セカンドキャリアに挑戦する競走馬 乗馬クラブの夫婦が引退した競走馬の受け皿に 静岡・御殿場市

引退した競走馬を育てる夫婦が御殿場市にいます。そこへやってきた新たな馬。セカンドキャリアへの挑戦を追いました。
実況「先頭1番ベルーガサミット!リード2馬身と突き放します!」
“馬が輝く、競馬の世界”その“裏”では―。
北駿ホースヴィラ 鈴木 裕介代表
「大半の馬は引き取り手が見つからずに、食肉用の馬としてそういう処分を受けてしまう。そこをどうにか幸せに生きてほしい。」
御殿場市にある乗馬クラブ、北駿ホースヴィラ。
引退した競走馬を受け入れ“セカンドキャリア”を歩めるように、乗用馬として調教しています。
今いる15頭のうち、G1レースに出場した馬を含め12頭が元競走馬です。
鈴木史(ふみ)さん
「良い馬になったね。」
鈴木祐介さん
「だいぶ変わったよ。」
鈴木史さん
「うん!すごくいい馬になってる!」
このクラブは、鈴木祐介さんと史さんが夫婦二人三脚で運営しています。
北駿ホースヴィラ 鈴木 裕介代表
「大体馬の平均寿命ってのが、20歳代後半と言われているんですけど、 競走馬が大体引退する年齢が若い馬だと3歳には引退してしまう馬もいますし。その後の余生のほうが当然長くなってくるので。」
競走馬は、遅くとも8~9歳で引退します。
その数は、年間およそ7000頭。
セカンドキャリアを歩めるのは2、3割程度で、大半は殺処分されてしまいます。
「ベルーガサミット」5歳馬
5月初旬―
この馬は、2024年まで岩手の競馬場でレースをしていた
「ベルーガサミット」5歳馬(牝馬)です。
実況「内にはキラープリンセスとエモーリボン!先頭ベルーガサミットゴールイン!」
北駿ホースヴィラ 鈴木 裕介代表
「 競馬を20戦近く走りまして、ちょうど2連勝して調子が出てきたときに、ちょっと足を骨折してしまいまして。オーナーさんの意向でこれ以上無理をさせないようにということで、こちらにやってきました。」
到着すると、長距離移動で固まった筋肉をほぐすため、馬用のウォーキングマシンに入らせようとしますが…
北駿ホースヴィラ 鈴木 裕介代表
「おいで怖くないよおいで。よしよしよしよし。」
「Q今どんな様子なんですか?」
「今初めてなんでやっぱり怖がってる状態ですね。」
「何度か行くと落ち着いて入ってくれると思うんですけど。」
「よしよしよし。はい良い子だ。」
〈入る〉「無事に入ってくれました。」
ほっとしたのも束の間、ベルーガサミットは落ち着きがない様子です。
北駿ホースヴィラ 鈴木 裕介代表
「まだ競走馬なので中身がね。速く走りたいっていうのと、まだどうしていいか分からないっていう形ですよね。」
“速く走ること”が体に染みついて、“ゆっくり走ること”に慣れていないのです。
スピードをコントロールできるようになるまで、早くて1カ月、遅いと半年以上かかるといいます。
北駿ホースヴィラ 鈴木 裕介代表
「もう本当にセカンドキャリアの最初の日なので、記念すべき1日なのかなと思います。」
「がんばろうね!がんばろう、がんばろう!」

1カ月後
北駿ホースヴィラ 鈴木 裕介代表
「そうそうそうそう」
ゆっくりと一定のペースで走れるようになったベルーガサミット。
北駿ホースヴィラ 鈴木 裕介代表
「(慣れるのが)早い方だと思います!」
別の馬のような落ち着いた足取りで、障害物も飛び越えられるように。
北駿ホースヴィラ 鈴木 裕介代表
「まだまだベルーガは1カ月なので、この後1カ月、2カ月、
1年、2年とトレーニングは続きますので、一緒に成長できたらいいかなと思っています。」
競走馬が乗用馬として働けるようになるまで、トレーニングに使う馬具やエサの費用、医療費など、経費は50万円以上かかります。
それでも鈴木さんは、1頭でも多くの馬がセカンドキャリアを歩めるようにと考えています。
北駿ホースヴィラ 鈴木 裕介代表
「引退した競走馬がどうなっていくかの受け皿ですね。受け皿をたくさん増やしていきたい。まだまだ元気に生活できるはずだった馬たちが生きていくための選択肢は増やしていくことは可能なんで。その一端を担うことができれば僕としても本望かなと思っています。」
