揚げ物は愛情のかたち 作る側と食べる側の静かな対話 清水町「ごはん食堂 桐家」

厨房の中で、油が小気味よく鳴っている。清水町玉川にある「ごはん食堂 桐家」。店主、桐原直子のモットーは「食べることは、生きること」。市場で仕入れた魚、丁寧に仕込む調味料、油の温度、米の炊き加減。すべてが、「今日も一日頑張れるように」という気持ちに収束していく。自慢の一品は、「塩麹漬けサバの竜田揚げマリネ定食」。脂ののったサバを、塩麹にじっくりと漬け込む。衣をまとわせてカラッと揚げる。マリネ液の酢の酸味がふっと立ち上り、噛めばサバの旨みがじゅわりと溢れる。酸味と塩味、揚げの香ばしさが一体になった、夏にこそ食べたい“和のごちそう”だ。

塩麹漬けサバの竜田揚げマリネ定食(1880円)
塩麹漬けサバの竜田揚げマリネ定食(1880円)

「チキン南蛮定食」も手間を惜しまない桐原の矜持が宿る。注目すべきは、マヨネーズから手づくりしている点だ。卵と油を朝からかき混ぜて仕立てたマヨネーズはタルタルソースに変身し、揚げたてのチキンに惜しげもなくかけられる。ほどよく酸味があり、口当たりは驚くほどまろやか。揚げ物とは思えぬ軽やかさで、胃もたれ知らず。見た目以上に、体にやさしい。

チキン南蛮定食(1780円)
チキン南蛮定食(1780円)

月に1度だけ提供される「ナオタオスパイスチキンカレー」も見逃せない。10種以上のスパイスをブレンドし、香味野菜とともに煮込むカレーは、じわじわと汗を誘う深みと辛さが魅力。たっぷりの季節野菜が彩りを添える。梅雨の重さを吹き飛ばすような、パンチのある一皿だ。

ナオタオスパイスチキンカレー(1680円)※月1回限定メニュー
ナオタオスパイスチキンカレー(1680円)※月1回限定メニュー

「ササミフライ定食」の驚くべき点は衣の中に自家製ガーリックバターがしのばせてあること。噛めば中からバターがとろけ出し、淡白なササミに奥行きのある旨味が加わる。揚げ物でありながら、技と遊び心に満ちた逸品。食べ応えも十分で、まさに“今日を乗り切るエネルギー”そのもの。

ササミフライ定食(1980円)
ササミフライ定食(1980円)

桐原は言う。「出会ったら家族」と。だからこそ、桐家での食事は“作る側”と“食べる側”の間にある、静かな対話になる。(敬称略)

揚げ物は愛情のかたち 作る側と食べる側の静かな対話 清水町「ごはん食堂 桐家」

ごはん食堂 桐家
清水町玉川81‐20
TEL 055‐976‐1689
営 昼11:30~14:30
  夜17:30~20:30※19時以降は予約のみ
休 月曜日・金曜日※日曜日は昼営業のみ
Pあり