とれても廃棄される「未利用魚」を市場に 宅配便や新商品… 魚の街で様々な取り組み 静岡・熱海市
とれても廃棄されたり、動物のえさになったりする「未利用魚」。この未利用魚を食べようという取り組みが、静岡県熱海市で進められています。
とれる魚は300種、
伊地健治アナウンサー:「熱海市にある網代漁港です。ここでは沖合に設置された定置網による漁が行われていて、年間2000トンもの水揚げがあるそうです。ただそのうちの数パーセントがほぼ市場に出回らない『未利用魚・未活用魚』となっています。今、網代ではこうした魚を積極的に活用しようという取り組みが進んでいます」
とれる魚300種、流通するのは数十種
熱海市の網代港。相模湾がはぐくんだ様々な種類の魚が毎朝水揚げされます。獲れたての新鮮な魚たち。しかし、その横には、傷がついていたり、サイズが小さいものなどが集められています。これらが、未利用魚です。
伊地アナ:未利用魚はどれくらいあるものなんですか?
網代漁業 林晋也さん:「多い時で5%。少ない時でも1、2%はどうしても出る。何10キロと出るときありますね。年間300種類くらい水揚げがあるが、実際にスーパー・飲食店に並ぶのは数十種類くらい」
伊地アナ:200種類以上が未利用魚?
林さん:「漁獲量でいうと数パーセント、魚種でいうと圧倒的ですよね」
未利用魚を利用するサービス
そんな食品ロスに歯止めをかけようと2年前、新たなサービスを始めた水産加工業者が。
伊地アナ:「それがこちらなんですが、未利用魚たくさんの種類がありますね」
宇田水産 宇田勝さん:「これカゴカマスというんですよ、おいしいですよ、ただ、骨が多くてあまり市場に出回らない」
宇田水産 宇田勝さん:「カゴカキダイもおいしいけど、骨っぽい、型も小さいので、作る手間もかかる」
特別に、未利用魚となったカゴカキダイとメアジをお刺身で食べさせてもらいました。
伊地アナ:「カゴカキダイは白身だけど、脂がのっていておいしい」
伊地アナ:「メアジは濃厚な甘みというか、味がある。未利用魚なんてもったいない」
市場には出回りにくいけど 食べたらおいしい魚を広めたい、という思いから「熱海・未利用魚おたのしみ便」として、宅配サービスを開始しました。送料込みで1キロ2980円。魚の種類は、届いてからのお楽しみ。
伊地アナ:反響は?
宇田水産 宇田勝さん:「今まで食べたことがない魚を食べられた、とか。おいしい食べ方を明記しているので、『煮たらおいしかった』とか反響があります。リピーターも多いです。安いし、その日水揚げされた魚を送っているので、鮮度がいい。魚屋としては廃棄されるのが一番いや。多くの人に食べてもらいたい」
サービスを始めて2年、お客さんは全国に広がっているそうです。
東京に未利用魚使う居酒屋を開店した会社も
そして、網代で定置網漁を操業している会社「網代漁業」は10年ほど前、東京の品川駅近くに直営の居酒屋、その名も「あじろ定置網」を開店。メジャーな魚だけでなく未利用魚を使ったメニューも提供しています。
網代漁業 林晋也さん:「逆に東京に行くと、珍しい魚が好きな人に人気があります」
未利用魚を使った商品を開発
さらに今月、新たな商品も登場!
伊地アナ:「熱海市の市街地にシェアハウスが入っています。ここで未利用魚を使って商品を開発している人たちがいるんです」
一体どんな商品を開発しているのでしょうか。
海の形 水野綾子さん:「一番最初に発売したのがカレーパンです。長さが22cm。市場に出回らないサバのサイズです。それ以上大きくなると、市場に出るんです」
伊地アナ:「周りがカリッとしていて、中がふんわり。食べると魚の食感がある」
現在は熱海のお店でテイクアウトのみの販売ですが、今後はネット販売も予定しているということです。
そして、3月発売された新商品がこちら。「ひみつの炊き込みごはん」です。
海の形 水野綾子さん:「未利用魚はその日その日何が未利用魚になるかわからない。なので、シーズン通して未利用魚になりやすかった未利用魚を使って、手元に届くまで何かわからないようにして、楽しみにしてもらう」
炊飯器を開けると、身がぎっしり。魚とダイコン、それにお茶っ葉が少し入っているそうです。
伊地アナ:「色が濃いので味が濃いのかと思ったら、そんなことなくて少し薄味。そしてちょっと魚の歯ごたえがあって、嚙むと崩れて、柔らかさがあって、これならいくらでもいけそう」
水野さんは熱海市出身。東京からUターンをして実家のお寺を継いでいます。一方で、街づくりに関わる中で、熱海の海の豊かさや課題を、子どもたちに伝える活動なども行ってきました。
水野綾子さん:「水揚げ量が減っている中で、未利用魚を知ってもらいたい。食べることを通じて、背景にある海の豊かさだとか、いろんな種類の魚が獲れるんだよってところを知ってもらいたい。さらに地球だとか、環境につながっていくといいなと思う」
限りある水産資源を大切にする、新たな取り組みが広がっています。