新そばの香り、舞茸の衣——手打ちが描く“秋のそば時間” 富士宮市「蕎友館」
富士宮城北町に店を構える「本手打ちそば 蕎友館」は、2006年開業。京都・東京の名店で研鑽を積んだ井出明久さんが打つ蕎麦は、季節の素材とあいまってそば好きの足を止める。
秋の主役は「上舞茸天せいろ」。この店で用いる舞茸は成育期間を長めにとり、天然に近い風味を引き出したもの。大ぶりな舞茸を衣で包み、大豆白絞油でカラリと揚げる。揚げたての断面からは濃厚な旨味が湧き、噛むほどに香りが立つ。そばは信州の新そばを十割で打ち、ゆで時間は短く1分以内で仕上げるというこだわり。香りを重視した細打ちで、のど越しと風味の余韻を大事にする。
つゆには羅臼昆布と複数の本節を使った合わせだし。辛すぎず甘すぎないバランスで、そばの香りを引き立てるよう設計されている。冷たいせいろに、熱々の天ぷらを別盛りにして供するのも店の流儀。天ぷらを少しずつつゆに浸しながら食べると、カリッとした部分とだしのしみた部分、両方の楽しみが交互に訪れる。
「上天おろし」は、海老と桜えびのかき揚げに野菜を重ね、ぶっかけスタイルで供される一品。大根おろしや薬味と合わせることで、つゆと揚げの油分が程よく中和され、さっぱりと進む。
鳥なんばそばは自家栽培のネギを使った鶏肉入りがあり、ネギの辛味と鶏の旨味がだしに溶けると、身体の芯から温まる。
深まる秋には、新そばの香りと舞茸の濃厚な旨味に囲まれて、箸が止まらない時間が流れる。富士宮の「蕎友館」は、季節のそばを手仕事で紡ぐ店である。
本手打ちそば 蕎友館
富士宮市城北町15
電話番号:0544-23-0260
定休日:木曜日、第3金曜日
営業時間:11:30-14:00
17:00-20:30 L.O.19:30
※なくなり次第終了
Pあり
