藁が香る、旬の秋味 「食堂一二三」で出会う粋なひと皿 静岡市
静岡市葵区常磐町。夜の街の一角に、控えめな看板を掲げて11年。「食堂一二三(ヒフミ)」は、手打ちそばをしめに楽しむ“そば居酒屋”として、地元の食通たちに知られる店だ。カウンターの奥で藁がパチパチと音を立てる。秋のサワラを串に刺し、炎で一気に炙ると、店内には香ばしい煙が立ちのぼる。春が旬と思われがちなサワラだが、実は秋も脂がのる時季。香り高い藁の燻香をまとった身に、金山寺味噌の塩味が絡むと、ひと口で酒が欲しくなる。
料理はどれも季節の移ろいを映した一皿だが、看板メニューは意外にも肉じゃが。煮込んでから炙った角煮がゴロっと乗ってボリューム満点。とろとろでとってもジューシー。最初にオーダーしたい一品だ。
豆腐と木の子の卵とじは、椎茸や舞茸、しめじをそばの“かえし”で煮含め、ゆずと山椒で香りを添える。熱々の鍋を囲めば、湯気に包まれて秋の夜が深まる。
さらに、柿の白和えがまたいい。チーズと豆腐の衣が軽やかに甘い柿を包み、そばの実がぷちりと弾ける。和と洋の間を行き来するような品のよさだ。
しめは、もちろんそば。福井県産のそば粉を細めの二八で打つ。つるりとしたのどごしが、熱燗の余韻をさらりと洗い流す。
静岡の夜に、しみじみと秋を感じさせる名店だ。
食堂 一二三
静岡市葵区常磐町1-8-5 ブルックリンスクエア2階
電話番号:054-251-8788
定休日:火曜日
営業時間:17:00-翌1:00
フードL.O.24:00/ドリンクL.O.24:30
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