一口ごとに開くベトナムの扉 静岡市「サイゴン」
湯気の向こうに広がるのは、南国の市場のにぎわい。静岡にいながら、本場の風を感じさせるのが「ベトナム料理 サイゴン」(静岡市駿河区中村町)だ。創業35年以上。異国料理ブームの前から、変わらず鍋を振り続けてきた老舗である。
評判の「焼きフォー」は、米粉麺の弾力が主役。豚肉、ニンジン、キャベツを炒め、コンソメと醤油でまとめる。水で戻したフォーを加えると、麺が旨みを吸い込み、やわらかな塩味が全体を包む。油っこさはなく、するすると箸が進む。
「バインミー」は自家製ポークハムが決め手。卵マヨネーズのコク、なますの酸味、パクチーの香り、そしてチリソースの刺激。柔らかなハムが全体を受け止め、味の振れ幅をきちんとまとめ上げる。軽食でありながら、記憶に残る一品だ。
人気の「生春巻き」は、野菜の量に驚く。サニーレタス、キュウリ、ニンジン、ニラ、大葉。そこにビーフン、鶏肉、エビ。シャキシャキとした食感の層が幾重にも重なり、ナンプラーだれとみそソースで表情が変わる。甘辛、コク深さ、爽やかさ。一本の中に小さなベトナムが詰まっている。
「バインセオ」は米粉生地のパリッとした歯触りが魅力のベトナムの"お好み焼き"。豚肉、モヤシ、ニラを包み込み、蒸し焼きで旨みを閉じ込める。ライスペーパーで野菜とともに巻き、たれにつけて頬張ると、香ばしさとハーブの清涼感が一体となる。
ここは、ただ“外国の味”を出す店ではない。静岡の街に根を張りながら、本場の輪郭を崩さない。その確かさが、35年以上続く理由だ。
一口ごとに、遠い国への扉が開く。
ベトナム料理サイゴン
静岡市駿河区中村町37-3
電話番号:054-289-2404
定休日:月曜日 ※祝日の場合は翌日火曜日
営業時間:11:30〜15:00(L.O.14:30)/ 17:30〜22:00(L.O.21:30)
Pあり