ドローンを使った物流サービスの導入から1年 見えてきた課題とは… 静岡・川根本町

東海地方“初”のドローンを使った物流サービス拠点ができた川根本町。1年経って現地を訪れると、課題が見えてきました。
静岡市の中心部から車でおよそ1時間。
川根本町にある長島ダムの管理所です。
国交省 長島ダム管理所 杉山久浩 係長
「お弁当届きました。まずこれはハンバーガーですね」
デリバリーで届いた地元人気店のハンバーガーやピザ、日替わり弁当。
「おいしいですね。あったかくておいしいです」
ただ、ここはウーバーイーツの配達エリア外。届けたのは…
川﨑豊記者
「今、ドローンが見えました。山の稜線(りょうせん)を越えてきて、ゆっくり進んでいます」
ドローンです。
川根本町では2024年5月にドローンの物流サービス拠点が設置されました。
現在、ドローンが飛ぶ11のルートが設定され、車と組み合わせた弁当配達サービスが行われています。
川﨑豊記者
「川根本町らしいですよね。茶畑の隣、ドローンが飛び立つのは、長島ダムから5キロ離れたこちらの空き地です」
ドローンの整備は
ドローンの整備などを行うのは、町でカフェも営む西條さん。
skyhub川根本町・西條徹也さん
「スタート当初は3名だけで始まったんですけど、今6名まで増えまして」
配達されたピザを作ったのも地元出身のシェフです。
両国吊り橋茶屋capra 風間竜多シェフ
「うちは人手が、夫婦でやっているので、配達っていうことはできないので、配達していただけるのはありがたいですね」
メニューも豊富で、5個以上注文をすると200円の配送料が無料になります。
雨の時期、管理所ではダムのゲートを開ける作業に入ると食事をとるのも難しくなります。
国交省 長島ダム管理所・杉山久浩 係長
「ゲートを開けている時は、私ども職員が休日昼夜問わず24時間体制で、こちらの方に常駐しなければいけない。こういうドローンの配達があると非常に助かるなと思っております」

新たなサービス・薬の宅配
4月からは新たなサービスも始まりました。
閉校した学校を活用した拠点から飛び立ち、大井川を上っていくドローン。
操縦は遠隔で山梨県内から行われています。
離陸からおよそ15分。
配達された箱は薬局へ。
指紋認証のカギで厳重に守られています。
Q:中身は?
まつおか薬局・松岡政臣代表取締役
「薬。これは胃薬です。」
医薬品の配送です。
ただ一回の配送で届くのはひと箱。
今後は冷蔵品も含め拡大を検討中ですが…。
まつおか薬局・松岡政臣 代表取締役
「雨が降ったらできないっていうのはね、これはどうしようもない。やっぱり雨でも飛んでほしいですね」

利用数が伸びない
ドローン事業が始まって1年。課題も見えてきました。
川﨑豊記者
町役場の隣、役場職員の駐車場もドローンの発着地点です。今ドローンが着陸しました」
「卵とお肉ですね」
日用品の配達も行えるのですが…。
川根本町・デジタル推進課 服部了士課長
「まだ昨年の6月からスタートして、数例しかまだないんですけども」
思うように利用数が伸びていません。
ドローン事業には、3年間で国の補助金と町の予算それぞれ5000万円が使われます。
Q:収益は実際今上がってるんですか?
川根本町・デジタル推進課 服部了士課長
「今は赤字でございます」

孤立した経験のある住民も
ドローン事業は3年前の台風で、町内で孤立が相次いだことから始まりました。
skyhub川根本町・西條徹也さん
「何かあった時には災害の支援物資を小さなコミュニティに運べるっていう利点があると思うんですよ。」
役場から車で30分。
4世帯が暮らす文沢地区も孤立した集落の1つです。
それでも、住民からはこんな本音が・・・。
台風被害で孤立した文沢地区・柿下ちゑさん(83)
「息子が島田とか静岡、掛川の方まで買い物、大体1週間に1回ぐらい行くもんですから(日常生活では)必要ない」
台風被害で孤立した文沢地区・森下一淑さん(67)
「宅配サービスとかいう形でやってくれるよというのは聞いたことがあるけど、ドローンまではちょっと。詳しくは聞いてなかった」
2人とも、ドローンの利用は考えていないようです。
利用が伸び悩むドローン事業。
町は今後、登山客へのフードデリバリーなど、観光分野にもドローンを活用し、事業の定着を目指すとしています。
川根本町・デジタル推進課 服部了士課長
「町の地形ですとか、災害を考えた場合、町の将来を支えるために必要な事業だと考えておりますので、より多くの方に利用していただきたいと考えております」
