【熱海土石流から4年】被災者たちにとって「復興」とは何か 被災地の今を追う 静岡・熱海市

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28人が亡くなった熱海土石流から3日で4年です。工事や裁判が長期化する中で、被災者たちの心の中にある「復興」とは何か。今の現場を追いました。

後藤光雄さん
「また元に戻れてここに。何不自由なく過ごしていますから、これはこれでいいんですけどもね、喜んでいます」

 熱海市伊豆山の自宅で暮らす後藤光雄さんです。

後藤さん撮影
「これがわたくしの家です。これが僕のうちの前です。下が土石流があった場所です」

 2021年7月3日違法な盛り土が崩れ、後藤さんの家のすぐ横を流れ下りました。

 災害で災害関連死を含む28人の命が奪われました。

 後藤さんは99歳の母、てる子さんを背負って避難しましたが、その5カ月後避難先の市営住宅で、てる子さんは亡くなりました。

自宅に一人戻る

 後藤さんは2024年9月、ライフラインが復旧した自宅に1人戻りました。

後藤光雄さん「(自宅は)思い出ばっかりでしょうね。いろいろけんかももっとしたかった。言い合いも。親子ですからね」

 家に飾られた親子の写真。

 その隣には、後藤さんが避難生活中に書き写したという作家・中村天風の言葉が。

後藤光雄さん
「(好きなのは)怒らず怖れずですね。怒りでしょうね。人間は。怒りだけきちんと抑えられて穏やかに生活すれば、心も穏やかになるし、長生きもできるし健康にもなれる」

 自宅の前では現在、道路や水路の工事が行われています。

 工事や水の流れる音が響くため、後藤さんは気を紛らわせるように外出の機会を増やしているといいます。

後藤光雄さん
「前住んでいた方々がね納得すればそれが復興だと思う。(必要なのは)希望でしょうね、これからの。きれいになった。これからまたみんなで助け合っていきましょうと」

後藤光雄さん
「自然災害でなかったら、人災であれば責任者は責任を取って いただきたい」

2021年
2021年

なぜ、土石流は起きたのか

 なぜ、土石流は起きたのか。

 静岡県や熱海市、土地の前と今の所有者を相手取り、遺族や被災者が損害賠償を求める裁判が続いています。

 原告側は、熱海市が土石流の予兆を把握しながらも避難指示を出さなかったことや、盛り土が森林法の規制対象なのに、静岡県が十分な監督を怠ったことが違法だと訴えています。

静岡県の担当者
「既に出されている書面で、県がまだ回答していないものがあります。主張を整理してお返ししていく」

 カギを握るのが、土地の前の所有者・天野二三男氏。

前の土地所有者天野二三男氏
「うちはあくまで許可をとった会社です。泥を入れたわけではない」

 天野氏は遺族から業務上過失致死などの疑いで刑事告訴されています。

 裁判は9日に非公開で行われるほか、天野氏の証人尋問や 裁判官の現地視察も予定されています。

 天野氏は原因が分からないうちに現場の工事はするべきでは なかったと話します。

前の土地所有者天野二三男氏
「改変されない現場を見てほしかった。改変してはいけないです。でも行政がやっていることだから否定はできない。裁判は時の事実すべて、その行為の事実を全て調べたい」

前の土地所有者天野二三男氏
前の土地所有者天野二三男氏

復旧工事は今

 現場では今も川の拡幅や市道の整備が行われています。

 しかし、地権者からの用地取得は 河川でおよそ6割、道路でおよそ8割にとどまっています。

 熱海市は2025年度中の用地取得、2026年度中の工事完了を目指していますが、当初の計画からはすでに年遅れています。

 6月開かれた住民との意見交換会。

 熱海市や静岡県の担当者が工事の進捗(しんちょく)状況などを説明する中、耳を傾けていたのは、家を土砂に流された戸田さん夫妻です。

自宅が全壊した戸田勝之さん
「(4年が経ち)裁判も含めて色々な部分もやっていて、 工事も遅れているという話を聞いたりしていて『もういいや』というのが正直な話ですよね」

自宅が全壊した戸田弘美さん
「盛り土をした人が 憎くて憎くて。憎くてしょうがなくて。そんなことばかり 考えていたら前に進めない。戻りたい人がいるので、そういう人たちが 早く帰れる場所にしてくださいと」

 発災から3日で4年。

 伊豆山に戻ることを目指し、いまも21世帯43人が 避難生活を続けています。

Q.市長にとって 伊豆山地区が復興したと言えるのはどんなタイミングか

熱海市 斎藤栄市長
「復興は工事が終わって終わりではないと考えております。伊豆山全体が活性化することが、被災エリアの活性化にもつながっていくので、復興事業を令和8年度までに完了させるのが、最大の我々のやるべきことだと思っています」

熱海市
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