1400株のバラに込めた妻への思い…84歳が管理する無料バラ園 去年の大きな被害を乗り越えて 浜松市

林輝彦アナウンサー(浜松・中央区 午前11時半ごろ):「鮮やかなピンクのバラに包まれて、とてもいい香りがします。気持ちがいいです。私が今いるのは、浜松市のばらの都苑。園内には色とりどりのバラが咲いていて、朝から来園客で賑わっている」

1400株のバラに込めた妻への思い…84歳が管理する無料バラ園 去年の大きな被害を乗り越えて 浜松市

 浜松市中央区にある、「ばらの都苑(みやこえん)」。2700平方メートルほどの敷地に、200種類、およそ1400株のバラが咲いています。15日時点で園内のバラは7分咲き。見頃を迎えたバラを目当てに、朝から多くの人が訪れていました。

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来園者 浜松市民:「素晴らしいです、ここは整備が行き届いているというか、古い葉がいつも取り払われていて、いつ来ても最高の状態で見れる」

来園者 浜松市民:「見事ですよね。お一人でやってらっしゃるでしょ、ここ。素晴らしいと思って」

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 このバラ園を管理するのは、天野和幸さん84歳。園内を案内してもらいました。

林アナ「立派ですねぇ」
天野さん「京都の平等院鳳凰堂を(バラで)作ってみたいと。左右対称に。芸術的に、美術的にも誰にも負けない表現をしてみたかった。そういう、へそ曲がりですけどね」

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 こちらは京都の平等院鳳凰堂をバラで表現したもの。園内のバラは、天野さんが丹精込めて手入れをしていて、どれも美しく、見ごたえ十分です。5月に入り完成したというニュースポットでは。

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天野さん「たった2mぐらい上がっただけで」
林アナ「うわ、すごく美しいですね」
天野さん「割合いいでしょ(ニヤ)」
林アナ「はい!」

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 天野さんが手作りした橋の上から見る園内は、下から見る景色とはまた違った趣があります。

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ばらの都苑 天野和幸さん:「とことん、自分の知恵と自分の技術と、いかに表現できるか、そういうこだわりでやっています」

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妻への思い

 鮮やかに咲き誇るバラの数々。実はこのバラ園には、特別な思いが込められています。

ばらの都苑 天野和幸さん(2023年):「28年間連れ添った女房を急に亡くして、供養として始めました。花で思いっきり供養をしましょうと。それが僕の一番の原点だったんです」

 今から27年前(1998年)、妻の都(みやこ)さんは肺がんのため49歳という若さでこの世を去りました。四十九日を迎えた頃、天野さんは都さんとの“最後の思い出”を振り返ったといいます。

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ばらの都苑 天野和幸さん(2023年):「肺がんの宣告を受けた時に、じゃあ何とか動けるうちにどこか行きたいとこあるかねって聞いたら、2人で何度か行った島田のバラ園にもう一度行きたい、ということで、島田のバラ園に行ってきて、すぐに再入院してしまったので、家内が好きだったバラを植えて供養しましょうというのが一番最初の思いつきの計画でした」

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 ところが2024年10月。

ばらの都苑 天野和幸さん(2024年10月):「残念。手が付けられないです」

 浜松市内で住宅など40軒以上に被害が出た突風。天野さんのバラ園もプレハブの建物やテントが飛ばされてしまいました。

ばらの都苑天野和幸さん(2024年10月):「そこの屋根がここまで飛んできていたんですよ。ここまでね」

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 あれから半年以上が経ち、再び迎えたバラの季節。

ばらの都苑 天野和幸さん:「これは去年の竜巻で飛ばされたあとに苗を注文して買った。この中に60株ほど新しく植えた。『もうやめろ』と自然界に言われていると思ったときもあったが、それでも、負けたくないと思って」

 1人で管理する広大なバラ園ですが、再建への気持ちを駆り立てたのはやはり、妻・都さんへの思いでした。

ばらの都苑 天野和幸さん:「僕を支えてくれた、28年間支えてくれた女性に対する“恩と愛”。それをいかに花で表現できるか、それ一途でやっている」

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 “妻の供養のためだから”と、入園料を取らずにバラ園を運営する天野さん。今では多い時には1日に1000人もの人が訪れる、県内有数のバラの名所となりました。

ばらの都苑 天野和幸さん:「お寺とかお墓に行くことが供養ではないんだと。私は心を、心を表現できれば、それが供養だと。心も体もまだまだ使える、まだどこにも誰にも負けないっていう精神力を持ってますから、それが続く限りはやらなきゃならんと自分に言い聞かせております」

 バラの花言葉は「愛」。都苑のバラはきょうも、これからも、たくましく咲いていきます。

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