再審初公判…姉ひで子さん「巌に代わり無実を主張します。弟に真の自由をお与え下さい」

　１９６６年、旧清水市で一家４人が殺害された事件で、死刑が確定した袴田巌さんの再審公判が２７日始まりました。巌さんに代わって出廷した姉のひで子さんは「弟・巌に真の自由を」と訴えました。

　袴田巌さん８７歳。今から５７年前の１９６６年、袴田さんは当時勤めていた旧清水市のみそ会社専務一家４人が殺害された事件で逮捕されました。当初から無実を訴えてきましたが、事件から１年２カ月後、血染めになったいわゆる「５点の衣類」が、現場近くのみそタンクから見つかります。これが、袴田巌さんが犯行時に着ていたと認定され、死刑が確定しました。

　袴田巌さんは、再審、裁判のやり直しを請求。そして、今年３月、再審が決定。

あれから７カ月。静岡地裁で袴田巌さんの５７年ぶりとなる初公判です。

今回の裁判では、袴田巌さんは心神喪失の状態として出廷が免除されています。代わりに補佐人となっている姉のひで子さんが証言台に立ち、罪状認否を行います。

梅田航平記者（午前９時前）「今、袴田ひで子さんが再審・初公判に向けて浜松市内の自宅を出発します」

半世紀以上に渡って闘ってきた姉・ひで子さん。大きな節目となる「きょう」の胸の内を語りました。

巌さんの姉　ひで子さん（９０）（午前９時ごろ）「やっと始まる。５７年闘ってやっと再審開始になって、本当に裁判は私は初めてだが、別にびくともしゃくともしていない（笑い）。望むことは真実を望む。巌は無実だから無実を望んでいる」

浜松市内の自宅を出て、静岡市へ。

　そして午前１０時半、支援者らの拍手に包まれながら、ひで子さんは再審公判が始まる裁判所の中に入っていきました。

ひで子さん「袴田ひで子でございます。1966年11月15日、静岡地裁の初公判で巌は無実を主張しました。５７年間紆余曲折、艱難辛苦（かんなんしんく）ございました。きょう再び、再審裁判で巌に代わり無実を主張します。弟に真の自由をお与え下さいますようお願い申し上げます」

午前11時に開廷した再審・初公判。ひで子さんは罪状認否で、時折、声を震わせながら弟の無実を訴えました。

　検察側は冒頭陳述で、今回の裁判、最大の争点でもある「５点の衣類」について…

検察側の冒頭陳述：「５点の衣類が発見された後、それらが被告人のものであるか否かを明らかにするため捜査を行いました。この結果５点の衣類が事件前に被告人が着ていた衣類と酷似すること、緑色パンツの製造時期や鉄紺色ズボンが小売店に納品された時期が、被告人が事件前から入手していたとして矛盾しないこと。以上の諸点から５点の衣類が被告人のものであることを主張・立証します」

　一方の弁護側は５点の衣類について、警察のねつ造だと主張。
その上で…。

弁護側の冒頭陳述「袴田さんのこれまでの人生を奪い，精神世界をも破壊してしまった責任は、重要な証拠を次々にねつ造し、野蛮で唾棄すべき違法捜査を繰り返した警察にあり、さらには無実を示す証拠を隠ぺいし、警察と共謀して犯罪的行為を行ってきた検察にあり、それを安易に見逃してきた弁護人や裁判官にもあるはずです。
ここで本当に裁かれるべきは、警察であり、検察であり、さらに弁護人及び裁判官であり、ひいてはこの信じがたいほどひどいえん罪を生み出した我が国の司法制度も裁かれなければならないのです」

　２７日の公判は午後５時前まで行われました。次回の公判は１１月１０日に行われる予定です。