客席で仕上がる1枚。「SEIDAI」はお好み焼きを“粉もの”の先へ運ぶ 静岡市

 料理が完成するのは、鉄板の上ではなく、客席の前かもしれない。ソースを注ぐ、湯気が立つ、香りがほどける。その最後のひと手間まで見せることで、一皿の印象はぐっと立体になる。静岡市葵区両替町2丁目、新加茂川ビルの1階にある「創作鉄板料理SEIDAI」は、本場大阪でお好み焼きを学んだ店主が、関西の土台に創作の余白を持たせた店だ。店名には静岡の「静」と大阪の「大」、そして盛大にもてなしたい気持ちが重ねられている。
 その考え方がいちば んよく出るのが、期間限定の「春野菜の明太クリームお好み焼き」だろう。出汁昆布を半日水につけ、かつお節を2種類合わせて特製のだしを引く。そこに特注の小麦粉ととろろをしっかり練り込んだ生地を、薄くのばす。千切りキャベツ、生卵、天かすを重ねても、ヘラで押さえつけない。ふっくら焼き上げるためだ。別に、タケノコ、アスパラ、シメジを和風だしで蒸し、明太子ベースの淡いピンク色のソースと和える。最後は客席で、その明太クリームをかけて完成。見た目はしっかりしているのに、食べるとキャベツの量が効いて軽い。粉ものというより、春野菜をたっぷり抱えた1枚として入ってくる。

春野菜の明太クリームお好み焼き(1390円)4月末までの期間限定予定
春野菜の明太クリームお好み焼き(1390円)4月末までの期間限定予定

 対照的に「トマトのお好み焼き 豚肉&チーズ」は輪郭がはっきりしている。豚バラとチーズをのせたお好み焼きに合わせるのは、加熱して果肉だけを使ったオリジナルトマトソース。目の前でかければ、酸味が先に立ち、あとからチーズのコクが追いつく。豚肉の脂を受け止めながら、全体を洋風へと寄せる組み立てだ。生のトマトが苦手な人にも届きやすいように、あえて果肉だけにしている点にも配慮が見える。

トマトのお好み焼き 豚肉&チーズ(1390円)
トマトのお好み焼き 豚肉&チーズ(1390円)

 つまみで外せないのが「明太子チーズのだし巻き」。半分に割ると、中から明太子と溶けたチーズが現れる。ふんわりした玉子の中に和風だしが通っていて、塩気、まろやかさ、だしの香りが短い距離で重なる。人気なのもうなずけるし、鉄板料理の店であることを改めて思い出させる一品でもある。

明太子チーズのだし巻き(790円)
明太子チーズのだし巻き(790円)

 鉄板焼きキャベツのポルチーニソース バケット添え」は、さらに面白い。主役は肉でも魚でもなくキャベツ。蒸して甘みを引き出したところへ、ポルチーニを使った特製ソースをかける。やさしい甘さの野菜に、きのこの濃厚な旨みがぴたりと重なり、残ったソースをバケットでさらうところまで含めて完成する。派手さではなく、素材の置き方で印象を残す皿だ。

鉄板焼きキャベツのポルチーニソース バケット添え(890円)
鉄板焼きキャベツのポルチーニソース バケット添え(890円)

 締めには「ランプ肉のガーリックライス」。きめが細かく、やわらかなランプ肉を使い、ニンニクの香ばしさで食欲をもう一度立ち上げる。味はしっかりしているのに、大葉が効くことで後味が重くならない。最後に向かう料理でありながら、きちんともう一口を呼ぶ。

ランプ肉のガーリックライス(1290円)
ランプ肉のガーリックライス(1290円)

 SEIDAIの魅力は、奇をてらうことではない。だしを取る、押さえず焼く、蒸して甘みを引き出す、目の前で仕上げる。そうした手順の積み重ねが、料理をただの“映え”で終わらせない。カウンターでその仕事を眺めていると、粉ものの気楽さと鉄板料理の奥行きが、ひと続きのものに思えてくる。

客席で仕上がる1枚。「SEIDAI」はお好み焼きを“粉もの”の先へ運ぶ 静岡市

創作鉄板料理SEIDAI
静岡市葵区両替町2-5-8 新賀茂川ビル1階
電話番号:050-3618-0397
定休日:不定休
営業時間:17:00~23:00
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