共食いする『幻の高級ガニ』 一匹ずつの隔離飼育で研究8年、完全養殖成功に浜名湖が沸く 県外ファン殺到の「ドウマンガニ」安定供給へ

 大きな爪が特徴の「トゲノコギリガザミ」。甲羅部分、つまり“胴”が“丸”いことから、「ドウマンガニ」の愛称で親しまれています。生息するのは海水と淡水が混ざり合う湖。全国で漁獲できるのは、高知県と沖縄県。そして県内では唯一、浜名湖で漁が行われています。場所が限られていることや、その漁獲量の少なさから“幻のカニ”とも呼ばれています。

「ドウマンガニ」を見て驚く堀優菜アナウンサー
「ドウマンガニ」を見て驚く堀優菜アナウンサー

8年前から研究…300匹以上を飼育

増田高容ディレクター:「浜名湖で取れるドウマンガニ。こちらの施設ではその生態についての研究が進められています」

 静岡県焼津市にある静岡県水産・海洋技術研究所。漁業資源や海洋環境など、漁業に関する調査・研究を行う施設です。

ドウマンガニ
ドウマンガニ

静岡県水産・海洋技術研究所 清水一輝主任研究員:「こちらが飼育しているトゲノコギリガザミ(ドウマンガニ)。試行錯誤しながら、飼育技術はある程度確立できている」

 8年前から「ドウマンガニ」の研究を続けてきたこちらの施設では、今や、稚ガニから親ガニまで300匹以上を飼育しています。2022年には、ドウマンガニが育ちやすい条件をまとめた研究結果を発表。養殖の成功を後押しする、こんな生態も明らかに…。

静岡県水産・海洋技術研究所 清水一輝主任研究員:「ドウマンガニは非常に獰猛(どうもう)で、集団で飼ってしまうと共食いをしてしまうので、一匹一匹別々の箱で飼っている」

一匹一匹別々の箱で飼育
一匹一匹別々の箱で飼育

交尾の撮影に成功

 手探りでの研究を進める中、去年、大きな進展がありました。

静岡県水産・海洋技術研究所 清水一輝主任研究員
Q.これはどういう映像?
A.「ドウマンガニの交尾している動画」
Q.こういう映像は珍しい?
A.「これは初めてなんじゃないかと」
Q.国内で?
A.「国内で初めてだと思う」

静岡県水産・海洋技術研究所 清水一輝主任研究員:「交尾はメスが脱皮した直後の殻が柔らかい時にしか行われないので、交尾のためには脱皮をしっかりおさえるというのが重要」

交尾の撮影に成功!
交尾の撮影に成功!

 メスの脱皮の際に交尾が行われることは分かっていましたが、研究により、脱皮の周期も明らかに。これまでは、養殖のために卵を持っている天然の親ガニを捕まえる必要がありましたが、交尾から孵化(ふか)、育成といったサイクルができたことで、課題となっていた稚ガニの安定確保が実現できるようになりました。

静岡県水産・海洋技術研究所 清水一輝主任研究員:「コツコツと飼育試験によって分かってきて、ある程度高い生産率で今は飼えるようになった」

Q.確率高く交尾ができるようになったことは?
A.「今まであまりうれしいことがなかったが、この時はうれしかった」
Q.今まではうれしいことがなかった?
A.「研究でちゃんとした成果というのが、自分自身のなかで出ていなかったので、やっと成果が出たなと思った」

共食いする『幻の高級ガニ』 一匹ずつの隔離飼育で研究8年、完全養殖成功に浜名湖が沸く 県外ファン殺到の「ドウマンガニ」安定供給へ

 「ドウマンガニ」の完全養殖に成功したのは国内で初めて。これまでの実験では12ペアのうち10ペアが交尾に成功していて、今年度は20ペアの成功を目指しています。

静岡県水産・海洋技術研究所 清水一輝主任研究員:「養殖する時に一番大事なのが種苗(稚ガニ)をどうやって確保するか。安定的に確保できるようになれば、事業化の目途が立ちやすくなる」

清水一輝主任研究員
清水一輝主任研究員

県外からも多くの客が…浜名湖の“幻の味”

 安定生産への期待が高まる「ドウマンガニ」。浜名湖では漁の最盛期を迎えています。

堀優奈アナウンサー:「浜名湖近くのこちらの飲食店では、この時期ならではのドウマンガニが人気だということです」

堀優奈アナウンサー
堀優奈アナウンサー

 1969年創業の鮮魚店「うおなみ」。併設された飲食店では、浜名湖の新鮮な魚介を楽しむことができます。

共食いする『幻の高級ガニ』 一匹ずつの隔離飼育で研究8年、完全養殖成功に浜名湖が沸く 県外ファン殺到の「ドウマンガニ」安定供給へ

うおなみ 平山盛子さん:「お待たせしました。浜名湖のドウマンガニです」
堀優奈アナウンサー:「色が鮮やかです。香りも強いですね。濃厚な香りが。これがドウマンガニの香りですか」

 磯の香りと甘い香りが混ざり合うドウマンガニ。蒸して食べると旨味が凝縮されると言います。

堀優奈アナウンサー(食リポ):「旨みと香りがとにかく強い。身がしっとり柔らかくジューシー、ミソも濃厚で、この濃厚さがカニの甘みを引き立てている」

堀優奈アナウンサー
堀優奈アナウンサー

うおなみ 平山盛子さん:「(毎年)東京、神奈川から来る人も。去年は愛媛から来た人もいた。カニ好きの人は特に、この味の濃いドウマンガニを家族でわいわい言いながら食べてもらいたい」

うおなみ 平山盛子さん
うおなみ 平山盛子さん

 県外のファンも多いというドウマンガニ。浜名湖だけでなく、県全体で特産品を盛り上げるための新たな取り組みにも期待が寄せられます。

静岡県水産・海洋技術研究所 清水一輝主任研究員:「県内で民間企業も興味を持ってくれているので、養殖の事業化を推し進めて、最終的には静岡県の新たな産業として成り立っていけば」

清水一輝主任研究員
清水一輝主任研究員