園児送迎バス置き去り死事件の裁判 検察は元園長に禁錮2年6カ月を求刑 遺族が被告に意見陳述 静岡地裁
2022年静岡県牧之原市の認定こども園で、園児が送迎バスに置き去りにされ死亡した事件の裁判で、検察は元園長に禁錮2年6カ月を求刑しました。
和田佳代子記者:
「きょう結審を迎える裁判では、千奈ちゃんの両親が元園長の被告と元担任の被告への心情を述べる予定です」
2022年9月、牧之原市の認定こども園で、当時3歳の河本千奈ちゃんが送迎バスにおよそ5時間置き去りにされ、重度の熱中症で死亡しました。
和田佳代子記者:
「午前10時です。元園長の被告が静岡地裁に到着しました。
静岡地裁に姿を見せた被告。
当日バスを運転していた川崎幼稚園の元園長です。
元クラス担任の被告とともに業務上過失致死の罪に問われています。
傍聴に訪れた人:
「これは絶対に防げたと思っています。本当に切ないです」
母親の意見陳述
午前11時に始まった、13日の裁判。
千奈ちゃんの両親が時折涙ぐみながら、今の思いを語りました。
千奈ちゃんの母親:
「事件以降、喪失感と絶望感でいっぱいです。生きていくことが苦しい。苦しすぎて死んでしまいたいです。娘の死に対する絶望は、言葉で表現できません。千奈は宝物です。私の命が果てるまで、千奈と一緒にいたかった。加害者を絶対に許すことはできません。千奈はいつものようにバスに乗り、登園しただけ。元担任の被告はなぜ確認しなかったのか。なぜ生きる権利を奪ったのか。怒りと憎しみの気持ちでいっぱいです。事件から1年9カ月経っても、涙を流さない日はありません。思い出が増えることなく、記憶が薄れていくことが怖いです。たった3年11カ月しか生きさせてあげられず、助けてあげられなかったことを後悔して生きていきます」
父親の意見陳述、検察が求刑
千奈ちゃんの父親
「元園長の被告人の無責任さと反省のなさは許されるものではありません。事件後、いつもの運転手から降車確認をしなければならないと聞き、「あ、そうだったんだ」と被告人質問の中で軽々しく答えていました。子どもの命を守るはずの園長が子どもを殺したことの重大さを未だに自覚できていないのです。事件当日の夕方、私たち夫婦に彼が最初に言った言葉を忘れません。「病院に用事があって急いでいた」。そんな自己中心的な都合のせいで、千奈は私たち大人ですら経験したことのない生き地獄の苦しみと恐怖の中で亡くなったのです。「パパに会いたい、パパ大好き」と言っている生前の動画を見て、私は謝ることしかできません。強烈な怒りと恨みで両被告人を殺してやりたいと考える日も少なくありません。過去の判例よりも重い実刑判決が両被告人に下されることを望みます」
検察側は「園児の安全確認という基本的な注意を怠った落ち度は極めて大きい」として、元園長被告に禁錮2年6カ月、元担任の被告に禁錮1年を求刑しました。
最終弁論
一方で、元園長の弁護人は「被告人の失礼な対応は反省していないわけではなく、老齢で判断能力が低下し、適切な対応ができていない」と釈明。
裁判長に対して寛大な判決を求め、元担任の弁護人は執行猶予付きの判決を求めました。
裁判の最後、発言を求められた被告2人は―
元担任の被告
「私の責任で取り返しのつかない重大なことを引き起こし、千奈ちゃんとご遺族には謝罪の気持ちしかありません。本当に申し訳ありませんでした」
元園長の被告
「お話を聞いて、一生かけて償っていきたい、一生お祈りをささげたいという気持ちでいっぱいです」
判決は7月4日に言い渡されます。