衰退する地域の〝起爆剤〟に…25年で人口が6割減、小学生がたった1人の地域に『エミュー牧場』　静岡・森町

　寺田さん「家の数も減っていく、人の数も減っていく、獣は増えていく。“ふるさとに恩返し”という気持ち」

　静岡市の中心部から車でおよそ１時間半、周りを山々に囲まれた自然豊かな場所、森町。

須藤誠人アナウンサー：「森町の中でも深い山あいに位置するのが、ここ三倉の大河内地区です。森町では人口減少や高齢化が問題となっていて、この地区も、現在、世帯数は３０に満たない“過疎集落”となっています」

須藤誠人アナウンサー：「そんな大河内地区を活気づけようと、３月、新たに牧場がオープンしました。そこで飼育されているのは、なんと『エミュー』です」

須藤誠人アナウンサー：「静かな場所です。早速見えてきた、シルエット。ダチョウにそっくりだけど、これがエミュー。けっこうな数見えている。でも穏やかな様子。鳴き声も一切なく。あたり一面緑に囲まれている。そんな中にこれですよ、エミューの牧場」

　３月オープンしたばかりの、「天空の森　だんらんエミュー牧場」。牧場の責任者は、静岡県森町の大河内在住７０年、寺田光利さん。

天空の森　だんらんエミュー牧場　寺田光利さん（７３）
Ｑ．こちらには何羽のエミューがいる？
Ａ．「メスが４羽、オスが５羽で９羽」
Ｑ．どうしてここでエミュー牧場を？
Ａ．大河内地区の人口はこの２５年間でおよそ６割減少し、４月時点で５６人に。小学生は、ひとりしかいません。
（２０００年：１３８人　⇒　２０２５年４月：５６人）

天空の森　だんらんエミュー牧場　寺田光利さん（７３）:「すごく性格が大人しくて、人に懐っこい。飼うのが簡単だと聞いていたので」

　地域の“衰退”を食い止めようと、寺田さんが“復活”の一手に選んだのが「エミュー」でした。オーストラリア原産のエミューは、とても温厚な性格。草や昆虫などを好んで食べる雑食動物で、ふんのニオイや鳴き声もほとんど気になりません。

須藤アナ：「すごい、うわ～。迫力が、より増しました。すごいです。近い。目も大きい。くちばしも大きい。どんどん付いてくる。もう食べてる。レタスの葉を取りました」
寺田さん「レタスの根っこを持って。（エミューが）引きちぎって食べるので」
須藤アナ「本当だ。ガブっと力強く引っ張ってきます。葉を伝って力強さを感じる。迫力がすごい。だんだん愛くるしく見えてきた。目がクリッとしていて可愛らしい。とにかく穏やか」

　肉や卵、さらにはオイルまで、“畜産用”として大きな可能性を秘める、エミュー。寺田さんは九州の専門家のもとに通って、牧場のオープンにこぎつけました。

寺田さん：「北海道のマイナス３０℃もオッケーだし、九州の真夏の４０℃でもオッケー。すごい寒暖差があっても大丈夫。（大河内は）やっぱり空気がいいのと、静か。始めるにあたって村の人たちに説明したときに、本当に協力的で、『やってみよう』と太鼓判を押してもらった」

　土地は、地元有志から提供された“耕作放棄地”を活用。地元住民の協力を得て、およそ半年かけ、牧場を完成させました。

　まるで恐竜の卵のような見た目をしている、「エミューの卵」。この牧場のエミューが産んだもので、今後は卵を使ったケーキやクッキー、プリンなどの商品化を計画しています。将来的には、もっと個体数を増やして、「食肉」や“エミューオイル”とも呼ばれる「化粧品」など、供給を拡大していきたい考えです。

天空の森　だんらんエミュー牧場　寺田光利さん（７３）：「たまたまエミューの話があったときに、『これならいける、頑張れば』そう思った。自分たちの頑張りにかかっていると思うが、最終的には働く場所なども提供できるような、そんな場所にしていきたい」
　
　深刻な過疎化に直面する中、“エミュー”は街に賑わいをもたらせるのか。地域活性化に向けた奮闘は、始まったばかりです。