『タケノコ』発言の市議に「1日間の出席停止」…市議は懲罰の取り消し求め審決を申請する方針 静岡・沼津市

沼津市議会(16日午後10時46分)
「沼津市議会定例会を閉会いたします。ご苦労さまでした」

 時刻は午後11時前。沼津市議会にとって長い1日となった背景には、“タケノコ”をめぐる、あの発言がありました。

沼津市議会
沼津市議会

「市の土地でタケノコを掘り、販売している」

江本浩二市議(9月27日 沼津市議会)
「実は私の農地の中にも市の土地が存在しています。その土地は現在、竹林として私、管理をして、そこから毎年タケノコを掘って利益を得ています。販売したりしています」

「市の土地でタケノコを掘り、販売している」と発言した江本浩二沼津市議。このいわゆる“タケノコ発言”が議会に前代未聞の混乱を巻き起こした引き金でした。

 議会の品位を汚したとして、市議22人が江本市議への懲罰動議を提出。先週、懲罰特別委員会が開かれ、江本市議に対する「陳謝」の処分を決めました。

江本浩二市議(9月27日 沼津市議会)
江本浩二市議(9月27日 沼津市議会)

江本市議に「陳謝」の懲罰が可決も…

 そして16日の市議会本会議…。

沼津市議会本会議(16日午前11時20分ごろ)

議長「本件は(懲罰特別)委員長報告の通り決することにご賛成の方はご起立願います。起立者多数と認めます、よって17番、江本浩二議員に陳謝の懲罰を科することは可決されました」

陳謝の懲罰可決
陳謝の懲罰可決

 江本市議には、4つある処分のうち、下から2番目にあたる「陳謝」の処分が科されることが決まりました。その後、壇上に上がった江本市議。陳謝文を読み上げる、かと思いきや…。

江本浩二市議:「陳謝文をそのまま読み上げることはできません」

議長「江本議員、江本議員に申し上げます、いま懲罰の陳謝文を読む時間ですから。それを読まれないのであれば、自席についてください」

江本市議「この場では議長の命令に従わせていただきます」

江本浩二市議
江本浩二市議

 懲罰として科された「陳謝」を拒否。議会が一旦休憩に入ります。報道陣が江本市議に真意を問うと…。

江本浩二市議:「議会の決定に従わないということは、誠に重大なことだと私も重々承知しているが、陳謝文を読み上げることは、言論の府である議会をおとしめること、さらには私の人格・尊厳をも、自らおとしめることになります」

江本浩二市議
江本浩二市議

新たな「懲罰動議」

 そして午後2時すぎ。「陳謝」を拒否したことに対して“新たな懲罰動議”が提案されます。

尾藤正弘市議:「議会の議決を軽視しており、議会の権威と品位を著しく汚す行為であるため、江本浩二議員に対する懲罰を求める動議を提案する」

尾藤正弘市議
尾藤正弘市議

 ここで、“タケノコ発言”の江本市議と同じ会派で“駐車場問題”が注目された山下富美子市議が登壇。援護射撃をはじめます。

山下富美子市議(江本市議と同じ会派)
「陳謝を拒否したことによって、さらなる懲罰が加えられるという、その点について再度説明を求めます」

 山下市議の質問に対する「説明」が終わると、傍聴席からはこんな声が…。

傍聴席「これで議会? 信じられないよ、もう」
議長「ご静粛にお願いします」
傍聴席「静粛はいいけど…」
議長「ご静粛にお願いします!」

山下富美子市議
山下富美子市議

 「陳謝」を拒否した江本市議に対して、再び懲罰特別委員会が非公開で開かれます。そこで決定したのは、沼津市議会史上初となる「出席停止」の懲罰です。

懲罰特別委員会
懲罰特別委員会

「出席停止」の懲罰が可決

 この日、議会が始まってからおよそ9時間が過ぎた午後7時15分、本会議が再開。“タケノコ発言”の懲罰に対する弁明の機会が江本市議に与えられました。

江本浩二市議:「委員会の一身上の弁明でも申し上げましたが、出席停止処分は当該議員が議事に参与して議決に加わるなどの議員としての中核的な活動をすることができず、住民の負託を受けた議員としての責務を十分に果たすことができなくなるというほど重大な決定です。懲罰委員会では、これを踏まえた上で、丁寧な審査をしていただくことをお願いしましたが、望むような審査はされませんでした」

 弁明を終えると、議会の規則により、江本市議は議会から退出。その後、“タケノコ発言”をめぐる、この日2回目の採決が行われました。結果は…。

江本市議は議会から退出
江本市議は議会から退出

議長
「江本浩二議員に1日間の出席停止の懲罰を科することであります。本件は委員長報告の通り決することに御賛成の方は起立願います。起立者多数と認めます。よって、17番江本浩二議員に1日間の出席停止の懲罰を科することは可決されました」

 1日出席停止が可決され、江本市議は最終日の市議会を後にしました。

「信念に基づいて行った」「懲罰は勲章」

江本浩二市議:「とても残念だが、これは沼津市議会が下した、最後の議決であるということで受け入れました。陳謝文を読み上げるか、読み上げないか、もう何日も悩みましたし、いろいろと考えた。私はこの窃盗罪、タケノコ泥棒というような皆さんがお持ちのイメージ。これを大げさに聞かないでもらいたいんですが、一生タケノコ泥棒の議員というような皆さんのイメージを背負っていかなければならない。それを考えると、自分の人格、そして尊厳を守るために、きょう陳謝文の読み上げについても拒否いたしました。そして、出席停止が言い渡されました。これは私の信念に基づいて行ってきたことなので、後悔はしていません」

Q.これだけの懲罰を受けたことに対する責任とか、あるいは支援者、市民に対する責任の考え。

A.私はまず懲罰は勲章だと思っている。だから5回か4回と3回か、ちょっと余り記憶がないんですけれども、全て勲章だと思っています。懲罰というものを勘違いして、自分たちの少数派を攻撃する道具。そして多数派を結束させて、この結束の外に出たら、余分なことを言ったら、おまえも江本みたいな目に遭うんだぞって、見せしめるためにやっていたんじゃないんですかって、僕は思っているわけね」

江本浩二市議
江本浩二市議

懲罰処分の取り消しを求め審決申請へ

 タケノコ発言で大揺れとなった沼津市議会。江本市議が「出席停止」となった後、25の議案が可決されました。

 いっぽう、江本市議は懲罰処分の取り消しを求め川勝知事に審決を申請する予定で、19日に会見を開くということです。前代未聞の事態に発展した“タケノコ騒動”はまだまだ幕引きとはならなさそうです。

   (10月17日放送)