燻しサンマに栗リゾット、トスカーナの風が通う店 静岡市「ルフィナ」
静岡市葵区、伝馬町通りの奥、扉を押せばふわりと広がるのはトスカーナの空気だ。2019年に開店したカジュアルイタリアン「La Rufina(ルフィナ)」は、店名に由来するワインの郷を思わせる料理で、秋の素材を丁寧に料理へとつむぐ。
前菜の盛り合わせと季節のスープで始まるランチは、異なる系統のパスタが2種楽しめるのが特徴だ。1つ目は、サンマと甘長唐辛子を組ませたオイルベースのパスタ。サンマは燻製にしてほぐし、ニンニクとオリーブ油のソースに入れる。甘長で臭みを抑え、仕上げに少量のからすみで華やぎを添える──燻し香がオイルに溶け込み、舌に深い秋が広がる。
2皿目は「キコリ風」とされる、キノコのトマトソースパスタ。玉ねぎを飴色に炒め、シメジやヒラタケ、乾燥ポルチーニ、赤ワインをじっくり煮込み、トマトでまとめる。山の旨味が凝縮したソースは、噛むたびに香りを重ね、トマトの酸味が輪郭を作る。
アラカルトのリゾットは栗を主役にする。生の栗をそのまま使い、生米と共に炊き上げるという手法で、栗はほくほくとやや崩れ、自然な甘みがとろりとリゾットに溶け出す。ほのかな甘さが旨みと馴染み、静かな満足をもたらす。
肉料理では、牛ホホ肉の赤ワイン煮込みにリンゴの紅玉を合わせる工夫が印象的だ。煮込みにリンゴを加えることで酸味と甘みの層が現れ、ワインのコクと肉のほろほろ感が引き立つ。店主はイタリア修業の経験を料理に反映させ、素材の組み合わせに旅先で得た記憶を織り込む。
皿の合間に秋を拾い集めるような構成で、食後には季節の余韻が残る。気負わないが手仕事は確かだ。静岡の秋を、イタリアの井戸端で摘んだように食べる一軒である。
イタリア料理 La Rufina
静岡市葵区伝馬町9-15リベルテヒラノ1階
電話番号:054-293-6603
定休日:日曜日・火曜のディナー・不定休あり
営業時間:12:00-13:00(最終入店)
18:30-20:00(最終入店)
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