「うちの子の給食にうずらの卵がなかった」…学校に1時間近いクレームも 教師の負担軽減への全国初の取り組みとは 静岡・裾野市

「うちの子だけ給食にうずらの卵が入っていなかった。どうしてくれるの!?」

「お前たちの時給なんて2000円もないんだろ?」

 これは静岡県内の現役教師が実際に受けた保護者からの“クレーム”の一部です。社会環境が多様化する中、電話などで保護者から受ける連絡への対応が、教職員にとって必要以上に負担となり、学校だけでは解決が難しい事案も増えているといいます。

 番組の取材では、保護者との電話対応が1時間近くに及び、担当の授業を行うことができなかったという事案も…。そうしたなか県内では…。

「うちの子の給食にうずらの卵がなかった」…学校に1時間近いクレームも 教師の負担軽減への全国初の取り組みとは 静岡・裾野市

笹村朱里アナウンサー:「裾野市の公立小・中学校では、全国として初めてとなる“ある取り組み”が行われています」

 裾野市では6月から、保護者などからの電話対応を民間のコールセンターに委託する国の実証事業を開始。市内全て(13校)の公立小・中学校が対象で、教師の業務時間の負担を減らす狙いがあります。

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裾野市教育委員会学校教育課 山本哲平指導主事:「やはり毎日の教材研究や行事等の準備、また生徒指導や保護者対応も先生方が丁寧に対応してくれているので、先生方の多忙化というのは感じる」

 教師の「多忙」を軽減するため、試験的に導入された民間のコールセンター。相談は学校ごとに設けられた専用窓口に電話するか、LINEやメールなどでも受け付けます。内容によっては、法律の専門家やカウンセラーなどが対応するということです。

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電話を受けるのは横浜市のコールセンター

 番組では裾野市の電話を受ける神奈川県内のコールセンターを取材しました。

笹村朱里アナウンサー:「横浜市のコールセンターです。個人情報を取り扱うため、セキュリティーが非常に厳しく、実際の部屋はお見せすることができないんですが、このような場所で相談業務を行っているということです」

「うちの子の給食にうずらの卵がなかった」…学校に1時間近いクレームも 教師の負担軽減への全国初の取り組みとは 静岡・裾野市

 指静脈認証など、徹底的なセキュリティーで管理されたコールセンター。まだ試験導入されて間もないことから、1日10件程度の相談数だといいますが、1日100件ほど対応できる体制を整えているということです。

 民間のコールセンターを活用するメリットは一体何なのでしょうか?

トランスコスモスデジタルカスタマーコミュニケーション総括 森紗介本部長:「学校の保護者の方に限らず、地域の住民の方とか、そういった方々からの電話も学校にあると聞いているので、なかなか可視化できていなかったものが、我々のような事業者を通すことで、全てデータ化されていくので、そこが今回の実証の価値かなと」

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市民は

 「コールセンターへの委託」について裾野市民はどう考えているのでしょうか。

裾野市民40代(小学3年生と保育園年少さんのお子さんを持つ):「ちゃんと先生に気持ちが伝わるのかどうかは気になるかな。間に入ることによって、何か違う解釈されると困るというのはあるんですけど」

裾野市民20代:「最近いろいろ転職しかり、退職しかり、結構仲介を担うサービスというのは増えてきてるので、そういった感じのイメージと思えば全然問題ない」

教育現場「対応に苦慮することも…」

 裾野市の「富岡第一小学校」。児童数は439人(6月10日現在)、市内で3番目に児童数の多い小学校です。これまで保護者からの問い合わせや相談は、1日5件から10件程度あったといいます

裾野市立富岡第一小学校 井上基貴教頭:「子どもたちが学校で起きたことに関する相談事だとか、学校から配布されるお便りについて質問があったりしました。相談内容にもよりますけど、時にはその時間が長くかかったりだとか、対応に苦慮される先生方もいたことは確かです」

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 導入から10日あまり。中には“不安”を感じる教師もいるといいます。

裾野市立富岡第一小学校 井上基貴教頭:「職員にどういう風に返ってくるのかとか、そこら辺は不安に感じているところはあると思う」

 一方で、期待も。

裾野市立富岡第一小学校 井上基貴教頭:「保護者のニーズに対応した対応がしていただけると期待しています。時間のこともそうなんですけど、専門的な知識であったりとか、データーベースをもとに対応していただけるとか、そういうようなことが今後期待されます」

 実証事業は来年1月末まで行われ、今後、全国の公立学校でも始めるかどうか、検討材料の1つになるということです。