『奇跡のもろみ』で…台風から2年 老舗しょうゆ会社の挑戦 /今年の静岡「復活と再開」編①
おととし5月、静岡県牧之原市で竜巻とみられる突風が発生、江戸時代に創業した老舗しょうゆ会社の蔵4棟が全半壊、がれきの山となってしまいました。ところが、このがれきの山から奇跡的に「もろみ」が見つかったのです。会社ではこの「奇跡のもろみ」を使って、昔ながらの方法でしょうゆ造りを始めました。来年3月には一般販売できる見通しです。
災害の跡は…
ハチマル 鈴木義丸社長:「被害があったのはここから向こうなんですけど、今、修繕をしましたけど、実はここ柱の跡です。ここに建物が、このコンクリートのエリアで建っていた」
伊地健治アナウンサー:「ここに建ってたんですね」
6月は牧之原市にある老舗のしょうゆ会社ハチマルを訪れました。
鈴木社長「横に貼っている腰板、これも実は古い桶。(桶として)使えないような物をバラして貼っている桶の板ですね」
伊地アナ「ちょっと匂いを嗅いでみます。これはそんなにしょうゆの匂いしませんね」
鈴木社長「そうですね」
伊地アナ「でもここに しょうゆが入っていたんですよね?」
鈴木社長「桶にも菌が潜んでいる可能性がありますので」
伊地アナ「貴重な腰板ですね」
創業200年近い老舗の蔵4棟が全半壊
おととし5月、牧之原市で竜巻とみられる突風が発生。このしょうゆ会社を含め合わせて148棟に被害がありました。ハチマルの創業は、文政11年(1828年)。今年で195年になります。
これは、被害を受ける前のようす。工場内には4つの蔵がありました。しかし…。
一晩で3つの蔵が全壊し、1つは半壊。代々受け継がれてきた蔵は、ガレキの山になってしまいました。
がれきの山に『もろみ』が…
しかし、そのがれきの中からお宝が出てきたのです。それは、昔ながらの製法でしょうゆを造っていた時代の「もろみ」。40年以上前のものです。
鈴木社長「酸化もしていなくて雑菌も繁殖していなくて、僕と親父 最初に舐めましたけど、赤みそでした、おいしかったです」
この奇跡的に見つかったもろみを使い、去年3月から、自家醸造を始めました。木桶で発酵、熟成させる、昔ながらのしょうゆ造りです。
熟成されたもろみからしょうゆを…
それから1年3カ月、今年6月。熟成させたもろみからしょうゆを搾るときがやってきました。濾布と呼ばれるナイロン製のシートで、もろみを包み、これを60枚重ねて、しょうゆを絞ります。
味見をした、鈴木社長は…。
鈴木社長「甘い」
しぼりたてのしょうゆを、私も味見させてもらいました。
伊地アナ「何というかな、琥珀色というか、あんなに濁っていたものが、こんなに透き通ってきれいな宝石みたいな色になるんだという」
伊地アナ「そんなに大きく味が違うというのは分からないんですけど、上品な甘すぎない甘みがあって、御馳走しょうゆという感じがします」
鈴木社長「そうですね、そういう形になってくれていいなぁと思って」
伊地アナ「1年ほど前に仕込んだしょう油を今絞り始めた、その心境というのはどういう心境なんですか?」
鈴木社長「そうですね、ようやくここまで来たっていうところがありますし、ワクワクするというかドキドキするというか、ようやく来たなという1つの節目ではありますけど…」
600リットルのもろみから、搾ることができたしょうゆはおよそ400リットル。このしょうゆ「晴レノ日ノ醤油」は、3月に一般販売できるように現在準備をしているそうです。