【密着】人口5600人で高齢化率は県内2位 過疎の町の医師の1日に密着 この日の診察は102人 静岡・川根本町

YouTube Video 【密着】人口5600人で高齢化率は県内2位 過疎の町の医師の1日に密着 この日の診察は102人 静岡・川根本町
動画を再生

 人口およそ5600人の川根本町。そのうち、半数以上が65歳以上の高齢者で、静岡県では2番目に「高齢化率」が高い自治体です。そんな川根本町の診療所に、6年前、ひとりの医師が赴任しました。川根本町本川根診療所の松葉秀基院長。かつては静岡市内の病院で外科診療部長を務めていましたが、6年前、この診療所に赴任しました。

本川根診療所 松葉秀基院長:「朝やるのは胃カメラと、お腹の超音波、それを朝、診療所が始まるまでに1件やりますね」

午前9時 診療開始

女性患者「はい、カメラ付きでーす」
松葉院長「あら、なんか連れて来た」
女性「きょうはね、腰が痛くて、腰が痛くて」
松葉院長「どうする注射してみる?ここに」
女性「注射うまく入る?骨の間に」
松葉院長「ここならいいと思うよ」
女性「ほんと?痛くない?」
松葉院長「大丈夫だよ、蚊に刺されるぐらい」

松葉院長「はい、ちょっとちくっとするよ、もう1回」
女性「えー!2回も!?」
松葉院長「終わり」
女性「ありがとうございました」
松葉院長「張り薬とか塗り薬とかいる? 鎮痛剤は持ってないね」
女性「ほんじゃあ痛み止めください」
松葉院長「OK、じゃあ痛み止め出しとくで」

患者70代女性:「気さくな先生だもんでね、私みたいな人でも何でも話ができるし、あんまりいい先生だから、言いたいことも言っちゃう」

【密着】人口5600人で高齢化率は県内2位 過疎の町の医師の1日に密着 この日の診察は102人 静岡・川根本町

 こちらの男性は、膝の痛みを訴えて診療所へ。2週間に1度のペースで、痛みを和らげる注射を打ってもらっているそうです。

看護師「ここに乗せてください」
松葉院長「いま高いかもしれないよ」「172の80」
男性「うわっ、すごいなあ」
松葉院長「たまたまだね、普段いいもんね、きょう薬を持っていくじゃんね」
男性「はい、お願いします」
松葉院長「じゃあ、あと注射ね」
看護師「じゃあ5番のお部屋に」

患者60代男性:「それまでは藤枝とか整形(外科に)通っていたが、半日ぐらいはかかってしまう、往復で。だけどここでやったら、時間的にそんなにかからないから助かる、地元でこうやって、やってもらうと」

患者60代女性:「気さくだし、いろんな話を聞いてくださる、で、なかなか色男だしね、ここのおばちゃんちなんかは、ファンが多いんじゃないかな、先生のファンが」

【密着】人口5600人で高齢化率は県内2位 過疎の町の医師の1日に密着 この日の診察は102人 静岡・川根本町

 本川根診療所は、町が建物を無償で貸し出し、松葉院長が運営をする「公設民営」の診療所です。2019年5月、前任の医師が高齢のため引退し、一度、閉院となりましたが、地域医療を守りたいと、同じ年の12月から、松葉院長が運営を引き継ぎました。

川根本町健康福祉課 森下育昭課長
Q:松葉院長の赴任が決まったときは?
A.「大変うれしいと思い、これで診療ができるというところで、ありがたいと思いました」

 町民の半数が65歳以上の川根本町。人口1000人当たりの医師の数は0.87人で、県平均の2.30人、静岡市の2.69人、浜松市2.95人などと比較しても、圧倒的に医師が足りない実態があります。

【密着】人口5600人で高齢化率は県内2位 過疎の町の医師の1日に密着 この日の診察は102人 静岡・川根本町

本川根診療所 松葉秀基院長
Q:人の多さにびっくりしたのですが?
A.「連休明けなのでマックスです。これ以上来ることはないです」
Q:どういう症状の患者が多い?
A.「一番多いのは、慢性的な生活習慣病。高血圧、脂質異常、糖尿病の方が多い、あとは膝が痛いとか、整形的な方が多い」

 高齢化が顕著な川根本町にとって、「医療」は切っても切り離せない存在です。

午後0時半 訪問診療に出発

 午前の診療を終えた松葉院長、研修医、看護師とともに車で訪問診療に向かいます。診療所から車を走らせること30分。到着したのは、103歳の患者のもとです。

松葉院長「じゃあちょっと失礼」
椎野さん「ありがとうございます」

椎野さん「高いですか?」
松葉院長「いまちょっと高いけどね」
椎野さん「どきどきしちゃってね、ハハハ」
松葉院長「そうだよね、きょうは特別だよね」

本川根診療所 松葉秀基院長:「そんな大病はないんですけどね、だんだん年齢とともに、足腰が弱ってきちゃうもんですから、通院が大変でね。診療所まで来るのは毎回大変だもんね」

椎野はるゑさん(103):「毎月先生に往診していただいて、これ以上の幸せはないですよ」

【密着】人口5600人で高齢化率は県内2位 過疎の町の医師の1日に密着 この日の診察は102人 静岡・川根本町

 つづいての診療は、100歳の患者。

佐藤まきさん(100):「とにかくいい先生だよね」

 訪問診療先では、町の訪問看護ステーションの看護師と合流。患者の情報を共有します。

川根本町訪問看護ステーション 青島律子所長:「患者さんたちからも、相談しやすい先生で的確な指示をもらえるのでありがたいという言葉をいただいています」

 2件の訪問診療を終え、診療所に戻ったのは、午後の診療が始まる直前でした。

本川根診療所 松葉秀基院長:「きょうはちょっと遠かったんで、タイトでしたけど、普段は、そんなに慌てなくても大丈夫な感じです」
Q:街中の医師との違いは?
A.「街中だといろんな科があるじゃないですか、整形外科とか皮膚科とか内科とか、そういうのがないですから、極力、自分のできる範囲で、専門ではない科も診ようと思っています。能力を超えることもあるので、そういう場合は、専門医の先生にお任せするようにしますけども」

 大きなけがや、容体が急変した患者は、救急車やドクターヘリで島田市などの総合病院に「転院搬送」することになっていて、そうしたケースは、月に3回ほどあると言います。

【密着】人口5600人で高齢化率は県内2位 過疎の町の医師の1日に密着 この日の診察は102人 静岡・川根本町

午後2時 午後の診療開始

 この日、松葉院長は、予防接種や検査を含め、102人を診察しました。

午後6時診療終了

本川根診療所 松葉秀基院長:「きょうは忙しかったですね。患者の数は多かったんですけど、イレギュラーなことが、そうはなかった。救急車を呼んだりとか、緊急で処置が必要な人もあんまりいなかったから平和な1日ですね」

Q:心がけていることは?
A.「僕らの使命というのは健康寿命を延ばすことで、大事なのは、慢性疾患のコントロール、血圧とか、糖尿病とかと、がんの早期発見だと思っているので、それは心がけています。あとやりたいのは、もうちょっと自宅で最期を迎える方の割合が、増えるといいと思っています」

【密着】人口5600人で高齢化率は県内2位 過疎の町の医師の1日に密着 この日の診察は102人 静岡・川根本町
  • 駿河湾フェリー
  • 静岡クリスマスマーケット2025