「来ないで!」住宅や店に大量飛来…平年20倍超のカメムシ大発生 28年ぶり警報で秋の味覚にも危機 静岡
県内初の異常事態 カメムシ大量発生で警報発令
家の明かりに無数に群がる緑色の虫。その光景に恐怖を感じた人も少なくないはずです。
静岡県内でカメムシが過去に例を見ないペースで大量発生しています。県は病害虫による警報としては28年ぶりとなる警報を発令。カメムシを対象とした警報は県内で初めてです。発生数は平年の20倍を超え、柿やミカンなど秋の味覚への被害も深刻化しています。
なぜ今年はここまで増えたのか。大量発生の背景と現場を取材しました。
調査員も驚愕「昨夜だけで1000匹以上」
伊地健治アナウンサー:「失礼します。この部屋少し独特なにおいが…すごいものを見つけてしまいました、大量のカメムシですか?」
静岡県病害虫防除所 内山徹上席研究員:「病害虫防除所では過去数十年、毎日、カメムシなどの害虫の数を調べている。彼はきのう朝から晩まで…」
伊地アナ「一日かけて一日分の数を?」
内山さん:「はい、追いつかないような数ですね」
こちらでは、農作物を守るため、カメムシをはじめとする害虫を研究、発生予測や対策などの情報を発信しています。設置されているのは、光で虫をおびき寄せて捕獲する「予察灯」。箱の中に入っている虫の量によって、毎日、どんな害虫がどれだけ発生しているかを調べる機械です。
伊地アナ:「すごい、だいぶ入ってる底が見えないくらいですから、ざっとみて数百匹入ってる」
県病害虫防除所 内山徹上席研究員:「(カメムシは)夜間の気温が高くて、風が比較的少ない蒸し暑い日に飛びやすい」
ただ、今年は2年前と比べても明らかに様子が異なっていました。再び番組取材班が訪れてみると…。
県病害虫防除所 内山徹上席研究員:「これだとおそらく1000匹以上は入っていると思う。今年は非常に多い発生状況になっている。8月、9月と調査しているが、山にいるカメムシの数が過去最多の発生量になっているので、それが今後市街地に飛んで来る恐れがある」
原因は“豊作のヒノキ”と好条件の気象
カメムシが山の中で主にエサとしているのが、ヒノキの実。県は、ヒノキにどれだけのカメムシが確認できるかを調査していて、今年は、枝10本あたりの寄生数が37.5匹と平年の6倍以上となる過去最悪の結果に。これは100本の木がある場合、そこには4万匹近いカメムシがいる計算になります。
県病害虫防除所 内山徹上席研究員
Q.なぜこんなに今年はカメムシが多く発生している?
A.「1つが山のヒノキの実量が非常に多いということ。餌が多ければ多いほどカメムシが山で増える」
さらに幼虫は風で木から落ちると死ぬことが多いと言いますが、今年は台風が多かったにも関わらず、県内の山地には強い風があまり吹かず、生き残りやすい条件がそろったことも影響していると言います。その結果、ヒノキの実を食べつくしたカメムシが9月中旬以降、市街地に大量に飛んできているのです。
「来ないで!」住宅街で相次ぐ目撃情報
カメムシはフェロモンを出すことで、仲間を呼ぶ性質があります。今年は、こんな状況を目の当たりにした人も多いのではないでしょうか。
「うわ、こっちに来た!来ないで、来ないで来ないで来ないで!」
大量発生によって集まっているのは住宅だけではありません。
伊地アナ「後ろには山々静岡市清水区郊外にあるスーパーマーケット。今年大量発生しているカメムシへの対応に悩まされているといいます」
スーパーも対策に追われる 照明を間引く店も
静岡市内のこちらのスーパー。閉店時間は午後9時。やはり、今年は異変を感じていました。
伊地アナ「例年に比べて…」
ヒバリヤ 山岸達也さん:「多いです。カメムシが店の中に入ってくることも多々」
伊地アナ「神経を尖らせて追い出したり?」
山岸さん「商品についてしまうとよくない。夜もチェックしています」
こちらの店では、「風防室」と呼ばれる前室のおかげで、店内への侵入はおさえられているそうですが、夜間は店頭の商品を下げる対応をとっています。さらに、お客さんに迷惑のかからない範疇で、電灯を間引いて消すといった「寄せ付けない」試みもしていました。
秋の味覚を直撃 柿やミカンに被害拡大
今年大量発生しているカメムシは「果樹カメムシ類」という種類で、ミカンや柿の実を好むといいます。果汁を吸うことで実の変色や陥没などの被害与えているんです。当然、その矛先は県内の秋の味覚にも…。
伊地アナ「これからが収穫忙しくなってくる?
山ウレ農園 伊藤一吉さん:「そうですね。今月終わり23~25日ごろが初めての出荷になる」
収穫を前にたわわに実った柿。伊藤さんは柿農家の3代目。敷地内でおよそ600本の柿の木を育てています。伊藤さんの農園の目の前は森。その立地から、県にカメムシの調査を依頼されています。
伊地アナ「うわ、いっぱい浮いているのは全部カメムシ?」
山ウレ農園 伊藤一吉さん:「そう緑色のはね」
「1日4000匹」農家を苦しめる終わりなき防除
蛍光灯の光に集まったカメムシが、家庭用洗剤が入った水桶に落ちて動けなくなるトラップです。
山ウレ農園 伊藤一吉さん:「調査したものは(県の病害虫防除所に)ファックスして流す」
伊地アナ「伊藤さんが数えるんですか?大変」
伊藤さん:「でも少ないですよ、きょうは。9月の半ば多いときは4000…」
伊地アナ「4000匹! 一日で?」
山ウレ農園 伊藤一吉さん:「この設備をしたのは30年ぐらい前。今年が初めてこれだけの数は」
今シーズン、4000匹を超える日もあったという柿農園。その数を数えるだけで2時間を要したといいます。
農薬代も高騰 深刻化する生産者の負担
山ウレ農園 伊藤一吉さん「居ますからね」
伊地アナ「え! すごいすごい!」
そこには、トラップを逃れたカメムシたちの姿が。数十匹をこの柿の木だけで確認できました。ただ、その姿を捉えたのはこのトラップの近くにあった木だけ他の柿の木ではすぐに見当たりません。探すこと10分…。異変が現れている柿の実をみつけました」
山ウレ農園 伊藤一吉さん:「色が変わってるでしょ」
伊地アナ「この2つ色があざみたいになっている。こうなると…」
伊藤さん:「もう二等品。中がスポンジみたいにカスカスになる」
伊藤さんの果樹園ではカメムシの数は多くても、被害は「ほぼない」といいます。その理由は、適切なタイミングで散布してきた薬剤です。
山ウレ農園 伊藤一吉さん:「カメムシが寄ってくるタイミングの日にまければ」
伊地アナ「そのタイミングの日にまくのが大事なんですね」
伊藤さんの地域では、農家同士が連携し、カメムシ対策のタイミングを共有するなどして、被害はほとんどないということですが、同時に、農家の“体力”も浪費しています。
山ウレ農園 伊藤一吉さん:「ある人はもう辞めたいという人もいましたから、本当にひどかった。薬代がかかるから」
伊地アナ「やればやるほど、お金も労力もかかる」
山ウレ農園 伊藤一吉さん:「そうです。いなけりゃやりたくないのもわかります」
物価高は農業にも大きな影響をもたらしていて、伊藤さんの園では一回の散布で数万円の費用がかかっています。ただ、収穫間際は、農薬散布ができないため、1割は被害にあう覚悟をしているといいます。
「手を抜けば秋に泣く」農家の危機感
今年のカメムシ大量発生は、農作物への被害だけではありません。農家は防除のために農薬代や人件費の負担を強いられています。
山ウレ農園 伊藤一吉さん:「手を抜けば秋の収穫で泣くことになる」。
収穫の喜びを守るため、生産者たちは例年以上の労力を注ぎ続けています。気象台によると、10月の気温は平年並みか高い見込みです。県は今後もカメムシの発生が増加する可能性があるとして、農家に対策の徹底を呼びかけています。