香りが連れていく昼のアジア旅 静岡市「バオバブ」
静岡市清水区北脇。住宅地の一角に、旅心をくすぐる一軒がある。「ダイニング&カフェ バオバブ」。アフリカやオーストラリアに根を張る大樹の名を掲げ、木陰に人が集うような店でありたいと9年前に扉を開いた。
主軸はアジア料理を日本人の感覚に寄せた一皿。看板ランチの「トムヤムラーメン」は、まず香りで引き込む。甘エビの頭から引いた濃厚なだしに、レモングラスとライムリーフ。トムヤムペーストを重ね、辛味と酸味、ほのかな甘みを三層に組み立てる。刺激はあるが、角が立たない。じんわりと身体をあたためる辛さだ。
麺は中華麺かフォーを選べる。もっちりとした中華麺はスープをまとい、旨みを逃さない。米粉のフォーは軽やかで、香りをまっすぐに運ぶ。途中でココナッツミルクを注げば、輪郭がやわらぎ、まろやかな表情へ。ひと椀で味の景色が変わる仕掛けも楽しい。
セットの前菜プレートは“大きなパレット”。旬の野菜を中心に、揚げ春巻きやオムレツが並ぶ。太めに切って寒風にさらした自家製切り干し大根は、噛むほどに甘い。地元トマトと糖度の高い金柑「こん太」のマリネは、酸味が軽やかに弾ける。デザートと蓮茶まで付く充実ぶりだ。
もう一つの名物が「ラクサ」。干しエビとレモングラスで作る自家製ペーストに、エビの旨みを凝縮した“カピ”を合わせる。炒めて香りを引き出し、ココナッツミルクと自家製豆乳麹で厚みを出す。甘さのあとに辛さが追いかける構図。別添えのサテトムを落とせば、エビの香ばしさがぐっと立ち上がる。
創作まぜそばは、アジアのしょうゆを数種ブレンドした肉みそが核。ネギとフライドオニオンが食感のアクセントを担う。
くつを脱いで上がる店内は、友人宅の延長のような居心地。スパイスの香りに包まれながら、昼の小さな旅へ。バオバブは、静岡に根を張る異国だ。
ダイニング&カフェ バオバブ
静岡市清水区北脇132-17
電話番号:054-625-6607
定休日: 日・水・金
営業時間:11:30-15:00
※ランチは14:00まで
※ディナーは要予約
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