後継者不足に悩むメロン農家に33年ぶりの新規就農者…国立大卒44歳の元広告マン 静岡・袋井市
静岡県が誇る特産品、クラウンメロン。その上品な甘さは、「メロンの王様」と呼ばれ、国内外で絶大な人気を誇ります。しかしクラウンメロンには、“ある深刻な問題”が…。

ピーク時の800人が今は200人
クラウンメロン支所 澤木勝支所長:「1980年代が一番組合員が多くて800人ぐらいいたんですけど、オイルショックとか色々ありまして、現在は206人」
物価の上昇や生産者の高齢化などで、生産者はピーク時の4分の1に減少。1992年を最後に新規就農者が現れない、危機的な状況が続いていました。
そんな中、今年、明るいニュースが…。

県内33年ぶりに新規就農者
須山弘明さん(44):「ずっとこれがやりたかったので、やらずして人生終わったら相当後悔するだろうと」
須山弘明さん44歳。
須山弘明さん(44):「きょうは初めての出荷に向けて、いま収穫作業をしている感じですね」

今年からクラウンメロン農家となった須山さん。静岡県として33年ぶりとなる新規就農者です。
前職は、広告業界の営業マン。13年働いた職場を40歳を機に退職してクラウンメロンの門を叩きました。
須山弘明さん:「農業をもしやるっていうんだったら、もう今しかないと。半分勢いでこのメロン業界に入って来たというような感じ」
もともと農業には興味があり、静岡大学農学部に進学した須山さん。卒業後は別の業界に進んだものの、農業への未練が捨てきれませんでした。

須山弘明さん:「クラウンメロンはずっと憧れていたというか。あんなおいしいメロンを作れるのは誇れる仕事だと思って」
3年半にわたる研修期間を経て、今年の4月に独立。この日は初めての収穫作業です。
須山弘明さん(44):「見てください。メロンらしくできていますか? 初めての土地で初めて作った割には、まあまあいいメロンができたんじゃないかと思う」

ガラス温室の中で一年中栽培されるクラウンメロン。良いメロンを作るには年間を通して温度や湿度の調整、水やりの量など、高度な栽培技術が求められます。
クラウンメロン支所 澤木勝支所長:「やっぱり栽培するにも難しいですしね。燃料費もすごくかかるもんでね、どうしても失敗が許されないということで、チャレンジしてくれる人が少なかったように思う」

須山弘明さん(44):「きょう、収穫する玉を選別しています。最初に早い日に受粉して糖度が高そうな玉を選別している感じ」
ところが…。
須山弘明さん(44):「これ、割れちゃったよ。メロンって収穫間際でこういう風に割れちゃうときがある」
なんと、収穫予定だったメロンが割れてしまったのです。
須山弘明さん(44):「きのうは割れていなかったけど、きょう割れちゃった。いや~難しいですね。やっぱり想定していないトラブルがいろいろ起きるので、なかなか大変です」
割れたメロンは、5つあるランクの中でも一番低いランクで扱われ、売り値が安くなってしまいます。一方で、順調に育ったメロンもたくさんあり、出荷は問題なさそうです。

須山弘明さん(44):「まだまだ下手くそなところも多いけど、素人がやった割にはまあまあのメロンが獲れたんじゃないかと思って一安心している」

師匠の採点は85点
自分の力ではじめて作ったクラウンメロン。持って向かったのは、恩人の元です。
須山さん「横井さん、ちょっとこれ試食してみて」
横井義明さん「うまい。おいしい」
須山さん「ほんと?良かったよ」
横井さんは、50年以上メロンを育てていた大ベテランの元メロン農家。高齢になり後継者を探していたところ、偶然にも須山さんが新規就農者として現れ、横井さんの温室で須山さんがメロン栽培を引き継ぐことになったのです。

横井義明さん:「だいぶいいですよ。須山さんも一生懸命やっているもんで、僕も一緒にやるということで」
引退はしたものの、常に須山さんのことを気にかけ、様子を見に来てくれます。
須山さん「これなら出荷できる?」
横井さん「できるね」
Q.須山さんのメロンは何点
横井さん「メロンもおいしいし、85点ぐらい」
恩人からもらった高い評価に、思わず笑みがこぼれます。

須山弘明さん(44):「ああ、自分のメロンがこれでようやく出荷できるんだっていうワクワクな気持ちが9割、不安が1割ぐらい。これからいろいろな壁にぶつかって、どんどん改善していくという形になるが、そこは楽しみのひとつでもある、今はそう思う」
須山弘明さん(44):「986という数字、これが僕の生産番号です。僕が作ったメロンの証明」
33年ぶりに生まれたクラウンメロン農家。須山さんの挑戦はまだ始まったばかりです。
