国内最大級の竜巻被害から2カ月…室内に「カビ」 進まない復旧で人口流出も 1市1町で1700棟を超える被害 静岡・牧之原市
牧之原市細江地区
伊地健治アナウンサー:「走っていても、青いシートがかけられている家がまだまだ多くあります。屋根がなくなってそのままになっている家もあります。ああ、あちらの家も屋根がない。そのままの状態ですね窓ガラスも入れてありませんから、とても住人の方が住んでいる状況じゃないですね。あれから2カ月が経ってもまだこのような状況が広がっています」
9月5日、台風15号に伴い発生した国内最大級の竜巻。男性1人が死亡したほか、牧之原市と吉田町では合わせて1700棟を超える住宅に被害が及びました。
発災から2カ月。牧之原市でもっとも被害の大きかった細江区です。いまだ青いシートが目立つこの地区では新たな問題が起こっていました。細江区の区長を勤める山﨑さんです。
伊地アナ「1か月前にも取材に来た。あまり変わってない」
静岡・牧之原市 山﨑泰細江区長「そうですね、まだまだ青いシートが貼られていて、少しずつ足場を組んで修理したり解体するところが増えてきましたけど、(業者の)タイミングもあるので、なかなか進まないのが正直なところ」
山﨑さんは、地区の被害に対応するため、2カ月経ったいまでも毎日、防災センターに詰めています。
山﨑さん「(発災当初)停電が直るまで、ニュースの映像を見ることがないので被害が全然分からなかった。瓦は落ちているし電線に飛来物が引っかかっているし、停電はしてるしこれはただ事ではないなと」
ほとんどの住宅にシート
自宅の損傷は少なかったという山﨑さんですが、地域の惨状をみて大きなショックを受けたそうです。
伊地アナ「この辺り一帯シートがかかっていない家がほぼない。窓が無かったりまだ修繕の途中であるということがわかる。2カ月経ってもこれなんですね」
細江区が見渡せる高台に案内してくれました。
伊地アナ「すごい。こんなに太い木が根元近くで折れてますよ。すごいですねこの辺り」
伊地アナ「ここから見る家々がひどい状況ですね。この山の斜面に竜巻が来たんだろうなというふもとの家という家全てが被害を受けている状況です」
山﨑さん「あそこにぐしゃぐしゃになっている車も当時のままだろうと。順番としてはあれを動かすよりも、まず住まいの確保といいますか」
補償が確定せず「安易に業者に頼めない」
被害の大きさによって事情は異なるものの、簡単にはいかない現実も…
山﨑さん「まだまだ修繕できていないけども、ひと部屋の中で住んでいるとか。国や県からの見舞い金だけじゃ、とても資材機材が高騰している中で解体すらもままならないのも当然ある。(補償が)確定していないので、安易に業者さんにお願いできない方もいると聞いている」
伊地アナ「お金をもらえるのか確定していないので直すべきか、解体すべきかでも分からないけど暮らさなきゃいけないから住み続けている」
2次災害への懸念
住民たちの間では、新たな懸念も浮上しています。
山﨑さん「倒れた木が次の大雨かなんかで2次災害としてまた崩れてはこないかというそういう不安の声が来ています」
土砂崩れという2次災害の恐れ。牧之原市にも対策を依頼しているそうですが。
山﨑さん「対応すると話は聞いているが広い範囲の大きな木々ですので、簡単に片付けますとはいかないので」
伊地アナ「本当にここに住み続けていく中でも不安がまだまだあると」
牧之原市細江区時ケ谷
細江区時ケ谷の町内会長の自宅は、竜巻で屋根が飛ばされました。
住人(発災当時)「雨漏りがしてます怖い。なんでこんなところから水が漏るだよ」
これは発災直後の映像。階段は滝のように水が流れています。竜巻による更なる被害は、2カ月後に思わぬ形で現れました。
伊地アナ「ここはダイニングキッチンですね。天井を見ると緑色のカビがかなり広がっているような感じです。ここもそうですね」
「屋根は全部はがれた」
竜巻被害から2カ月。牧之原市内でもっとも被害の大きかった細江区です。町内会の会長を務める大石さんのお宅でその爪痕を目の当たりにしました。
伊地アナ「罹災証明では…大規模半壊です。この家二階建てですけど屋根の何割がはがれたんですか?」
牧之原市・時ケ谷町内会 大石春男会長「全部です」
伊地アナ「全部ですか」
いまも大石さんの家の屋根は青いシートで覆われています。竜巻の時は1階で夫婦2人で過ごしていました。
発災当時の様子は
大石さんの妻(発災当時)「雨漏りがしてます。怖い。なんでこんなところから水が漏るだよ」
これは発災直後の映像。雨が降るのは、窓の内側です…
大石さんの妻(発災当時)「2階に行くのはちょっとやめて…」
階段からは信じられない光景。状況は分からず、ただ危険だけは感じていたそうです。
はがれた屋根、カビが生えたキッチン
大石さん「竜巻が過ぎて10分15分でもう晴天。青空が見えてましたからね」
屋根がない。事態の深刻さに言葉が出なかったといいます。
大石さん「解体して新しい家を建てようかという話も持ち上がったが、見積もりは2700万円。その内の1700万円を保険と県の補助。まだ1000万円ぐらい足りないのでやめて修理という形に。屋根を付け直して壁はがして柱だけにしてやり直すというので、それだったらなんとかなるかなって」
さらに奥は…
伊地アナ「うわー、中にシートがあって、いま、すのこみたいになっているのは…はがしたんですか?」
大石さん「はがしたわけじゃない。竜巻のあとすぐ雨が入って、濡れて重たくなって落ちた」
竜巻被害から2カ月、1階部分では新たな問題も起こっていました。
伊地アナ「ああ!ここはダイニングキッチンですね。天井を見ると緑色のカビがかなり広がっているような感じです」
大石さん「玄関あけると匂いがね」
伊地アナ「カビ臭いですね」
大石さん「なかなか居られない感じ。ここで寝泊まりは厳しい」
いまはこの家で暮らすのをやめ、親戚の家に身を寄せている大石さん夫婦。この家は自立する息子たちの帰る場所として残したいと建て直すことを決めました。
伊地アナ「実際にここで元通りの暮らしができるようになるのはいつ頃」
大石さん「来年の夏ぐらいまでにはね修繕してくれるとありがたいかなと」
伊地アナ「そうなると来年夏くらいまではまだ仮の暮らしがつづくと」
大石さん「つづくと思いますね」
人口流出につながる災害
竜巻被害から2カ月。その影響は人口流出につながっているといいます。
大石さん「家が潰れて老人で一人暮らしの方は、ここに居られないから娘のところに行くよとか、実際に出るよと各班長から連絡もらって誰それさんが出るからと」
山﨑さん「細江は比較的牧之原市の中でも人口が多い所ではありますけどね、今回のことで高齢者もいらっしゃるのでこの地を離れたり、諦めてアパート住まいにするとか出てきてしまう。この地域の継続を考えると大きな問題かと思います」
