警戒区域解除から2カ月…進まない『帰還』 災害から2年4カ月いまだ142人が避難生活 静岡・熱海土石流災害
静岡県熱海市の土石流災害で被災した伊豆山地区の警戒区域が解除されて1日で2カ月。ただ、住民の帰還は進んでいません。復興・復旧の課題を考えます。
自宅が半壊し神奈川県で避難生活
小松こづ江さん、73歳。おととしの土石流災害で被災し、神奈川県湯河原町のアパートで避難生活を送っています。
小松こづ江さん:「夜、ご飯食べた後とか子どもがほとんど洗い物はやってくれるの。私は作って提供するだけ。ご飯炊きおばさんだから」
買い出しや食事の準備など娘と2人で協力しています。伊豆山地区にある自宅は、土石流によって基礎部分と自宅の一部が流され半壊。おととし9月にこのアパートに避難してきました。
小松こづ江さん:「これね、ここに来て私たち辛いねって言った時に、下の子がお母さんこれって、これを見て私たち頑張ろうって言われたんです。言葉に出すことが出来なかったからまだ。だから1年間このまま置いてあります。ここが最強の家族って私たちだよねって」
帰還の見通しは立たず
市は9月1日、安全確保の面から立ち入りを制限していた伊豆山地区の警戒区域を解除。発災からおよそ2年2カ月ぶりに住民の立ち入りが自由に出来るようになりましたが、小松さんが帰還できる見通しは立っていません。
小松こづ江さん:「下(の道路)を直さないことは、結局工事もちゃんとまだしてないじゃないですか。だから私たちが直せないからどうなのっていう話のことなんだけど。工事がいつまでかかるのか、私はとても心配なんです」
被災地の道路整備のために必要な市の用地買収は全体の4割程度しか進んでおらず、小松さんは自宅の基礎工事を始められていません。
また、市によりますと避難生活を送っていた132世帯227人のうち、伊豆山地区に帰還できた被災者は9世帯18人。今もなお、78世帯142人の被災者が避難生活を余儀なくされていて、45世帯67人の被災者はすでに他の場所に引っ越しているということです。
自宅の壁や天井にはゆがみや割れ
10月30日、小松さんが伊豆山の自宅を見せてくれました。
小松こづ江さん:「ここはね、前は全然平気だったのに、2年間来ないうちにこんなになっちゃったんです。上からみんな物が落ちてきちゃって」
避難生活が続き、自宅を空けていたため、壁や天井には歪みや割れが。1階の窓から外を眺めると、今でもあの時の様子を思い出すと言います。
小松こづ江さん:「私ね、今思うと、子どもが自分の部屋にいたら、多分(今)いないんですよ。ここ土石流がきて流されたんですから。たまたまこちらの母屋の方に、私たちの方にいたから助かったんです」
「ほんとうに戻れるか、2年3カ月経っても疑問符」
発災から2年。故郷に帰りたいという気持ちは変わりませんが、その後の生活に不安を感じています。
小松こづ江さん:「今まで生まれて70何年生きてきたところですから、本当は戻りたいです。だけど本当に戻れるのって、今でもまだ2年3カ月経っても疑問符なんです。バスだって今までみたいにけっこう走ってるわけじゃなくて、人がいなくなったから減らされいる。病院だってちゃんと行けるのって」
市の調査では、避難生活を続ける78世帯142人のうち、被災地での再建を希望している住人は32世帯64人。26世帯42人の被災者は、他の場所での再建を希望していて、20世帯36人は未定となっています。
逢初川の工事と道路整備にかかる時間に加えて、高齢者の移動手段の確保なども課題となりそうです。