もしも富士山が噴火したら…火山灰に関する“警報”の運用が始まる 火山灰の恐ろしさとは

もしも富士山が噴火したら…。静岡県内でも大きな被害が予想される中、これまで存在しなかった火山灰に関する“警報”の運用が始まろうとしています。
「此所(このところ)江(へ) 焼雲ノ内ヨリ 石砂下(くだ)ルコト 大星(たいせい)ノ如シ 積モリテ 宝永山トナル」
富士山が最後に噴火した、300年以上前の宝永噴火。
およそ2週間にわたって7億立方メートルもの火山灰が降り続けました。
静岡大学 小山真人 名誉教授
「灰といっても燃えカスではなくて岩のかけらなので、溶けないし、吸い込むとそのまま残ってしまう。」
健康被害にもつながる火山灰。
富士山で再び大規模な噴火が発生した場合
その被害は首都圏まで及ぶと言われています。
気象庁が今年から立ち上げた有識者検討会では、情報発信の仕方を見直してきました。
首都圏における広域降灰対策検討会 藤井敏嗣 座長
「宝永噴火みたいなことがおきたら東京には警報が出ない状態。広域火山灰を出すような噴火があれば、起こることがはっきりすればその時点で警報を出さないと」
「警報」や「注意報」が現時点で存在しない火山灰の被害。
検討会では3月、噴火後に0.1ミリ以上の火山灰が降ると予測された場合は「火山灰注意報」、3センチ以上で「火山灰警報」を発表するという案が大筋で了承されました。
専門家の本音は
ところが、専門家の“ホンネ”は・・・。
静岡大学 小山真人 名誉教授
「微妙。実は火山灰の中には結構大きなサイズのものがあって、“小さな噴石”という。これはスピードが時速100キロ以上で空から降ってくる。今はあまりにも細かな2ミリ以下の火山灰だけがクローズアップされていて、それはもちろん東京はそのくらいのサイズしか落ちてこない。地元(静岡)にいる我々としては、もっと近い場所にいるわけなので、それの危険性をきちんと知らせてほしい。」
実際、静岡県内でも貴重な記録が…
静岡県富士山世界遺産センター 小林淳 教授
「こちらが静岡県の東部、御殿場市や小山町の市街地の近くで採取した地層の剥ぎ取り資料。富士山から見て御殿場、小山町ってそれなりに距離がある。距離があるところでもこういうふうに。ものによっては指の先くらいの大きさのものがバラバラと降ってきたことがそのまま記録されている」
Q例えば、私たちが生活しているなかに落ちた場合は?
「江戸時代では発生しなかったが、現在だからこそ発生する災害があって、火山灰がいっぱい降ることによって、我々は運転しますよね、車。こういうなかを車で運転するのは難しい。」
栗田麻理アナウンサー
「では、どれくらい難しいのか。こちらに10センチ積もった火山灰があります。この上を実際に車で走りたいと思います」
国土交通省 富士砂防事務所では、小山町の工事現場で宝永噴火の火山灰を発見し、灰が降った後も工事用の車両が通れるかなど、実験を重ねてきました。
走行実験
「火山灰の中に入った瞬間、まったく進まない。(アクセルを)下の方までしっかり踏んでいるが全く進まない。アクセルを踏むのも怖い」
10センチ積もった火山灰の上ではタイヤがスタックしてしまい、前に進むことができません。
まるで砂浜の上を走行しているかのようです。

さらに火山灰が降った後には
また、火山灰が降った後にも注意が必要だといいます
こちらは富士砂防事務所が行った実験です。
国土交通省 富士砂防事務所 中戸真一 専門調査官
「火山灰が降ると、降った雨が浸透せずに土石流が起きやすくなると言われている。そういったことにも注意が必要」
世界遺産として愛され、春夏秋冬、様々な表情を見せる富士山。
日本にとっての財産は、活火山という側面を持っていることも忘れてはいけません。
小山真人教授
「富士山の美しい景色と景観、形というのは基本噴火がつくってきたもの。怖いことがあったからこそ、こういう美しい風景ができた。火山の二面性を知っておいて、将来噴火がしたときは、それを思い出してきちんと避難するべきときは避難する。これが大事。」
