ステーキをのせる、その必然。「ミルポワ」はイタリアンに“ごちそう感”の輪郭を与える 静岡市

 皿が運ばれた瞬間に、まず景色でつかむ店がある。牛肉の赤み、チーズの白、トマトソースの色、その上から肉汁を含んだソースが落ちてくる。静岡市駿河区高松の「ビストロ・イタリアン・チーズフォンデュ ミルポワ」は、そんな視覚の強さを持ちながら、味の組み立ては案外まじめだ。1999年創業。フレンチ出身の店主、村松正博さんが、その技法を土台にイタリアンを続けてきた。夫婦で切り盛りし、家族連れからカップルまで客層は広い。長く続く店には理由がある。
 その理由がいちばんわかりやすく表れるのが、「牛肉のステーキピザ」だ。発想だけ聞けば豪快だが、仕立てはきちんとしている。ピザにはトマトソースを塗り、モッツァレラチーズをのせて焼く。一方で赤身の牛ロースは、別でフライパンにかけて、ちゃんとステーキとして火を入れる。狙うのはミディアムレア。焼き上がった生地にカットした肉を1枚ずつ並べ、バター、デミグラスソース、しょうゆ、レモン汁でまとめたステーキソースをかけて完成する。モチモチのナポリ風生地に、肉の旨みとソースの厚みが重なると、ピザというより1皿の肉料理を食べている気分に近い。それでもトマトの酸味が土台にあるぶん、重さばかりは残らない。ミルポワらしさは、こういう着地のさせ方にある。

牛肉のステーキピザ(2838円)
牛肉のステーキピザ(2838円)

 定番の「渡り蟹のトマトクリームパスタ」も、この店の芯をよく示す。オープン当初から続く看板で、ブランデーや白ワインを使って蟹の臭みを取りながら仕上げるという。トマトソースの酸味に、生クリームのまろやかさが重なり、味は濃厚なのに口当たりは意外とすっとしている。上にのった渡り蟹の姿は華やかだが、見た目のためだけではない。蟹の旨みがソース全体に行き渡り、食べ進めるほど厚みが増していく。

渡り蟹のトマトクリームパスタ(2068円)
渡り蟹のトマトクリームパスタ(2068円)

 対照的に「あさりと野菜のビアンコパスタ」は、軽やかな方向で印象を残す。店のだしを使い、その場であさりを開かせる。合わせるのはアスパラガスとホウレンソウ。ボンゴレビアンコのすっきりした骨格に、野菜の青さと甘みが入ることで、味の奥行きが広がる。あさりからも野菜からもだしが出て、そこへニンニクの効きが加わるから、さっぱりしているのに輪郭はぼやけない。華やかなメニューが目立つ店で、こういう一皿をきちんと置いているところにも、料理の幅が見える。

あさりと野菜のビアンコパスタ(1738円)
あさりと野菜のビアンコパスタ(1738円)

 食後に向けて景色を変えるなら、「ラ・フランスのピザ」がある。これは新たに始めた裏メニューで、いわばデザートピザだ。生地にカスタードクリームを塗り、モッツァレラチーズをのせて焼き上げる。そこへ冷たいラ・フランスのスライスを並べ、さらにバニラアイスを合わせる構成。焼いた生地の温度、果実のひんやりした質感、アイスの甘さが同時に入ってきて、食後でも不思議と手が止まらない。ファミリーやグループで囲むのに向く、という店の提案にも納得がいく。

ラ・フランスとはちみつのピザ(2178円)※数量限定
ラ・フランスとはちみつのピザ(2178円)※数量限定

 ミルポワの料理は、派手さだけで終わらない。肉をどう焼くか、臭みをどう外すか、生地に何を受け止めさせるか。そうした判断が味にそのまま出ている。高松で長く愛されてきた理由は、映える皿の奥に、手順を省かない料理の骨格があるからだ。華やかなひと皿を食べたい夜ほど、この店の仕事は頼もしく見えてくる。

ステーキをのせる、その必然。「ミルポワ」はイタリアンに“ごちそう感”の輪郭を与える 静岡市

ミルポワ
静岡市駿河区高松2663-1
電話番号:054-238-0232
定休日: なし
※年末年始は除く
営業時間:11:30-15:00 L.O.14:00
※土日祝は~15:30 L.O.14:30
17:30-22:00 L.O.21:00
Pあり