運行先は『希望の目的地』…帰りは自宅まで 交通空白地域の解消にミニバス「まめっこ号」 静岡・熱海市で実証実験
利用者の減少や運転手不足などで全国的に路線バスの減便や廃止が進んでいます。こうした中、交通空白地域の解消に向けた取り組みが静岡県熱海市で行われています。
バス停まで1.2キロ 70代女性
平日の朝9時、熱海市網代山地区の住宅地にミニバス「まめっこ号」が到着しました。利用するのは橋本昌子さん(76)。およそ13キロ離れた熱海駅まで出かけます。橋本さんの自宅から最寄りのバス停まではおよそ1.2キロ。運行も1日4便しかありません。
次に乗車したのは下多賀のグリーンヒル別荘地に住む渡辺小夜さん(74)。自宅から最寄りの網代駅まではおよそ1.8キロ、免許返納したため、タクシーを利用していますが、苦労していると言います。
渡辺小夜さん(74):「今ドライバーさん不足で乗るのも大変で、(帰宅時)網代駅で何十分待ったり、ひどい時2時間待ちだったり」
交通空白地域…対象は4地区
橋本さんや渡辺さんが住む地域は交通空白地域と呼ばれ、鉄道駅半径800メートル、バス停半径300メートルの圏域外と定義されています。
このミニバスは熱海の交通空白地域の解消を目的に、熱海市の網代、下多賀、泉、西熱海の4地区を対象に無償で平日に運行。民間で作る協議会が3年前から実証運行を始め、今年度は国土交通省の補助を受け、去年10月末の運用開始からこれまでおよそ1000人が買い物や通院などで利用しています。
ミニバス「まめっこ号」の利用は高齢者が多いため、アプリではなく電話で運行管理センターに予約。対象地区にある自宅から運行ルート上にあるスーパーや病院、駅やバス停など希望する目的地まで運び、帰りは自宅まで送り届けます。
乗車した3人は、およそ30分ほどかけて熱海中心地のスーパーに到着しました。
橋本昌子さん(76):「2週間分くらい買って帰ると重たいから、それを家の前まで連れて来てくれるから、あの坂道をすごく便利です。だから無くならないで欲しいと切望しております」
タクシーよりも安く、路線バスよりも柔軟な運行が売りの「まめっこ号」。橋本さんが自宅から熱海駅までタクシーを利用した場合、4910円、路線バスだと730円です。2月からの、実証期間の残り1カ月は有償の実証実験になりますが、利用者たちの反応は?
渡辺小夜さん(74):「(有償化は)全然構わないと思います。寒い中、いつ来るか分からないタクシーを待つのはものすごくストレスになるので、それがないだけでも非常にありがたいと思ってます」
採算ラインは3人
実用化するための課題は採算性です。1台の平均乗車人数は2.7人で、運行管理費を含まない採算ラインは3人と試算します。
現在、運行する4地区の会員登録者数は123人で、更なる利用者の増加や利用頻度の低い便を減便するなどの施策が必要となります。
熱海次世代観光・地域交通プラットフォーム協議会 森田金清会長:「これからは収益を上げられるようなシステムを作っていくことが地域住民への貢献に繋がると思いますので、継続するためにはしっかりと収益を上げていくことが一番大切です」
例えば、住民の利用が少ない時間帯には、旅館やホテルの宿泊客の送迎などを行い、収益を上げる仕組みを構築していく考えです。高齢化率48.6%と高く、多くの交通空白地域を抱えている熱海市。後援する行政側は。
熱海市まちづくり課 岩下昭博課長:「有償になっても、どの程度ご利用して頂けるのか、しっかりと注視していく必要があると考えております」
ミニバス「まめっこ号」は、新たな交通手段として実用化できるのか? 有償化する2月はアプリを使った予約も行い実用化に向けて検証を続けます。