「放任竹林」はレッサーパンダにお任せ! NPO法人が静岡市の日本平動物園とタッグ

 山間地を中心に社会問題となっている「放任竹林」。この問題解決に静岡市日本平動物園の“あの人気者”が一役かっています。現場を取材しました。
 
◆栗田麻理アナウンサー:
「レッサーパンダが食べている竹の葉。実はこれ、清水区が抱えるある社会問題解決の一手となっているんです」

 静岡市清水区の西里(にしざと)地区。JR清水駅から車で北へ30分ほどの場所にある中間山地です。この地域には多くの竹林があり、静岡県内有数の「たけのこ」の名産地としても知られています。その一方で問題となっているのが…

◆NPO法人BASSplus 知久昌樹 代表理事:
「放任竹林が相当ある」

 たけのこ栽培などで植えられた竹林が管理されなくなり、そのまま放置されたものを「放任竹林」と言います。人の手が入らなくなった竹林が増えることで山の保水力が低下し、災害の危険性が高まります。さらに放任竹林は、野生動物のすみかになりやすく、近隣の農作物に被害が出るなど「竹害」とよばれる様々な問題を引き起こすとされています。

◆NPO法人BASSplus 今井伸さん:
「東名を走ってきたらわかると思うんだけど、見えるところの90%くらいは黄色い山。それ全部竹です。ちょっと持ってみる」
栗田:「重い」
知久:「週一で今くらいの竹を7~8本倒して」

 この問題を解決しようとおよそ2年前に発足されたのがBASSplus(ベースプラス)というNPO法人。静岡市を中心に活動しています。

◆NPO法人BASSplus 知久昌樹 代表理事:
「清水の放任竹林はだいたい山場。浜松は丘陵できりづらいところばかり。みんなで切りながら有効活用を少しでもしていく。」

 静岡県内の竹林は年々増加傾向にあり、過去20年間ではおよそ300ヘクタール増加しています。これは東京ドームおよそ64個分の広さです。竹林がそれだけ増えた要因の1つが、放任竹林の増加とみられています。

 伐採した竹は、メンマにしたり、農業用の竹チップにするなど、さまざまな形で有効活用されていますが、静岡市では新たな活用方法を見出しました。

◆NPO法人BASSplus 知久昌樹 代表理事:
「市内に放任竹林を切っている団体が100くらいいて、その方々にお声がけをして、レッサーパンダにエサをやりたいけど協力していただけるところはありますかと(団体に)聞いて」

 放任竹林の竹の葉をエサにするという挑戦。食べるのは日本平動物園の人気者、レッサーパンダです。

◆NPO法人BASSplus 知久昌樹 代表理事:
「枝葉の部分って一番厄介なんですよ。捨てるに捨てられない。それがレッサーパンダのエサになるというのはすごくありがたい。」

 この日は4人で6本の竹を伐採。そのまま日本平動物園へ搬入します。

◆日本平動物園 中村あゆみ 飼育員:
「飼育頭数を減らさないといけないんじゃないかという意見もでるくらい(エサに)困っている中でこの話があがったのでとても助かっています。」

 実はこれまで、日本平動物園ではレッサーパンダの主食である竹の葉を飼育員が近くの竹林に取りに行っていました。しかしここ数年は飼育頭数が増え、エサの安定供給が難しくなっていたのです。

◆日本平動物園 中村あゆみ 飼育員:
「頭数が増えてしまって竹が自然に生えてくる量よりも食べる量が増えてしまったので、他の竹を入手する手段を探すというのが喫緊の課題になっていた。」

 動物園には竹が大好きなヤギやゾウもいます。だからこそ竹の需要は高く、放任竹林のエサプロジェクトは園にとっても貴重なものとなりました。

◆日本平動物園 中村あゆみ 飼育員:
「動物園にとっても困ることはない。お互いウィンウィンな状況を作っていただけてとても助かっています。」

 今後は週2回のペースで竹が搬入され、放任竹林の伐採は来年6月まで行われる予定です。

◆NPO法人BASSplus 知久昌樹 代表理事:
「まずはレッサーパンダのエサというテーマで取り組んで、竹の利活用。出先が見つかれば、たぶんこれ(竹)って宝の山ですよね。竹が宝の山になることを考えていきたい」