変えないと決めた一杯が、107年の暖簾をつなぐ 静岡市「第二美濃屋」
仕入れ先も製法も、材料の分量も変えない。店を引き継ぐ時、8代目の岸本一弥さんが選んだのは、積み重ねてきた味をそのまま受け渡すことだった。静岡市葵区馬場町、浅間通りにある「第二美濃屋」は、創業107年の町中華。人宿町にあった本店から歴史を重ね、2024年3月に代替わりした後も、昔からの客が親しんできた料理を作り続けている。
創業時から看板を務めるのが「醤油ラーメン」。スープには3種類のガラを使い、半日ほどかけて煮込む。途中でアクを丁寧に取り除き、澄んだ状態へ。合わせるかえしは、しょうゆにだしやザラメなどを加えた秘伝の味だ。口当たりはすっきりしているが、しょうゆの深みとコクは薄れない。
麺は細いちぢれ麺。透明感のあるスープを細かな縮れが拾い、すすれば昔ながらの町中華らしい香りが届く。しょうゆをしっかり含んだチャーシューは、やわらかな口当たり。目新しさを狙わない端正な姿に、長く続いてきた店の説得力がある。
例年4月中旬から10月末まで登場する「冷やし中華」は、野菜の扱いに特徴がある。キャベツとニンジンを一度ゆで、甘酢に絡めてから盛り付ける。自家製だれは、しょうゆ、砂糖、酢を合わせたもの。酸味が強すぎるとむせてしまうため、少し甘めに整えながら、最後まで飲みたくなるすっきりした味を目指している。甘酢を含んだ野菜の歯触りが加わり、暑さの残る時季にも食べやすい。
長年の味ばかりではない。岸本さんが店を継いでから改良したのが、ファンも多い「チャーハン」だ。以前はキャベツが入っていたが、客の声を取り入れ、2025年ごろに内容を変更。刻んだナルト、チャーシュー、タマネギを加え、具材の甘みを生かしている。目標とするのは、しっとりとパラパラの中間。米の一粒一粒が離れすぎず、かといって重く固まらない、食べ応えのある仕上がりだ。
「ワンタン麺」には、豚肉だけを包んだ自家製ワンタンが4個のる。具材を増やして華やかに見せるのではなく、豚肉の旨みと皮のなめらかな感触を味わわせる。手作りのため形は一つずつ異なるが、そこにも人の手で仕込む町中華らしさがにじむ。つるりとしたワンタンに細麺が続き、2つの喉越しを同じ丼で楽しめる。
107年の歴史を守るとは、昔と同じものだけを出し続けることではないのだろう。醤油ラーメンは仕入れも製法も変えず、チャーハンは客の声に応えて見直す。残すべき味と、手を入れるべき料理を見極めながら、岸本さんは8代目として厨房に立つ。浅間通りの暖簾は、懐かしさに頼るのではなく、今日も変わらず作る仕事によって次の時代へ続いていく。
第二美濃屋
住所:静岡市葵区馬場町92-7
電話番号:054-252-1775
営業時間:11:00-14:30 / 16:30-20:00
※スープがなくなり次第終了
定休日:水曜・他不定休
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