香り、音、季節が織りなす和の情緒あふれる手打ちそばの世界 藤枝市「香音季」
藤枝市大東町。木のぬくもりに包まれたログハウスが印象的なそば処「香音季(かねき)」。開放感あふれる店内には、座敷席やキッズスペースもあり、家族での食事にもぴったりの空間だ。2023年の開店以来、「香り」「音」「季節」という名の由来どおり、五感を刺激する一皿を届けている。店主の櫻井保彰さんは30年にわたり日本料理の世界で腕を磨いてきた。使うそば粉は、茨城県産の常陸秋そば。石臼でゆっくり挽くことで、香りを逃さず風味を凝縮する。打ちたての麺は艶やかで、喉を抜ける軽やかさが印象的。すっきりとした江戸前風のツユが、そばの個性を引き立ててくれる。

評判なのが、旬の広島産牡蠣を使った季節限定そば。海苔で巻いて天ぷらに仕立てた牡蠣は、衣の中から旨みが弾ける。ツユをまとわせれば、香ばしさと磯の風味が重なり、思わず箸が止まらなくなる。和食で培った技を生かし、繊細さと遊び心を同居させた一品だ。

もう一品の人気は、自家製の鶏つみれを使ったカレーそば。スパイスの香りをほどよく抑え、出汁の旨味を前面に立たせている。素揚げの秋ナスを添え、蕎麦と絡めると、じんわりと滋味が広がる。鶏つくねの弾力とナスのとろける食感が心地よく、食べ進めるほどに深みを感じる味わいだ。

香ばしい香りが立ちのぼる、ごぼうと三つ葉のかき揚げそばもおすすめ。ゴマ油をほんの少し加えて揚げたかき揚げは、サクッと軽やかで、口に広がる香りがたまらない。ツユの甘みとコクを含ませながら、蕎麦とともに味わえば、満足感は一層増す。

平日限定のセットメニューも見逃せない。中でも人気は、黒毛和牛のすき焼きと蕎麦を組み合わせた贅沢な一膳。やわらかな肉を箸で持ち上げ、ツユにくぐらせれば、出汁の香りと肉の旨味がふわりと調和する。蕎麦とともに頬張れば、まさに至福の瞬間だ。

日本料理の技を生かし、香りと音、季節を一杯に込めた藤枝の名店「香音季」。ここには、五感で味わう蕎麦の新しい世界が広がっている。

香音季
藤枝市大東町516-3
電話番号:054-397-5811
定休日:月曜日・第4日曜日
※祝日は営業、翌日火曜休み
営業時間:11:00-14:30
17:00-20:00※土日のみ夜も営業
Pあり