【リニア】国の有識者会議が事実上「協議終了」 静岡・川勝知事「十分な議論なされず非常に残念」

 リニア新幹線の工事に伴う環境への影響を議論してきた国の有識者会議が事実上「協議終了」の方針を示したことに対し、川勝知事は「非常に残念」と語りました。

川勝知事
「現在有識者でまとめようとしている報告書は環境保全の取り組みの進め方の大枠を示しただけのものと受け止めている。当初目的であったJR東海に対する具体的な助言、指導まで踏み込まれていない」

 川勝知事が語気を強めたのは、9日もリニア新幹線についてでした。

 JR東海が2027年の開業を目指していたリニア中央新幹線。

 ただ、南アルプスを通る静岡工区では工事による水や環境への影響を懸念し、静岡県が着工を認めておらず、開業時期は見通せない状況です。そんな中…。

「総理:部屋に入ってきてありがとうございます」

 今週月曜、岸田総理の元を訪れたのは、リニアの“中間駅”が設置される神奈川・山梨・長野・岐阜の県知事たちです。

 岸田総理に地域活性化に関する要望書を手渡した上で、リニア開業の見通しをはっきりさせることを要請しました。

岐阜県 古田肇知事 6日:
「やはり今、リニアの開業時期がはっきりしておりませんし。
ぜひ今後見通しをつくりながら、私も私どもにそれぞれしっかりとビジョンを中核県構想というものを出していきたい」

神奈川県 黒岩祐治知事 6日:
「我々頑張る前提としては、新幹線全体がつながるということが大前提です。この国家プロジェクトぜひ前進させるようよろしくお願いします」

 各県の知事の要望に岸田総理は…。

岸田総理 6日
「魅力的な国家的プロジェクトであるということで、多くの関係者の皆さんが注目している。ぜひそういったプロジェクトであると、我々も強く感じ努力をしていきたいと思うが、知事の皆様方におかれましても、全体のプロジェクトが進むように、ぜひ関係自治体等にも働きかけいただき、御協力をしていただく。こういったことについても、環境づくりという点でお力添えいただければと思います」

 岸田総理が言及した「関係自治体」が静岡県を指しているのかどうかは定かではありませんが、こうした沿線県の動きについて9日、川勝知事は。

Q総理から4県の知事に対して関係自治体などにも働きかけをお願いしたいという発言があった、これが静岡県のことを指しているのではという見方もできる。知事はこの発言についてはどのように受け止めている?

川勝知事
「東京・神奈川・山梨・長野・岐阜・愛知・三重・奈良・大阪、それにわたくしども(静岡)が入って10になる、そういう自治体全体がこの件に関心がある」

岸田総理

 一方、リニアを巡っては今週、大きな節目もありました。

JR東海 宇野護副社長 7日:
「有識者会議としての報告書案がまとまるということですので、大変喜ばしいと思います。工事前・工事中・工事後、色々な懸念があることも十分承知しているし、これからがある意味本番だという気がします」

 「水問題」や「環境問題」について議論してきた国の有識者会議。おととい、全27回に渡った会議がまとめ作業に入ることが明らかになりました。環境問題については、「トンネル掘削によって南アルプスの植物などに影響が及ぶ可能性はないと考えられる」とされています。ところが、静岡県側は「まだ議論の余地がある」と審議の継続を要求。最後まですれ違い状態の会議となりました。

国の有識者会議

 国の有識者会議が事実上終了したなか、川勝知事は・・・。

川勝知事 県庁 午後2時ごろ
「我々は今後も議論が必要な課題が残されていると認識していて、十分な議論がなされないまま取りまとめられようとしていることについて非常に残念に思っている。大切なことは南アルプスの生態系を保全するということは国策です。これは国立公園ですから。
 ですから、県民・南アルプスを愛する全ての人々が安心できるようなそういう報告書になるように期待している。有識者会議の位置づけは当初からはっきりしていて、(県の)専門部会で議論している案を国の有識者会議で議論していただき、それを(県の)専門部会に持ち帰って、そしてJR東海と公開の場で議論し、そして理解を関係者に得て、そして初めて有識者会議の議論が生かされるから、有識者会議の議論は尊重するが、それに従うということは一度も言ったことはない」

Q.県としては従わないということ?

「いいえ、残されている課題がいくつかあるからそれを議論するということ」