未聞の事態になっています。
3日、静岡朝日テレビの単独インタビューに応じたのは、沼津市の市議会議員を5期務める、山下富美子市議です。全国的にも注目されている市が現役市議を訴える方針という前代未聞の出来事。沼津市側も、山下市議側も一歩も引かない状況下で、泥沼の様相となったこの問題。解決の糸口はみえるのでしょうか。
問題は「駐車場2台分の土地」
問題となっているのは、沼津市内にある「駐車場2台分の土地」です。
山下市議が“自身の所有する土地”として主張しているのは、父親から相続した沼津市内の自宅に隣接する土地です。この土地は山下市議の父親がおよそ30年前から月極駐車場として貸し出していました。周辺の土地も含めて現在は、山下市議に相続されています。
ところが去年、匿名の通報などを受け市が調べた結果、「2台分の土地」が“市の土地だった”ことが判明。市は山下市議に対し、10年間で得た駐車場の利益、およそ200万円を返還するよう求めましたが、山下市議がこれに応じず、市は返還を求め提訴するための議案を議会に提出しました。
沼津市建設部 杉山泰彦部長(9月27日):「相手方からは解決に向けた連絡をいただけず、本件解決のめどが立たないことから、やむなく裁判所にその判断をいただくこととし、議案を提出した」
沼津市議会 江本浩二市議(9月27日):「証拠書類は市の土地であるという証拠を示すものは、登記簿しかないんだといっていた。しかし登記簿の性格を考えれば、それ以外にもしっかりと証拠を探してくるべきじゃないですか。登記簿しかない? 他は全部探したんですか? 当時の担当者に聞いたんですか?」
沼津市建設部 杉山泰彦部長:「平成3年に第三者である所有者より当該議案の土地も買収し、それ以降、本件議案の相手方を含め、どなたにもこの土地を払い下げていないという事実があるので、本件土地は沼津市所有地ということで認識している」
10月16日の市議会最終日に採決が行われ、可決された場合、沼津市は提訴に踏み切る方針です。
争点は「土地の売買契約書」
この問題の最大の争点となるのが、土地の売買契約書です。
山下市議はこれまで、「問題となった土地は父親が所有していたもの」だとして、父親が市と交わした「土地の売買契約書」や、その土地の単価などを明記した「確約書」などを“証拠書類”として示すことで、土地は自らのものだと主張しています。
ただ、その売買契約書について市の担当者は…。
沼津市道路建設課 長嶋晃令課長
Q.山下市議が出した書類資料は、市は問題の土地の資料ではないと言っているが、ではどこになる?
A.今回、(山下市議から)出てきたのが、ここの黄色い5カ所(の売買契約書)。青い部分を抜いた5カ所。
Q.今回問題となっている部分は赤の(点線で囲まれている)部分?
A.そうです。青の(線で囲まれている)部分を平成3年に市が買って、青い部分が市が持っている土地だが、そこの番地が今回の(証拠として出された)契約書に入っていない」
市によると、地図上の黄色い部分については、市が橋の拡幅工事のために買収したとしています。
一方で、青く囲まれた部分については、山下市議ではない第3者から購入したもので、証拠として山下市議が出している売買契約書は、問題となっている土地の契約書ではないと主張しています。
この点について、山下市議は…。
山下富美子沼津市議
Q.沼津市の主張として、以前から山下市議が見せていた土地売買契約書には、駐車場2台分の土地の記載はないと説明しているが、実際、記載があるかどうかは、山下市議はどう思っている?
A.「記載はない。私が提出した契約書は、もともとが黒瀬橋の拡幅工事で、土地収用法に基づく事業。市が欲しいというか、払い下げをのぞむ土地が64坪、そして父が払い下げを受ける64坪の交換ということが土地収用法の大きな事業。なので交換をしないで、父に払い下げをしないで、そのままにすること自体、土地収用法のこの事業は成立しないということ。なので登記がされていないということは、この事業が完了していなかった、登記漏れだと考えている」
山下市議によると、父親は自分の土地を市に渡す代わりに別の土地と交換し、その土地の一部が、問題となっている駐車場2台分の土地だったと主張しています。
「時効取得」は?
一方、仮に裁判で争う場合、ポイントとなるのが、「時効取得」です。
時効取得とは、他人の土地にも関わらず、その土地を自分の土地として一定期間使用し、要件を満たせば、自分の所有物になるという制度です。
事実、沼津市側が問題となっている土地について「登記が市になっている」と気が付いたのは去年の匿名の通報があってからでした。少なくとも30年近くにわたって “山下市議側の駐車場”として使われていた土地。時効取得について沼津市側はどう思っているのでしょうか?
沼津市道路建設課 長嶋晃令課長:「その辺は裁判の中ではっきりしていきたいと思っています」
市と市議の間で起こった“土地をめぐる問題”はどのように解決するのでしょうか。