防災の日に考えたい「備える食」 ホテイのやきとり缶が災害食大賞最優秀賞 静岡市と包括協定で加速させる“普段から食べる防災”

 9月1日は防災の日だ。地震や豪雨、台風。近年は毎年のように大きな災害が各地で発生している。飲料水や非常食を備えていても、そのまま忘れてしまっている人も少なくないかもしれない。防災について改めて考える日に、一つの缶詰が静かな存在感を放っている。(難波亮太)

災害食大賞最優秀賞を受賞したホテイのやきとり缶260グラム
災害食大賞最優秀賞を受賞したホテイのやきとり缶260グラム

3つの改良点

 静岡市清水区に本社を置く食品メーカー、ホテイフーズコーポレーションの「やきとり たれ味260グラム缶」だ。ホテイのやきとり缶といえば、長年親しまれているロングセラー商品で、筆者も晩酌のあてとしてよくお世話になっている。そんな缶詰が今年、一般社団法人防災安全協会が主催する「SDGs・災害食大賞」で最優秀賞を受賞したのだ。
 災害用の備蓄食品は長く保存できることが求められる一方、味や食感は後回しにされがちだ。同社はその課題に正面から向き合った。同社商品企画課の物江祐太朗課長は「長期保存を可能にしながら、やきとり本来のおいしさや食感をできるだけ維持するため大きく3つの改良を行った」と振り返る。
 まず味の決め手となる「しょうゆ」。品質変化を考慮し、従来の濃口しょうゆから薄口しょうゆへ変更。しかし単純に切り替えれば済む話ではなかった。物江課長は「しょうゆを変更すると味の深みや色合いにも違いが出るため、従来の商品に近いおいしさや見た目に仕上げるための調整には苦労しました」。
 2つ目は物江課長が「重要な改良ポイントだった」とする増粘剤。長期保存することで粘度が低下し、肉とたれが分離しやすくなるという課題があった。そこで増粘剤を変更し、賞味期限を従来の3年から5年への延長を実現しても、たれの粘性を維持できるようにした。
 さらに殺菌方法も見直した。業務用商品などで採用している「回転殺菌」を導入し、高温で短時間の殺菌を行うことで鶏肉へのダメージを抑えた。そうすることで「5年後でも鶏肉らしい食感をしっかり残せるようになった」(物江課長)という。
 非常時に食べるものだからこそ妥協は一切なし。こうした姿勢が今回の受賞につながったと言えるだろう。
 実はこの260グラム缶、防災備蓄用途も意識した商品ではあるが、「家庭用商品として販売した際の原点ともいえるサイズ」なのだという。現在主流となっている食べ切りサイズが登場する前から続く、やきとり缶のルーツでもあるのだ。
 同社によると、災害に関するニュースが報じられると、特にECサイトでの注文が増える傾向があるという。保存期間が長く、そのまま食べられる缶詰の価値が改めて見直されているためとみられる。
 一方で、同社が目指しているのは「非常時のために買って保管して終わり」の食品ではない。物江課長は「普段の食事の中でも食べていただき、便利さやおいしさを知ってもらい、食べた分をまた買い足して備える。いわゆるローリングストックとして日常と非常時の両方で活用していただくことが理想」と話す。
 

協定を結んだホテイフーズの山本達也社長と静岡市の難波喬司市長(左)
協定を結んだホテイフーズの山本達也社長と静岡市の難波喬司市長(左)

食品メーカーとしての責務

 その考え方を地域にも広げようと、同社は9月1日、静岡市と包括連携協定を締結した。協定では教育、防災、健康増進、地域の魅力向上の4分野を柱に連携。新社会人向け食育教室への参加や食材提供なども予定し、缶詰を活用した簡単レシピの紹介やローリングストックの普及啓発にも取り組む。
 同社の山本達也社長は「近年、地震だけでなく、豪雨や台風、大雪など自然災害が各地で発生しており、食品メーカーとして災害時にどのように食を届けるかは、ますます重要な課題になっていると認識している。缶詰は常温で長期間保存でき、停電や断水が発生した際にも調理せずに食べることができる。一手間かければもっとおいしくなるレシピもHPで公開している。いざという時には安心につながる食品として、缶詰の価値を今後も伝えていきたい」と意気込む。
 災害はこちらの都合を待ってはくれない。非常食の賞味期限は切れていないか。飲料水は十分あるか。家族との連絡方法や避難場所は確認しているか。防災の日は年に1度だが、備えは365日の話だ。
 さて、今晩はやきとり缶を開けてみることにしよう。日々の備えを見つめ直すために―。

ホテイフーズの商品
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