リニア新幹線新幹線建設静岡工区の課題は水の問題から土の問題へ


リニア中央新幹線の工事を巡って南アルプスの静岡工区の最前線を取材しました。課題は、水の問題から、土の問題へと   移っていきそうです。

西尾梓アナウンサー:
「大井川上流部の田代ダムです。こちらの水が山梨県側に流れ出るのですが、一定期間取水抑制することによって、県外に流れ出る分を相殺しています。」

 品川―名古屋間を40分で結ぶリニア中央新幹線。

 リニア工事をめぐっては、大井川の水が減ると懸念されていた「水問題」が「田代ダム案」の前進によって、解決に向かって大きく動き始めています。

 ただ、静岡県にとって「リニア問題」は「水」だけでなく、工事で出た土の置き場や、自然環境への影響など、議論しなくてはいけない“課題”がまだまだ山積しています。

藤島

西尾梓アナウンサー:
「発生土置き場の候補地、藤島です。こちらでは以前別の会社が工事で出た土を盛り土しています。この場所にさらに20mほどの高さまでトンネル工事で出た土を盛るということです」

 南アルプスの標高およそ1000m、静岡市葵区の藤島です。

 JR東海はこの場所に、リニア静岡工区のトンネル工事で出た自然由来の重金属を含む土を置く予定です。

 最大容量は10万㎥。高さにして20mほどまで盛り土をする予定となっています。

 ただ、この場所をめぐっては高いハードルが。

 「県の盛り土条例」

 熱海土石流災害を受け、去年7月に施行した県の盛り土条例。

 この条例では一定基準を超える有害物質を含む土を盛り土することを原則禁止としているのです。

 こうした“対策が必要な土”についてJR東海はしっかりと対策を行うと説明しています。

JR東海 中央新幹線静岡工事事務所 藤原繁担当課長:
「遮水型、遮水工封じ込めというもので、それもシートが一重というものがあるが、我々はシートを二重にしてより安全性に配慮したものを採用する」

 南アルプスに盛り土されることになる“対策が必要な土”実は、置き場となるのは藤島だけではありません。

藤島

ツバクロ

西尾梓アナウンサー:
「発生土置き場の候補地であるツバクロです。この場所にトンネル工事で発生した土のほとんどが盛られることになる。一度この木を伐採した後、盛り土をして再び緑を取り戻していく。」

 標高およそ1300メートル、広さ14ヘクタールと、東京ドーム3個分の広さがあるツバクロ発生土置き場。

 ここには単純計算で先ほどの藤島の36倍。

 およそ360万立方メートル分もの土を置くことができます。

 これはリニア中央新幹線の静岡工区で発生する土のほとんどが置ける量でツバクロは静岡工区最大の発生土置き場とされています。

担当者:
「ツバクロ発生土置き場は平坦な位置。多少起伏はあるが、いわゆる沢のような斜面ではないことを理解してもらいたい」

 JR東海は、盛り土の断面の中に100年に1度の雨を想定した排水設備を設置するなど、安全性を確保するとしていますが、静岡県は周辺で土壌の中が崩れる深層崩壊が発生する懸念があるとして、JR東海に安全確保の再検討を求めています。

 一方、静岡市の難波市長は10月13日の協議会で、「発生土置き場の候補地・ツバクロ周辺で大規模な深層崩壊が発生した場合でも
大井川の流量減少などへの影響は小さい」との見解を示しています。

水問題から土の問題へとフェーズが変わってきているリニア問題。

 行政がJR東海とどのように問題解決に向けて動いていくのか注目が集まります。

ツバクロ