大量の土砂が流れ込んだ海も澄み渡り 復興への思い…伊豆山へのメッセージ埋め尽くされた珈琲店【熱海土石流から4年】

熱海土石流災害から3日で4年です。違法な盛り土が崩れて流れ下った土砂は人々の命や財産を奪い生活の糧を得る海にも流れ込みました。復興が進む中、様々な思いを抱えながら、前を向いて生きる人々を取材しました。
2021年7月3日。伊豆山地域に大量の土砂が流れ込み、災害関連死を含め28人が亡くなりました。人災とも言われるこの災害で、多くの人が地元や職場を離れることを余儀なくされました。
その中の一人だった金子友一さん。イセエビが名産の伊豆山港で、20年、漁師をしています。
●金子友一さん:
「俺はその現場にいて、直接流れ込んでくるのをみたんだけど、再起不能化と思ったぐらい。港がもう向こうの白い船のあたりまで埋まっちゃったもんで。どうやっていいものかってものすごく悩んだよね。実際が2~3ヶ月は仕事出来なかったし」
伊豆山港は伊豆山のすぐ麓に位置します。この穏やかな港にも、大量の土砂が流れ込みました。この場所で共に漁業を営む松本早人さんも当時のことをこう振り返ります。
●松本早人さん:
Q流れてきたときどう思った
「いやぁもうだめだと思った。ここで漁師を続けるのは。何年も経てばよくなるのは分かっていたけどすぐには回復しないなと思っていたけど意外と県の動きがよかったから」
壊滅状態だった港。しかし今は…
●船引とわ記者:
「船の上から海を覗いてみても、澄み渡っていて海底までくっきり見えます。にごりなども一切ありません」
海の中は太陽の光が岩に届くほど透明度の高い海。そんな中、30分程度海の中にもぐっていた金子さん達ですが、きょうの釣果は?
袋の中にはウニやサザエなど、立派な海の幸が。
発災から1年と3ヶ月で戻って来られたこの場所。発災前と変わらず仲間と共に海に潜っています。
●金子友一さん:
Qみんなで泳げるのは
「一番うれしいことじゃないのかな。ただ港に関してはそうだけど、土地の人に関して言えばまだ戻ってこれない人だとかもう戻れない人とかいっぱいいるだろうし、そういう面で考えればまだまだなのかなと思う」

完全に元に戻ることはないのかもしれないこの場所で、新たなもの生まれています。
●船引とわ記者:
「伊豆山にあるあいぞめ珈琲店にやってきました。入口に続く階段の壁はあいぞめ珈琲店、そして伊豆山へのメッセージで埋め尽くされています」
8月3日にリニューアルオープンするあいぞめ珈琲店。
この店は発災の翌年にオープンし、今年で4年目を迎えます。
●高橋一美さん:
「僕は当日交通誘導で赤い橋の上にいたんですね。なので目の前に土石流が迫ってきたのを一番目の前で動画をとったり写真をとったりして後ずさりしながらおどおどしたのを覚えています」
そう語るのはあいぞめ珈琲店のオーナー、高橋一美さん。
大量の土砂で埋まってしまい、完全にふさがれてしまった道路。自身も熱海土石流で被災をしながら、ボランティア団体「テンカラセン」を立ち上げて伊豆山の復旧に奔走しました。
●高橋一美さん:
「あいぞめ珈琲店が出来た経緯も『いつでも戻って来れる場所』を作りたかったし、寄り添える場所、繋がる場所を作りたかった」
人と人が出会う場所という意味が込められたあいぞめ珈琲店。この日はリニューアルオープンに向けた会議が行われていました。
●高橋一美さん:
「観光客の方にメリットというよりかは地元の方に一番メリットがないと意味がなかったので…」
今回店長を務めるのは志岐優理子さん。志岐さん一家は土石災害が起こった年に伊豆山に移住予定でした。山神竜道の名で活動する全盲のピアニスト、弟の志岐竜哉さんと共にあいぞめ珈琲店を盛り上げます。
●志岐竜哉さん:
「伊豆に住んだのは2022年なので3年とちょっとですね」「特に伊豆山という地域は神聖な場所というか、エネルギーを感じる場所だなという印象」
●志岐優理子さん:
「繋がりを大事にしたい。という所が一番大事にしたいところでもちろん復興っていうところと伊豆山の方たちが笑顔になる場所にしたいなと思っています」
●高橋一美さん:
「いろんな思いがまだまだある中で、あいぞめ染珈琲店しかり、色んな伊豆山の色んな場所で災害の話が出来ていて、人と人が繋がる、ことが色んな所で生まれていけばいいなと思っている」
