袴田巌さんやり直し裁判…あす10日に2回目の公判 弁護側が検察の主張に反論 大きな争点は3つ
袴田ひで子さん(10月27日):「どうぞ、弟・巌に真の自由をお与えくださいますようお願い申し上げます。これが、私が言った言葉なんです」
事件発生から57年の時を経て始まった裁判の“やり直し”。1966年に旧清水市で起きたいわゆる「袴田事件」をめぐっては、みそ会社の専務一家4人を殺害したなどとして、袴田巌さんの死刑が確定しています。静岡地裁で10月27日始まった1回目のやり直し裁判では、心神喪失の状態として出廷を免除された袴田さんに代わり、姉のひで子さん(90)が法廷に立ちました。
袴田ひで子さん(再審初公判):「57年間紆余曲折、艱難辛苦(かんなんしんく)ございました。きょう再び、再審裁判で巌に代わり無実を主張します」
最大の争点は『5点の衣類』
弟・巖さんの無罪を訴えたひで子さん。袴田事件の最大の争点となるのが、検察が袴田さんの犯行着衣と主張する「5点の衣類」についてです。
検察側の冒頭陳述:「工場のタンクから発見された5点の衣類は犯人のものであり、被告人が犯行時に着用した」
一方の弁護側は、この「5点の衣類」について、警察のねつ造だと主張しています。
弁護側の冒頭陳述:「袴田さんのこれまでの人生を奪い,精神世界をも破壊してしまった責任は、重要な証拠を次々にねつ造し、野蛮で唾棄すべき違法捜査を繰り返した警察にあり、さらには無実を示す証拠を隠ぺいし、警察と共謀して犯罪的行為を行ってきた検察にあり、それを安易に見逃してきた弁護人や裁判官にもあるはずです。ここで本当に裁かれるべきは、警察であり、検察であり、さらに弁護人及び裁判官であり、ひいてはこの信じがたいほどひどいえん罪を生み出した我が国の司法制度も裁かれなければならないのです」
主な争点は…
今回のやり直し裁判では、主に3つの争点があります。1つ目は「袴田さんが事件当時、証拠から推測される犯人の行動をすることができたのか」。2つ目は「袴田さんが“5点の衣類”を犯行時に着用し、事件後味噌タンクに隠したのか」。そして、3つ目は「袴田さんが犯人であると整合するその他の事情があるのか」です。
これらの争点について、年をまたぎ、計12回の裁判が行われる予定です。前回の1回目の裁判では、争点の1つ目、「袴田さんが犯人の行動をすることができたのか」という点について、検察側が冒頭陳述を行いましたが…。
袴田弁護団事務局長 小川秀世弁護士(10月27日):「感想的なことだけ述べれば、検察官の全体の冒頭陳述、今回の工場との関係も本当に従前の確定判決の内容の域を出なくて、そういう意味では私の方では冒頭陳述でいろいろ疑問があると」
弁護側が苦言を呈した冒頭陳述。検察側は、犯人はみそ工場の関係者であり、袴田さんは事件当時、誰にも気づかれずに工場から放火に使ったとされる油などを持ち出し、犯行後にみそ工場に戻ることができたと主張しています。
袴田弁護団事務局長 小川秀世弁護士:「一体何のために彼らは今回の公判を進めようとしているのか。本当にダラダラ、今までと同じような主張で、こちらの疑問に答えず、漫然と立証しているような感じで、非常に憤りを感じている」
あす10日の2回目の裁判では、検察の主張に対し、弁護側が冒頭陳述を行う予定です。前回は26席の傍聴席を求めて、280人が列を作った袴田事件の再審公判。あすは静岡地裁で午前11時に開廷する予定です。